No.131 米国から見た最新日本事情 2004(平成16)年5月号掲載


 半年ぶりに米国へ出張することになり、この機会に主に米国景気の行方と大統領選挙の見通しについて、意見交換してきました。
その中で大変興味深かったのは、ワシントンDCでお会いした阿川駐米公使のお話でした。

 それは最近の米国の新聞に日本のことが良く出るようになり、それも好感をもった内容とのこと。
その要因は二つあり、一つは大リーグでの日本人選手たちの活躍、もうひとつは最近の日本の景気の回復振りに対する関心、とのお話でした。
製造業などの日本回帰と新技術による独自商品の開発に注目し始めたようです。

 まずは一つ目の要因ですが、日本人初の大リーガーになった野茂選手や両松井選手、そしてイチロー選手などが素晴らしいプレーをし、 チームへの貢献度が高いと評価されていることです。
特にヤンキースの松井秀喜選手の一挙手一投足が米国人にとってさわやかで謙虚な人柄に映るそうで、 試合後のインタビューにおける話し方やプレーに対する真剣さ、そしてその生活ぶりが大変まじめで、好感をもたれているようです。

 一方で、最近の日本の景気回復に対する分析によれば、日本の物づくりへの信頼が高まってきたようです。
米国でトヨタ、ホンダ、日産などの自動車メーカーが、ビック3と同じ土俵で製造されるにもかかわらず車の故障率が低く、 その安全性の高さに、改めてわが国の物づくりに注目しだしたのです。
特に、失われた12年といわれた時期に、日本の大企業が人件費などのコストを削減するために、 競って製造部門を中国や東南アジア諸国へ移したのですが、ここにきて日本回帰が始まった点に注目。
その要因が中国市場における急速なコストアップと市場や技術の変化に対する対応力の無さ、その上品質の不安定さにある、 と英国誌「エコノミスト」などが分析しているのです。

 今回の阿川公使の話から、日本の物づくりに元気が出てきたのを感じ、励まされました。
今や、私たち製造業が自信を持って“MADE IN JAPAN”にこだわり、“世界に無い物を世界に無い方法で”作り続けることこそ我々の使命であり、 世界が期待する日本の力ではないでしょうか。