No.141 移民先進国の悩み 2006(平成18)年5月号掲載


 先日、欧州へ出張した際、フランス代理店の20周年記念を祝うため久しぶりにフランスを訪れ、シャルルドゴール空港から一路ポワチエに向かいました。
皆さんもこの地名は記憶にある方も多いと思います。
1982年フランス政府がVTRデッキの輸入制限をするため税関機能を置いたのが、内陸南西部のこのポワチエでした。
これにより日本の各メーカは大変苦労したようで、一種の嫌がらせとして大変話題になりました。

 現在のポワチエ市は、人口120,000人、その内大学生が27,000人を占める、日頃は静かな大学中心の教育都市です。
特に歴史部門ではフランスでトップの大学を有し、国内は勿論海外からも優秀な学生たちが集まっているそうです。
日頃と申し上げたのは、フランスは現在多くの難問を抱え、特に新雇用対策に反発した学生による抗議デモが各地で勃発しており、 厳重な警戒態勢が敷かれているからです。
学生の町であるここポアチエ市も例外ではなく、あちこちで警官と学生がぶつかりあっていました。
たまたま会場からホテルへ戻る途中だった私たちは、大がかりなデモに巻き込まれてしまい、厳重な警備体制の下、 郊外をぐるりと迂回するよう誘導され、お陰で次の会合に大幅に遅れてしまいました。

 幸い今回の騒動は、政府がこの雇用政策を白紙撤回することを条件に治まりましたが、問題が完全に解決したわけではありません。
いまだに火種は燻っており、いつ再発するか予断を許さない状況です。
フランスは、かねてより移民問題を抱え、特に2世、3世としてフランス国籍を持つ人たちが急増したことから、 自らの将来に不安を持った若者たちが、各地で暴動を起こしたのです。
特に都市部において3Kといわれる分野の仕事に移民を導入する計画は、近い将来市民権を持つ比率が逆転し、 移民が主導権を握るときが来るのではないかと、一般住民の不安をかき立てているのです。

 日本もこれから少子高齢化が急速に進むと同時に、2007年からは本格的に人口が減少するのは確実と見られています。
現状の社会体制を維持するためには、日本にとっても移民問題は避けて通れない喫緊の課題です。
我が国も、米国や欧州各国の移民政策の現状とその結果を徹底して調査研究し、この問題を解決していかねばなりません。

 「このままでは、欧州の将来はイスラム文化に席巻されてしまうのではないか、将来が不安で仕方がない」友人が別れ際に漏らした一言が、妙に気になりました。