No.128 日本と米国の競争と共生
2003(平成15)年11月号掲載
米国の産業空洞化と景気動向について肌で実感すべく、私は今秋9月、駆け足で渡米してまいりました。
米国の産業の空洞化は、約13〜14年前から始まっています。
そして日米両国は、産業の空洞化の結果として、環境、医療、健康、医薬品のほか自動車などの既存技術を基本に、
プラスアルファとなる新しい技術を付加して相互に競ってきました。
その結果、量産型産業は低価格を求められ、国外に移転し、国内は環境、医療、バイオ技術、
エネルギーそして微小技術などに代表されるものに絞り込まれてきました。
一方の米国景気は、結論から言えば多少中身に変化はありますが、順調な回復をしているようです。
従来の約10年と同様に今後の10年間も、中身に変化はありますが、世界最強の市場として反映していくでしょう。
これは、若いパワーを国外から移民などで受け入れて人口増を呼び、それが大きな個人消費の源泉となって、下支えしているからです。
ただ、これまでの10年間、IT産業で活躍し稼ぎまくったシリコンバレーを代表する、
ニューエコノミー群の動きが少々気になります。
私たちの気づかない間に新しいアイデアやコンセプトで、全く考えもしない何かが、突然飛び出してくるような気がします。
それは「そんな芽が2006年以降に動意づくように感じる」と、渡米で何人もの方々から聞かされたからです。
「決して目立ちはしない動き」として、不気味な予感すらしました。
ところで、20年余り前に「本業を続けてもダメ、本業を止めてもダメ、中身を変えろ」と著名な実践派エコノミストの言葉がありました。
この格言をもとに、四季の変化や歴史、生活に根付いた日本固有の、自然で微妙な生業を基にして、
私たちは生活し物づくりに取り組んできました。
酒、醤油、味噌などは、発酵というバイオ技術により、短兵急ではできないじっくりした仕込みにより、
熟成させた、素晴らしい物づくりの手本ではないでしょうか。
これは、常に小さな変化を積み重ねることが、最も大切であることを示す好例で、わが国の物づくりの原点でしょう。
世界各国もわが国も、どうやらその国の自然、歴史、文化に根付いた棲みわけを、始めたような気がする昨今です。