No.137 政冷経熱 2005(平成17)年7月号掲載


 我が工作機械業界の好況の要因が、日本の自動車業界の躍進にあり、その生産システムによる品質/コストの低減と先進技術をベースにした商品開発にあるのは御承知の通りです。
特にトヨタ自動車が逸早く商品化したハイブリッドシステムは今や石油価格高騰も追風になり、需要が急増しており、他のメーカーも追従し次々と商品化しています。
早くから話題になっていた燃料電池自動車は商品化が遅れており、今やハイブリッドシステムが独走し、その好影響を我が業界は受けており、 今年、来年の2年間は一兆円を超える受注・生産が確実であり、その先きも強気に見ている人達もおります。
それは各自動車メーカーが世界市場を相手に拡張を続けており、それを支える生産システムの中には、工作機械の自動化/無人化システムで、一日の長があり、 自動車メーカーと二人三脚でその技術を昇華させ、もっとも効率良く、故障の少ないソリューションを作りあげて来たからです。

 そんな中で、本当に順風満帆が続くと考えて良いのかのと反問する私は、やはり外側から見た日本を知りたくて3月にベトナム、 4月に中国、6月に欧州10日間の市場視察に出かけたのです。
勿論ユーザー訪問が主な目的ですが、何かが今年の3月を頂点として変わりつつあるのかが気になりました。

 折りしもフランス、続いてオランダも欧州憲法の批准を否決し、また欧州予算も不成立になり、統一拡大に暗雲が漂い始めたため、ユーロにも影響が出ており、 その上、石油価格の高騰と供給不足は、回復を始めた景気に陰を落とし、ブレーキが掛かった様な感じです。
一方パリで開催されたエアーショーは大盛況であった様でエア・バス社のAB380のデモ飛行成功やボーイング787型の好受注に今後10年間は仕事が続く、 と訪問したユーザ−の数社は強気な発言をしていたのが良いニュースでした。
この点では米国へ出張していた社員からも報告があり、航空機市場では省エネと代替需要が要因との話を聞かされ、 又国防需要も上乗せになっている様ですが、自動車産業程の力はありません。

 時あたかも英国スコットランドのグレートイーグルでサミットが開催された日にロンドンでテロ攻撃が多発、 その被害の大きさと衝撃は2002.9.11NYテロ事件の再発と言われ、改めて力で押えることが大変困難だと身を持って知らされた感じがしてなりません。
次は米国に協力している日本とも言われ、先行きに不安な影を落とすのは否めません。

 しかし1980年後半から始まった「情報化社会」の到来によって、グローバリズムは世界市場の単一化を急速に進め、全ての環境が急速に変化し続けているのです。
世界の人々は豊かさを知り、熱望しており、そのシンボリックな物が自動車であり、飛行機では無いでしょうか。
それであれば、我々の「ものづくり」の努力は決して間違いではありません。
しかし政治の面では、これから色々な問題を抱え苦闘する日々が続くことでしょう。
私は不測の事態を考え、不安定さは拭えず「考えられないことを考える」のが仕事と決意し、広く確かな情報を集め、決断して行かなければとの思いに至ったのです。