No.116 新しいステージへの挑戦 2001(平成13)年11月号掲載


 私達は、1945年の終戦から、1980年代まで米国の保護の下、ひたすら産業と経済に絞り込み疾走してきました。
彼らをお手本に、キャッチアップ型による生産技術などの応用により、 改良と改善との範疇の中で、ダンピングなどのトラブルに引き込まれながら、 米欧のパワーを確実に凌駕してきました。

 だが、彼らは、日本の行動を研究しつくし、さらに新しいステージによる新しい分野で、 2000年には私達を抜き去りました。
この時の彼らの動きは、凄まじい地球規模による産業構造の変革も追い風になりました。
このグローバルな変革は、米国を中心に金融・情報・バイオや環境などのテクノロジーを駆使し、 全く新しいステージに立った分野で、今後さらにスピードを速めていくことでしょう。

 そんな中で私達が足元を見ると、「世界の工場、世紀の市場、沸騰する中国」の動きに驚きます。
日本が唯一、世界に胸を張った「物作り」も、今では昔話。
世界に占める中国と日本の製品別生産シェアを見ると、携帯電話、DVDプレーヤー、VTR、 デスクトップパソコン、カラーTV、二輪車、エアコン、HDD、粗鋼等は既に中国がトップ。
日本が優位なのは、工作機械、四輪車、エチレンなど僅か。

 この大きな変化からか、この間まで欧米諸国と輸入規制などトラブっていた私達日本が、 今度は中国やアジア諸国との間で同じ轍を踏もうとしています。
私達が欧米に仕掛けられたことの、まさに二番煎じ。
全ゆる情報が瞬時に世界中に伝わる今、中国やアジアが低コストを武器に、 私達を追撃してくることは当然で、何か気恥ずかしさすら覚えます。

 こんな時こそ、欧米の先人達が大きくステージを変えて我々を追い抜き、 全ゆる面で復権したように、私達も彼らの思考や行動を学び取り、古い殻から抜け出し、 荒れる大海原に飛び出す勇気で、新しいステージに挑戦する― 世界に無い物を世界にない方法で考え作る―ことが、大事だと思います。