No.138 ハープのマーケティング 2005(平成17)年10月号掲載


 私の友人、青山憲三氏は、世界的ハープメーカーのオーナであり、その楽器は、ウィーンフィルを初めとして、著名の交響楽団や、 ハーピスト達から"青山のハープは世界トップ"と高い評価を受けております。
そのハープの購入後の修理や保守管理も任され、何時も専用のケースで世界各国から、福井の本社工場へ送られてくるのです。
またハーピスト達は、来日する度に、時間を割いて彼を訪ね、その折本社に併設されているホールで演奏会が開催され、地方文化の向上や、地域の人達に貢献しておられます。

 その彼が、ハープメーカーの三代目としての信念を語ってくれました。
明治30年(1897)彼の祖父青山次太郎氏が福井市で創業。
初めはピアノやヴァイオリン等の楽器修理から初め、父青山政雄氏がアイリッシュハープを創りだしたのがハープメーカーの始まりでした。

 私が、最も興味を持ったのが、その販売方法です。
世界を相手に「ワン・ツー・ワン」マーケティングを実践しているのです。
最初はマレーシア・クアラルンプールのマリオットホテルで常時演奏する日本人ハーピストのために、1台のグランドハープを販売したのが始まりで、 旅費経費は購入先負担で、メーカーが定期的に技術的メンテナンスを行ない、最良の演奏が出来ることを求められました。
契約に従い、青山社長がマレーシアに出張し、メンテナンスを実施。
そのことが、ホテルのオーナから大変に感謝されたとのことです。
それから毎年技術者を派遣し修理を続けたことが「日本のハープメーカーは何時までも面倒を見てくれる」との評判が人から人に伝わり注文が増えました。
そのシステムをシンガポール、タイ、オーストラリア、ニュージーランドと広げ、今やシンガポールでは90%のシェアを確保するまでに成りましたとの自信に溢れたスピーチでした。

 最後に青山社長は「"青山は常にお客様のそばいる"と言うメッセージを送り続ける。これが最も大事なのである」と、 そして「私の夢は世界的なアーティストと直接会話が出来、友情で結ばれることです」と話をしてくれました。

 ビジネスで最も気を付けなければいけないのは、売上至上主義、シェア争で売りっぱなしになることです。
しかし「青山ハープ社では、売った後のフォローを決して代理店に任せず、青山社長や御子息が常にユーザーへ足を運び直接対話して商いをしている」のを聞いて、 これこそマーケティングの真髄と気づかされた次第です。