ユーザーを訪ねて No.130
高精度・高品位の印刷機械部品製造に特化する
株式会社 長栄精密



株式会社 長栄精密
住 所〒990-2251 山形県山形市立谷川2-1593
 電話番号
 FAX番号
 URL
023-686-2033
023-686-2054
http://www.tyoei.co.jp
代 表 者代表取締役社長 柴田 健一 氏
創 業昭和43年11月
設 立昭和45年11月
資 本 金4,800万円
従 業 員75名
事業内容印刷機械部品加工製造

株式会社長栄精密
工場全景



 今回のユーザーを訪ねては、東北新幹線の山形駅から北へ車で約30分ほどにある株式会社長栄精密を訪問しました。
取材には取締役工場長太田芳男氏、製造部次長武田勝宏氏、製造二課課長今野大氏の3人に対応頂きました。

 同社は、大手印刷機械製造メーカーに精密機械部品を30年以上供給し続けている会社です。
設備機械は立・横マシニングセンタ、NC旋盤、複合加工機、NCホブ盤、NC円筒研削盤など65台があり、 印刷機械部品のあらゆる要求に素早く対応できる体制を取っています。


左から、製造二課課長 今野大 氏、取締役工場長 太田芳男 氏、製造部次長 武田勝宏 氏


印刷機械部品に特化

 昭和43年11月に前社長佐藤利夫氏が山形県東村山郡で研磨加工業として創業しました。
研磨加工からスタートしたことが、現在まで続く高精度に拘る同社の技術力の原点となっています。
昭和45年に山形県内に大手印刷機械メーカーの製造工場が移転。
同メーカーが山形県内での部品加工会社を探していたのが縁となり、以来30年以上印刷機械部品に特化した加工技術を高めてきました。
同社では製品を3つに分類されています。
一つめはメタル部品と呼ばれ、高度な加工技術を駆使して、切削から研削までを行いミクロンの精度が要求されるものです。
二つめは、レバー・ホルダーと呼ばれ、印刷機の調整部に使用されるレバー関連部品です。
もう一つはギアと呼ばれ、旋盤から高性能ホブ盤・マシニングセンタ・研削盤を使用して加工される高精度な歯車(ギア)製品です。
生産している部品は600種類を超え、量産から単品まで、あらゆるニーズに応えています。
「この豊富な加工技術を基に納入先とは強い信頼関係を構築しています。 ジャスト・イン・タイムの組み立てを実施する組立てラインに、多数の部品を毎日直に供給しています。 このことは機械のオペレータには相当なプレシャーになりますが、各人が自信を持って品質責任を持つのが当社の企業文化です」と太田取締役。


無人化運転を実現したマツウラの横形マシニングセンタ

 昭和60年12月にマツウラに横形マシニングセンタ「MC-400H PC11」を設備。
同機械は11面パレット付で長時間無人運転可能なシステム機です。
しかも機械色はワインレッドでした。
当時機械色は、汚れが目立たない緑や灰色が主流の中、ワインレッドを選択されました。
「仕事先から量産部品への対応を求められ、その仕事量を実現するために長時間無人化対応できるマツウラの多面パレット装備の横形マシニングセンタに決めました。 また、ワインレッドの機械色は、工場内で映え現場が明るくなりました。 MC-400Hは、当社の無人化運転の基礎を作りました。 11面パレットは長時間無人運転対応ですが、ATC(自動工具交換装置)は42本でした。 工具本数が少ないので、出来るだけ同じ工具を別の加工品で使用したり、運転中に工具を入れ替えたり、補正を修正したり工夫して無人化運転を実現しました。 それに比べ最新の機械は多数のATCがあるので、工具が自由に使用できます。 知恵の使い方は以前の方が進んでいました」と当時を語る太田取締役です。

 平成3年11月に横形マシニングセンタ「MC-450H PC11」、平成16年8月に「H.Plus-300 PC11」と11面パレット付の無人化システムを設備しています。
「H.Plus-300 PC11」は、毎日21種類の部品加工と、その他単品多種の部品製作を行っています。
同社の量産部品供給の基盤をマツウラのマシニングセンタは支えていると言えます。

ワインレッドの「MC-400H PC11」最新機種「H.Plus-300 PC11」



人材育成に注力

 多種の工作機械で、高精度・高品位の部品を製作する為に、高い技能が要求されます。
同社では、技術力を評価する上で積極的に技能検定の受験を推奨し、半数以上が技能士の資格を有しています。
平成18年には8名が合格。
会社のサポートとして、試験に合格すれば試験に係かった費用は支給され、また食堂に資格所有者の顔写真が大型掲示版に掲示されます。
このように、全社員が国家試験への受験意欲を掻き立てる工夫がされています。
しかし、ほとんどの機械がNC化する中で、歯切りなどの特殊な機械での受験機会が山形県では無くなってきており、 同社の強みである歯切りなどギア作成技術の継承に課題があるとのことです。

 また地元工業高校から3、4人のインターシップ受け入れを毎年継続しています。
継続の効果として今年も3人の新人が入社しています。
長岡技術大学、山形工業高校、上山明新館高校出身で、特に長岡技術大学出身の社員は、高校時代に同社でのインターシップ経験者でした。
以前にも一人同じ経緯で入社した高校卒業生があり、同社でのインターシップ受け入れ時の社内での対応、また社員との交流のすばらしさを物語っています。

 同社では、技術の向上だけでなく、一人一人が経営者感覚を持たなければ次の時代に残れないとの意識から、 週に一度柴田社長自らが講師となり、京セラの稲盛会長の最新著書「アメーバ経営」を使用して、幹部勉強会を行っています。
技術と経営感覚の両輪を持つ人材育成にも着手されています。


顔写真入りの技能士掲示板


活気あふれる工場内

 工場内には65台のマシンが2直体制で夜間もフル稼働状態です。
マツウラの横形マシニングセンタは、無人化対応のために、夜間12時間は無人稼動を続けています。

 「多面パレット付マシニングセンタではワークを取り付ける治具の製作が大変でした。 1号機のマツウラのマシニングセンタを設備した時、自社で治具の製作を行いました。 今では機械も増え、全ての治具を社内では作れず、外部で委託製作を行っています。 しかし自社で製作した経験がなければ、外へは出せません。 苦労しないと技術は身に付かないと実感しています」と武田次長。
また「当社では、加工プログラム作成者と機械オペレータは分けていません。 比較的量産が多く、一度製作すればリピート品も多数あるので、NCの裏編集機能を使って加工中に加工プログラムを準備することが多いです」と今野課長。

 「量産体制の機械が多いので、機械故障で生産がストップするのが一番困惑します。 多数の工作機械メーカーの機械を使用していますが、各社サービスの姿勢が異なります。 その中でもマツウラさんの対応が一番親切に対応してくれるとの印象を持っています。 山形と福井と距離は離れていますが、電話での対応を受けるときに、まるで機械が目の前にあるように正確に応えてくれるので安心しています。 今後も、この姿勢を続けて欲しいです」と武田次長より高い評価を頂きました。



 この納入先の印刷機械は、国内需要より海外需要が高まっており、日本の持つ技術力が繊細な印刷を可能にし、世界から認められているとのこと。
同社は、この印刷機械メーカーと深い信頼関係を構築し、経営基盤を確立しました。
また今後も更に継続強化させていく方針と聞いています。
海外需要が増えると、直ぐに海外生産移行が言われる中で、国内で生産基盤を持つ産業にマツウラも貢献していることに誇りを持った取材でした。


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