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社長自ら大学院で学び、学習企業を目指す
─ 株式会社 奥田精工─


株式会社奥田精工の概要
住 所〒916-0075 福井県鯖江市漆原町21-5
TEL:0778-62-0639
FAX:0778-62-2265
URL:http://www15.ocn.ne.jp/~okuda
代表者代表取締役社長 奥田 博之 氏
創 業昭和43年6月
設 立昭和52年7月
従業員15名
資本金2,000万円
事業内容各種機械部品加工(工作機械部品・射出成形機部品・産業機械部品等)

株式会社奥田精工
工場全景


 今回は、「めがねの町」としても有名な福井県鯖江市で機械部品の製作加工を行っている株式会社奥田精工を取材しました。
同社は、NC旋盤7台、マシニングセンタ10台、ワイヤー放電加工機2台、研削盤2台など多数の設備機械と、 またマツウラのCAD/CAMシステムGibbsCAM4台を持つ技術志向の企業です。

 奥田篤会長が旋盤1台で起業しています。
「ある機械メーカーに勤めていましたが、満足できる部品を協力会社がなかなか製作できないので、自分で製作してしまおうと奮起して独立を決意ました」と奥田会長。


社長 奥田 博之 氏と 会長 奥田 篤 氏

60歳で社長引退

 奥田博之社長は、奥田会長のご子息で38歳と若き経営者です。
「子供の頃は親父の油くさい匂いが嫌いで、将来はスーツで仕事をするビジネスマンになりたいと思っていました。 大学も経済学部に進み、卒業後は大阪に本社のある製薬会社のMR(医薬情報担当者)として働いていました。 しかし帰省するごとに"会社を継ぐ意志はあるのか"と言われ、ものづくりへの興味もあったことから、ついに30歳になるという節目の年に"福井へ戻って奥田精工を継ごう"という決心をしました」と奥田社長。

 「高校時代にアルバイトで工場の手伝いをしたことはありましたが、本業でやっていこうとなると話は全く別でした。 まずは加工技術の基礎を学ぼうと、職業能力開発促進センターに入学し6ヶ月間研修に励みました。 毎日同センターに通い学んだ後、夕方に会社へ戻り、仕事をこなすという日々を過ごしました。 このときの姿勢と、後にワイヤー放電加工の技能検定2級を取得したということが社員からの信頼を得ることにつながったと思います」と入社当時からを語る奥田社長。

 入社当時から、奥田会長は常に「60歳になったら社長を引退する」と明言していました。
そして3年後に還暦を迎え、有言実行で社長を引退し会長に就任。
33歳で経営を継承された奥田新社長の誕生となりました。


会社組織への改革

 「社長に就任して、現場だけでなく生産管理業務や材料発注・協力会社への加工依頼などの購買業務、営業活動など会社の業務全般を仕切るようになりました。 ところが今までは職人気質の父が経営していたので、会社が組織として不備な点が多いことに気づき、今後の発展に向けて組織改革が必要であると感じるようにまりました。 その解決策としてセミナーで学んだ品質マネージメントISO9001取得に挑戦し、平成15年10月に認証取得しました。 ISO取得により各部門の責任と権限が明確になり、以前に比べ不良品が減少しました。 "製品は各自の責任検査測定する"という意識と、"不良品が発生した場合には必ず改善提案をする"という行動が工場全体に浸透してきたことがよい結果を生んでいます」と奥田社長。

 同社は、昭和56年にマツウラの立形マシニングセンタ「MC-760V」を設備し、以来現在までに8台のマツウラのマシニングセンタが導入され現役で稼動しています。
最近では平成15年に立形マシニングセンタ「V.Plus-800」を設備しています。
「この"V.Plus-800"は私が初めて自身の決断で設備を決めた記念すべき機械です。 資金の調達から、機械の仕様、発注、納品まで全てを担当しました。 購入の決定を社長として決断するには相当のプレッシャーがありました。 しかし奥田精工の将来を考え、鋼材中心の加工からアルミやSUS・チタンなどの加工への挑戦には、高速加工技術のパイオニアであり信頼性も高いマツウラのマシニングセンタが最適であると迷わず決断しました」と奥田社長。


高速加工機「V.Plus-800」


学習する企業への挑戦

 社長就任以来、奥田社長は各種の経営セミナーや講演会に出席し、学習を続けてきました。
また学習したことを実行に移すべく月例ミーティングと称して月に一度全社員を集め意見交換会を実施しています。
その中では自社の強みと弱みの分析や業務改善提案の意見交換をしたり、新しい切削工具の採用による生産性向上事例の発表などを行っています。
このことにより社員間のコミュニケーションが改善され前向きな企業風土が形成されています。

 社員の学習意識も高まってきています。
本年8月から福井工業高等専門学校で開催される機械系の技術講習会「Fテクノ・アカデミック・スクール」に4人もの社員から是非参加したいとの申し出がありました。
また本年4月に商業高校から入社した女子社員は、生産管理業務を行う上で加工図面が理解できなければ正確な情報が現場に伝えられないことに気づき、 自ら志願して奥田社長も学んだ職業能力開発促進センターに図面の講習を受けに通いました。
さらに現在10名の従業員が技能士の資格を取得しており、もっと上を目指して今も技能検定試験へ積極的に挑戦し続けています。

 学習する企業への意識変革を進めるリーダーとして、奥田社長自らも更なる行動を起しています。
本年4月に福井県立大学の経済・経営学部に社会人を対象にした経営学専攻の大学院が開設されました。
奥田社長はこの経営学部博士前期課程(MBA)の第一期生として入学し、大学院生としての勉学に現在挑戦しています。
「平日の夜や土・日曜に開講される講義での学習と、仕事の両立は時間的にも体力的にも大変厳しいものがあります。 しかし経営者として実務を行っているなかで、大学院で学ぶ実践的経営学は大いに参考になります。 また様々な分野で経験と実績を持つ向上心豊かな社会人学生の方々との交流は、大変刺激になりますし、人脈としても大きな財産となっています。」 と学習企業を目指し挑戦を続ける奥田社長の言葉です。


技能検定合格者の掲示



 同社は、数年前までは少数の固定したお客様との取引が中心で、加工品も加工慣れした鋼材系のものが多いという状況でした。
しかし京都のあるお客様と取引を開始したことで同社に変化が起きました。
このお客様は京都にある計測機器関係や医療機器関係・IT関係のメーカーから仕事を受注しており、その関連部品を同社に発注されています。
この最先端部品は、アルミ系材料やSUSでの高精度加工を要求され、加工現場の意識改革を推し進める機会となったとのことです。
このことが既存のお客様の部品加工にもフィードバックされ、常に加工技術と生産性の向上につながっています。
加工現場の意識を変えるには、難しい仕事に挑戦させ、自ら学ぶ意志をもたせるような環境に追い込むことであると実感した取材でした。


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