ユーザーを訪ねて No.129
精密切削・研削加工で試作から量産品まで対応できる技術企業
大羽精研 株式会社



大羽精研 株式会社
住 所〒441-3124 愛知県豊橋市寺沢町字深沢170番地
 電話番号
 FAX番号
 URL
0532-21-3121
0532-21-3165
http://www.ohba-seiken.co.jp
代 表 者代表取締役 大羽 良晴 氏
創 業昭和48年4月
設 立昭和51年8月
資 本 金3,000万円
従 業 員135名
事業内容産業用ロボット部品製造、自動車部品製造、産業機械部品製造

大羽精研株式会社
工場全景



 今回のユーザーを訪ねては、愛知県豊橋駅から遠州灘に向かって車で約30分ほどにある大羽精研株式会社を訪問しました。
同社は、今年4月に精密加工のために恒温空調システムを完備した工場を拡張したばかりです。
同社の切削加工機は、5軸加工マシニングセンタ13台、横形マシニングセンタ13台、立形マシニングセンタ21台、NC旋盤12台、複合加工機1台です。
研削加工機として、円筒研削盤19台、内面研削盤17台、平面研削盤7台、ジグ研削盤1台。
放電加工機は、ワイヤーカット13台、放電加工機3台。
更には、測定機器として、3次元測定機3台、形状測定機2台、真円度測定機2台と、あらゆる加工機、測定機が設備されています。

 また加工だけでなく、製作された精密部品を元にして組立まで行い、組立後の精度保障、作動確認までトータルで対応しています。
同社は、少ロット試作から量産品まで対応可能な生産体制を持ち、お客様ニーズに素早く対応できる企業です。


専務取締役 大羽 英雄 氏、代表取締役 大羽 良晴 氏


研削加工技術に特化

 「30歳で独立した創業当時は、工作機械関連の工具研磨でスタートしました。 独立して2年後の石油ショックで工具関連の仕事が減少したのを契機に、自動車や耕運機部品などの研磨加工を行っていました。 昭和51年に会社設立した時には、周辺企業が研磨加工で良い仕事ができないのを見て、あらゆる部品の研磨加工に特化しようと決め、研削加工設備を増設していきました。 そして同年、本格的に自動車部品加工を開始しました」と創業から設立までの経緯を語る大羽社長です。


自動車部品から半導体部品へ拡大

 「自動車部品加工を行い、ようやく仕事が軌道にのりましたが、次の手を考えるべく営業と生産技術スタッフを採用し、私が自由に動ける時間を作りました。 そこで、難しいことで困っているお客様はないかと活動していく中で半導体関連の仕事に出会いました。 研削加工を行っていたので、精密加工に関する技術力が認められ平成元年に半導体関連事業に進出しました。 難しい形状でも研削加工が行えるので、他社よりも高精度部品を製造できる企業との信頼を深めていきました。 更には部品加工だけではなく、その部品を元に精密組立分野へも進出し、総合的にお客様ニーズに応える体制を構築していきました」と大羽社長。


5軸加工機MAM72で部品精度の向上

 同社は、平成9年にマツウラの立形マシニングセンタ「MC-600VF」を導入。
平成11年3月には小径ドリル加工に対応するために高速マシニングセンタ「FX-1」(主軸回転数3万回転)を導入。
そして平成11年6月に5軸加工機「MAM72-3VS」を導入しています。
「半導体関連でアルミ材の複雑な部品がありました。 部品精度が悪いと組立後の作動検査で不良が発見され、何度も作り直をしていました。 ところが加工機をMAM72に替えたところ、ワンチャックであらゆる方向からの加工で高精度を実現し、不良品が皆無となりました。 他社は、まだ5軸機で部品を加工してなかったので、"大羽精研は5軸加工機で、こんな部品を加工してもコストが合わないのではないか"と言われました。 しかし5軸機で加工するのが、一番安定することを我々は知っており、確実な製品を製作する企業として高い信頼を得ることが出来ました」と大羽社長。
それ以後平成16年11月に「MAM72-35V」、平成16年8月に立形マシニングセンタ「V.Plus-800」、平成18年4月に「MAM72-35V」を導入し、 トータル6台のマツウラのマシニングセンタが稼動しています。


フル稼働する3台の「MAM72シリーズ」


「できないは禁句」が合言葉

 「常識的に考えて難しい加工もあります。 すると社員は"社長、これは出来ません"と言ってきます。 出来ない理由を言ってくるので、私が自ら解決方法を考え、社員と協議を繰り返しました。 その繰り返しから、社員は"やれば出来る"との挑戦する社風が生まれてきました。 "出来ないものを出来るようにするのが、大羽精研の仕事である"と常に言っています。 それで社内では"できないは禁句"が合言葉となっています。 重要なのは他社に比べて高い技術力を持つことであり、その可能性を持つ人材を如何に早く育てることが課題です。 それには任せた仕事は徹底的にやらせます。 それが出来ると自信と技術がその人材を育てます」と大羽社長。
この"できないは禁句"との言葉は、会社案内の1ページ目にも掲載されており、同社の企業文化の基礎となっています。

 社員の平均年齢は30歳で、殆どが機械加工未経験での採用です。
基礎力を学ぶために同社では積極的にマツウラで開催されるNCスクールを受講しています。
「NCスクールの技術的内容は大変有意義でした。 更に良かったのは他社の受講者との人間関係を持てたことです。 機械加工に従事している他社の人と話すことは大いに刺激になりました」と受講者からの声を紹介して頂きました。
受講している方が、この様に喜ばれていることは、NCスクールを主催している側としても大変うれしいことです。


新規分野の開拓を担当する大羽英雄専務

 同社では、社長の御子息の大羽英雄氏が専務取締役として業務に当たっています。
大羽専務は大学卒業後、都市銀行に就職しましたが、平成12年に同社に戻られました。
「戻った時はIT好景気で会社の状況もよかった。 しかし1年も経たずにIT不況となり、3年間は大変苦労しました。 この期間が仕事を覚える上で大変役に立ちました」と大羽専務。

 今後の方針をお聞きしたところ、大羽専務より「MAM72の稼動率はほぼ100%です。 今後もMAM72で加工するような付加価値の高い仕事を増やしていきたい。 高精度な5軸加工機で加工しなければいけない部品のニーズは確実にあるので、MAM72を活かし主力の産業用ロボット部品の受注拡大と、 自動車や家電の試作加工、更には半導体や液晶製造ラインで使用されるユニットから医療関連の展開まで考えています」と。
3台のMAM72シリーズが同社の部品加工の中核となっています。


整理された加工工場


 同社のホームページ(www.ohba-seiken.co.jp)を見ると "社長の部屋"との項目の中に、大羽社長の経営に関する思いが、1)精密加工論、2)アンチ常識論、3)先取り経営論、4)人材論として綴られています。
例えば人材論には「技術とは結局、人。ずっと精密加工に関わってきて思うのは、技術とは結局人なんだなということです。 いくらすごい設備を入れても、最新鋭の機械を備えても、それを使いこなす人がいないといいものはできません。 機械に備えられたマニュアルだけでは絶対にいいものはできないんです。 企業間に差があるとすれば、それは人の差」とのコメントがあります。
同社を知る上でも、是非アクセスして下さい。

 また工場内では機械、通路とも驚くほど綺麗に清掃されています。
高精度に特化するには5S(整理、整頓、清潔、清掃、躾)に徹することが、同社の高精度に特化する基本であると実感した取材でした。


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