ユーザーを訪ねて No.142
80年の歴史を持つ名古屋市内で自動車部品を生産する
株式会社水谷鉄工所



株式会社水谷鉄工所 概要

所在地〒462-0036 愛知県名古屋市北区長喜町2-36
 TEL
 FAX
052-914-0222
052-916-3925
代表者代表取締役 水谷 保 氏
創業大正14年
設立昭和27年
従業員18名
事業内容自動車、電気、電気機器、機械の部品加工

工場全景
▲工場全景




 今回のユーザーを訪ねては、JR名古屋駅から北東へ車で15分程の距離にある株式会社水谷鉄工所を取材しました。
 取材には社長の水谷保氏に対応頂きました。同社は水谷社長の祖父が大正14年に自転車のハブ部品を作ることで創業され、2代目がお父様、そして3代目が現社長と、80年以上の歴史を持つ会社です。
 現在社長の長男水谷太一氏が入社され、現場で班長として活躍しています。


▲水谷 保 社長


4代目の継承

 「子供のころ、夏休みには父の運転するトラックに乗せられ、よく仕事先へ納品に行った記憶があります。父からは”将来会社を継ぐように”と言われ、素直に大学卒業後昭和50年に入社しました。私の時代では強制的に継承を言われましたが、長男には自由にさせました。学校卒業後、自分で金型関連の会社に勤めましたが、3年後に戻り当社に入社しました。現在マシニングセンタの責任者として日々業務に努めています。4代目への継承がスタートしています」と水谷社長。


自動車部品への専門化

 水谷社長が入社した時の仕事先は、自動車部品はそれほど多くなく、その他に繊維機械や農業機械の会社がありました。
 しかし、それらの仕事先は時代の流れに押し流されて廃業するなどして無くなり、現在では80%自動車部品になっています。加工している部品はトランスミッション、ギア、アクチュエータのカバー部品がメインとなっています。
 数の多い部品は月産6〜7,000個の生産を行い、少量の部品は月50、60個生産です。
 「昨年11月までは良かった。しかし12月以降急速に落ち込み売り上げが半分に落ちました。しかし7、8月ぐらいから回復し、現在7、8割まで戻っています」と水谷社長。

 自動車部品製造なので、ジャストインタイムが求められ、毎日一便の納品を行っています。一回で数個〜5,000個を収めますが、少ない時は200個の時もあったそうです。


▲2台の「MC-500V2


1号機のマシングセンタはマツウラ

 「入社当時NC旋盤が2台と汎用フライスで生産を行っていました。汎用フライスでは量産に対応できないので、マシニングセンタの導入を検討しました。ある商社よりマツウラを紹介され、当時開発されたMC-500Vを見ました。当社工場は住宅街にあり敷地面積も大きくないので、MC-500V の機電一体型でコンパクトな設計に共感し設備しました。つい最近まで現役で稼働していましたが、30 年が経ち現役を引退させました」と水谷社長。
 その後も2台の立形マシニングセンタ「MC-500V2」の導入。また量産対応にパレット付加した「MC-500V2 PC2」と 2 台の「RA-1」を設備されました。そして、それら機械の老朽化に対応すべく平成 20 年 12 月に最新 2 面パレット装備の立形マシニングセンタ「R.Plus-550」を設備されました。


新分野への挑戦

 仕事先である自動車部品メーカーも生き残りをかけて変化をしています。
 それに対応すべく同社にも自動車部品以外の部品が持ち込まれました。材料も変わり、また形状も複雑になり現有の設備では対応が難しい状況となりました。
 そこで初めての横形マシニングセンタとして「H.Plus-300」とCAMシ ス テ ム「GibbsCAM」を平成 21 年 7 月に導入。
 取材時も新規部品に挑戦している最中でした。名古屋地域は、自動車生産の中心地です。しかし、この不況により各部品メーカーも自動車に依存しない業種への転換が水面下で動います。
 その分野は環境、医療など最先端であり、その試作、テスト部品製作が行われていると思われます。

▲平成20年設備の「R.Plus-550▲平成21年設備の「H.Plus-300


人材育成は自社で

 「今後、新技術、新素材がどんどん出てくるので、当社の技術力を上げれば経営はやっていけると確信しています。世の中には色々な産業があり、加工することは無くなりません。幸いこの不況のお陰で勉強する時間は作れるので、勉強会を社内で行っています。講師は私自ら行っており、トヨタ生産方式、IE、VE など様々な分野に渡っています。社員に教える為に私自身がセミナーに参加したり、本を読んだりして真剣に勉強しています。社長が率先して勉強しないと社員も勉強しません。また社長が講師を努めるので費用も掛かりませんし、継続も可能です。しかし、方向性を誤れば勉強してことが無駄になります。間違った方向に向いていないか、アンテナを立て世の中の動きを常に関心を持って見ている必要があります。一番先端を走っているはお客様です。常にお客様の動きに注目し、その部品の背景などに関心を持って対話することで、当社の方針を模索しています」と語る水谷社長でした。



 この不況こそ体質を変えるチャンスと考え新規設備導入、また勉強会など、水谷社長が率先して行動されています。自動車部品メーカーが次世代に向けて着実に行動を起こしていることが分かった取材でした。




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