No.114 「独自技術の確立と人材育成」 2001(平成13)年7月号掲載


 21世紀に入り、情報化社会のあり方がはっきりして来ました。
グローバル化は単一市場への移行を急速に鮮明にし、一物一価の原則は、 全産業を基盤から強烈に揺さぶっており、世界レベルで製造業の最適地を求めて、 日一日と色を塗り替えています。

 我が国も、生き残りの為に、IT革命の中でのハイテク化に特化し、特に携帯端末の申し子である、 ”携帯電話”の急伸は、世界的にも注目されました。
特にiモードに見られる、独特のソフトは、最も先端的なものと自負してきましたが、 次々と生まれている新技術のために、急速に陳腐化しつつあります。
また、米国シリコンバレーから始まった、”ドットコムバブル”の波は、ソフト部門に留まらず、 ハード部門をも直撃。
ノキア、エリクソン等の北欧勢も含めて、IT化のハイテク部門を抱えている国や企業が、 大幅な下降を続け、苦悩しています。

 しかしながら、今回訪ねたドイツ、フランスの各企業は、いささか違った感じでした。
特にドイツは、自動車産業等の、既存産業が時代の要請に合わせて、省エネや環境対応を着実に進めていました。
例えば、ディーゼルエンジンの効率化、排気ガスのクリーン化も徹底していますし、 電子化やリサイクル化も世界トップレベルを維持、向上を続けています。
一方では、技能者の育成もしっかりしており、マイスター制度も健在。
技能者訓練システムも機能しており修業年限は2年、午前は学業、午後は企業内の訓練を受け、 ヤスリ作業からNC操作や簡単な修理等まで行われ、訪ねた会社社長は”これが我が社の社会的責任”と話されたのが、印象的でした。

 また、こうみてきますと、世界の工場化を目論んでいる中国や東南アジアの、 キャッチアップスピードと、その実力から考えると、日本も真剣に取組まなければ、 我が国の物作りが危ぶまれます。
今さら日本は、後戻りは出来ません。
ドイツやフランスの模倣ではなく、I.T.(情報)、B.T.(バイオ)、E.T.(環境)に、N.T.(ナノテク、超微細)を、 有機的に掛け合わせた分野に特化し、独自分野を形成するのが、日本の喫緊な課題でしょう。