コーヒーブレイク


お年寄りが元気な町

 徳島県勝浦郡上勝町という小さな町に第三セクターの「株式会社いろどり」があり、料理に添える葉っぱや花などの「つまもの(妻物)」で年間2億6,000 万円の売上げがあり、TVやマスコミで取り上げられています。

 その中心になった人は、現在この会社で副社長を務める横石知二氏です。彼は昭和54 年20 歳で上勝町農協に農業指導員として採用され、過疎で苦しむこの小さな村を見事に再生させています。
 昭和56 年に異常寒波で主要産業のミカンが全滅し、どん底の危機に瀕したので、現金収入を得るために農家が自家用で作っていた青物野菜を市場に持ち込み直接販売をしたとのことです

 昭和61 年10 月に大阪へ納品に行った帰りに、難波にある『がんこ寿司』に立ち寄った時に、若い女の子が料理に付いていた赤いモミジの葉っぱを見て「これ、かわい、きれいね。持って帰ろう」とハンカチに包む姿を見ていた。(こんな葉っぱ、上勝の山にいったら、いくらでもあるのに)と思った瞬間「葉っぱを売ろう。葉っぱなら軽いから、女の人やお年寄りでも扱いやすいし、なにより上勝の山にいくらでもある」とひらめいたそうです。

 しかし、最初は全然売れず大赤字でした。そこで有名な料亭に行って、料理と添えられた葉っぱの絵をせっせとノートに書き写して勉強したそうです。葉っぱは、必要とする人が必要な分だけしか買いません。そのために生産と売り、需要と供給が一体になっていくことが、このビジネスの要です。
 今では各農家にパソコンが設備され、様々な情報が見れる工夫がされ、そのことがやる気につながっており、年収1,000 万円を超える農家も出てきています。しかし平均年齢は70 才です。

 今上勝町は、葉っぱを採取するために植えられた木々で美しい景観に変わり、またお年寄りは元気で医療費も抑えられています。そして、なにより「Uターン」や「Iターン」で若者や団塊の世代の移住者も増え、注目の町になっています。一人の人間の情熱が、人を変え、町を変えることが出来ることを実証したお話です。


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