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金属光造形複合加工機「LUMEX 25C」を駆使するベンチャー企業
─ 有限会社 ケイ─


有限会社ケイの概要
住 所〒459-8001 愛知県名古屋市緑区大高町字乙新田69
TEL:052-625-3620
FAX:052-625-3649
代表者代表取締役社長 西戸 和重 氏
創 業平成7年10月
設 立平成9年11月
従業員5名
事業内容金型・同部分品・付属品製造


工場全景


 今回は、平成17年11月に金属光造形複合加工機「LUMEX 25C」を設備した有限会社ケイを取材しました。
同社の位置する名古屋市緑区は、織田信長の天下統一の出発点となった「桶狭間」や、東海道の宿場町と絞りで栄えた「鳴海」など歴史と文化の縁する地域です。
同社は、その一角にて金型製作における最先端技術に挑戦しています。

 「学校卒業後、飲食関係に就職しましたが、縁あってプレス金型企業へ転職。 これが"ものづくり"に入るきっかけでした。 始めて図面を見せられて0.1mmなど非日常的な寸法に驚いた思い出があります」と創業者で社長の西戸和重氏。
西戸氏は42歳と若き社長です。


代表取締役社長 西戸 和重 氏と顧問 真野 健 氏

プレス金型技術に特化し創業

 西戸社長は、数社の金型関係の部品製造会社を回り、金型に関する技術を習得。
当時の最先端自動プロを駆使しての金型製作に昼夜を問わず没頭する姿に、取引先からも高い評価を得ていました。
そんな時ある取引先から「それ程の技術力と仕事に対する情熱が在るのであれば、独立したらどうですか」との助言を受け、平成7年に独立して創業。
「独立当初、工場は借りましたが、機械設備を準備することが出来ない状況でした。 仕方なく先輩が経営する工場で夜間機械を借りて加工を行い、昼間営業に回る日々でした。 創業から1年後に漸く機械を揃えて本格的に金型製作に取り組むことが出来ました」と創業当時を語る西戸社長。
現在の設備機械は、マシニングセンタ、放電、汎用フライスなど、金型製作に必要な設備をそろえ、 また金型を設計するために最新のCAD/CAMシステムを導入して金型製作の技術力を構築しています。


困った時には何とかしてくれる駆け込み工場

 「金型業界では試作をやる会社は少ない。 しかし当社は、樹脂部品やプレス部品の完成品まで造る企業です。 西戸社長は、常に新しいことに挑戦し、独学で技術を習得した情熱溢れる社長です。 例えば、ハイブリッド車などで多く使われ、需要が伸びている樹脂成形品の中に金属の部品が組み込まれている製品があります。 この製品は非常に製作が難しいと言われていますが、西戸社長は独自の技術で造り上げることが出来ます。 卓越した技術力のお陰で、取引先から"失敗した製品"や"難しくて途方にくれた部品"を持ち込まれ、 "困った時には何とかしてくれる駆け込み工場"との高い信頼を得るまでの企業に成長しています」と顧問の真野健氏。


「LUMEX 25C」で作成した精密部品の金型

日本の金型産業の将来は?

 同社とマツウラとの出会いは、平成14年に配布した1枚のカタログです。
それは、第21回日本国際工作機械見本市(JIMTOF)に試作機で参考出品した金属光造形複合加工機「M-SINT」のものでした。
このカタログを見た当時は「工作機械のマツウラは知らなかったが、金属光造形複合加工の技術には大変興味を持って調べていました。 まだ試作機で使えないが、光造形とマシニングセンタを合体する基本コンセプトには強く惹かれるものがありました。 それ以後、日本の金型産業は将来どうあるべきかを常に考えるようになりました。」と。

 また「それから数年後、従来の加工方法だけに頼るのに限界を感じていたころ、 マツウラが正式に金属造形複合加工機の販売を開始したとのニュースを聞き、本格的に調査を始めました。 平成17年2月に京都の株式会社OPMラボラトリー社(LUMEX 25Cを既に設備しておりマツウラニュース平成17年5月号に掲載)に金型試作を依頼しテストを開始。 平行して他社の光造形加工機メーカーにもテストを依頼しましたがOPM社のテスト部品の仕上がりを見て、 この機械は満足できる技術レベルに到達していると判断しました」と西戸社長。


平成17年11月に設備された「LUMEX 25C」

中小企業経営革新支援法に基づき申請

 真野顧問は、西戸社長の"ものづくり"に対する姿勢を見ていると、彼なら絶対に金属光造形複合機を使いこなせるとの確信を持っていました。
その確信を実行すべく資金の準備を全て真野顧問が担当されました。
中小企業の経営革新を支援する「中小企業経営革新支援法」に基づき経営革新計画を真野顧問が作成し愛知県に申請。
面接では企業規模が小さい故に経営計画が納得されない状況でした。
しかし「企業規模は小さいが、金属光造形複合加工機を導入することで革新的技術の創生、また経営革新は確実に行えます。 県はこの企業に積極的に融資すべきです」と力説、ようやく融資を得ることが出来ました。
早速、その結果を基に4月にはマツウラへ「LUMEX 25C」を正式に発注、11月に設置されました。

 「LUMEX 25C」の操作は、全て西戸社長が担当され、今年に入り本格的に金型製作を実施、試行錯誤を繰り返しています。
「全ての金型を、このLUMEX 25Cで製作するのではなく、今までの金型製作工程と複合させることで更に製作時間の短縮ができることが分かりました。 ある精密部品の金型をこの考えで作成したところ半分の時間で完成しました。これが我社のノウハウです」と西戸社長の確信溢れる言葉でした。


同社が得意とする成形部品


 周囲からは多額の設備投資に「無謀だ、失敗する」との声もあったそうですが、 若き西戸社長と経験豊富な真野顧問の信頼関係が、この挑戦を実現に導いたと実感する取材でした。


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