No.138 越前漆器 2006(平成18)年1月号掲載


 平成16年7月18日福井豪雨により福井県鯖江市河田地区で川が氾濫して、越前漆器の産地を襲ったとのニュースが全国を駆け巡りました。
このニュースで福井が、漆器の産地であることを知られた方も多いのではないでしょうか。

 越前漆器の起こりは、約1500年の昔にさかのぼるといわれています。
古墳時代の末期にあたる6世紀。
第26代継体天皇がまだ皇子のころ、壊れた冠の修理を鯖江市片山の職人に命じられました。
漆師は、冠を漆で修理するとともに黒塗りの椀を献上したところ、皇子は、その美しさに感動し、漆器づくりを行うように奨励しました。
これが越前漆器の始まりと伝えられています。

 室町時代には報恩講などの仏事に、この漆椀が使われるようになりました。
また江戸末期になると京都から蒔絵師を招き、蒔絵の技術を導入と、輪島から沈金の技法を取り入れ、華麗な装飾性を帯びてきました。
明治時代には、角物と呼ばれる膳類などの生産が行えるようになり、重箱、手箱、盆、菓子箱、花器など一挙に製品群は多様化し、 生産拠点は河田地区全体に広がり河和田塗りと呼ばれるようになりました。
現在では旅館やレストランなど業務用漆器の販売に成功し、名古屋、大阪など都市部への進出を果たし、河和田塗りは、いつしか越前漆器として広く愛用されるまでになっています。

 漆器は1500年の間、日本の文化に息づいて使われてきました。
漆器の良さは、自然素材で、環境を汚さない。
すべて自然の素材で作られているので土にもどります。
熱が伝わりにくいから、熱い食べ物を入れても器が熱くならない。
ガラスや陶器と違って、壊れにくいので、世代を超えて長く使える。
漆は年月がたつと表面の色合いが鮮やかになり、使い込むほどに深みと味あいが生まれてきます。
鯖江市では、学校給食に漆器を使っている小学校が4校あり、子供のころから漆器に親しんで「手作りのよさ」「本物の良さ」を体感しています。

 漆器をお使いの際は、是非福井を思い出してください。