ユーザーを訪ねて No.128
マツウラの卒業生である青年社長率いる
株式会社 井部製作所



株式会社 井部製作所
本社〒152-0002 東京都目黒区目黒本町6-9-4
千葉工場
 電話番号
 FAX番号
 URL:
〒289-1522 千葉県山武市松尾町高富1693-1
0479-86-5026
0479-86-5665
http://www.ibeseisakujyo.co.jp
横浜営業所
 電話番号
 FAX番号
〒226-0012 神奈川県横浜市緑区上山3-30-9
045-929-5701
045-929-5716
代 表 者代表取締役社長 井部 良則 氏
創 業昭和41年
設 立昭和55年4月
従 業 員43名
事業内容各種精密機械加工、プレス金型・加工

株式会社井部製作所
工場全景



 今回のユーザーを訪ねては、千葉県総武本線成東駅から車で15分ほどにある株式会社井部製作所の千葉工場を訪問しました。
同社は、マシニングセンタが10台、CNC旋盤が10台、ワイヤーカット加工機5台、プレス加工機20台と多数の設備をそろえ、 お客様のニーズにすばやく対応できる生産体制を持つ受託加工専門企業です。


代表取締役社長 井部 良則 氏


マツウラで3年間研修を受けた井部良則社長

 井部製作所の創業者である井部一治氏の死去により、平成17年1月に御子息である良則氏が社長就任されました。
井部社長は昭和56年に高校卒業後、研修生としてマツウラの福井本社へ。
その後3年間加工現場の実務研修を終えて同社へ入社しました。
「マツウラでの3年間は非常に良い経験でした。もしマツウラへ行っていなかったら、今の自分はなかったと思います。 マツウラを卒業してすぐ現場に入りましたが、スムーズに溶け込み10年間は現場オンリーでやれたのも、その経験のお陰です」と“マツウラを卒業”という言葉で、 研修時代の思い出を語る井部社長です。


時代の先を見て挑戦を継続

 井部製作所とマツウラの出会いは、昭和57年に当時として画期的なリニアガイドを軸スライド部に採用した立形マシニングセンタ「UPM-3VS」から始まりました。
そして昭和63年には40,000回転の超高速主軸を装備した2軸立形マシニングセンタ「MC-800VDC-EX1」を2台設備して、 半導体関連に使用する特殊ポンプ部品加工に挑戦されました。
それ以後も立形マシニングセンタ「MC-760V」、「MC-800VG」、「MC-1000VG」、横形マシニングセンタでは「MC-900HG」、 「MAM700HG」、「MAM700HF-PC12」(パレット12面装備)と常にマツウラの最先端マシニングセンタを設備されました。
平成17年4月に5軸加工機「MAM72-35V」を設備して5軸加工分野への参入も開始しています。
しかも昭和57年に設備した「UPM-3VS」も「MC-760V」も現役でバリバリ活躍しています。


超高速2軸マシニングセンタ「MC-800VDC-EX1」


プレス加工ではオンリーワン技術を持つ

 第二製造部で行っているプレス加工では、日本で井部製作所しか加工できない製品を手がけています。
それは半導体に使用されるシリコンの塊を切断する特殊カッタの製造です。
形状は大きいもので直径800mm、厚さ0.1mmのステンレス製の円盤状のカッタです。
特殊金型の製作、またプレスの加工条件などにノウハウが無ければ加工できないもので、20年以上製作を続けています。


革新をリードする井部社長

 井部社長は、社長就任以来、数々の改革を推進しています。
ひとつは、社是と会社方針の決定です。

社  是◆ 和 協
会社方針◆ 常にお客様の信頼される存在であり続ける
◆ 自信と確信を持って作業を行い、価値ある技術を提供する
◆ 変化に対して挑戦する努力を惜しまない
◆ チームワークを大切にし社員全員で考え行動する

 社是「和協」は「会社全体の和を大事にし、お互いに協力できる会社を作りたい」との思いを込めて、社員と共に議論して決めたものです。
今までは社是と会社方針はありませんでしたが、井部社長が社員と共に成長していこうとの熱き思いを込めて策定したものです。

 もうひとつは、新規市場参入です。
以前は半導体製造装置関連の部品製作が全体の70%を占めていました。
しかし半導体関連のみに依存する企業体制では安定した経営ができないと井部社長は考えて、新規市場への参入へ向けた行動を起こしました。
平成17年5月には横浜営業所を開設し、営業部門に4人を専任しました。
「弊社の規模で営業を4人専任することは無謀ではとの声もありました。 しかし“機械は動かして価値がある”と先代から教わっていましたので工場の稼働率を上げる為に、営業活動を積極的にすすめるよう営業部門新設を決断しました」と井部社長。

 営業活動の効果が現れ、現在では念願であった航空機産業への進出も実現し、産業機器(フォークリフト等の部品)、工作機械関連からの仕事も増え始めています。
更に、5軸加工機「MAM72-35V」の導入を手がかりに医療分野への進出も果たしています。
また品質管理活動を強化する意味でISO9001収得に向けて準備を進めている最中です。
社長就任2年目で、早くも企業体質の変革が進んでいるのを感じることができました。


医療関連部品を製作する「MAM72-35V」


千葉という地域性を優位にする経営へ

 「人材育成が企業発展の鍵です。 以前は東京から人材を募集して採用していましたが、どうしても4、5年で東京へ帰るといって去っていきました。 今は地元での採用に重点を置いています。 その人材が育ち、10年以上の経験者が増えてきたのが嬉しいことです。 また井部製作所の実力を常に意識を持って見ています。 他社と比較して自社の弱み、強みを冷静に判断して、他社がやれない分野に企業力を集中していきたいと考えています。 例えば千葉県には地域性を考えると大型の部品加工や5軸加工ができる企業は少ないので、井部製作所の優位性があると考えています。 しかし二代目ゆえに判断をする時には堅実に考えてしまうので、先代の“先を見て決断してきた実績”には勝てないと最近実感しています。 しかし、これからも挑戦を続けていきます」と井部社長の力強い言葉です。


製作された大小の特殊カッタ


 同社ホームページには“創造の原点は「ゆとり」である”との言葉が表示されています。
この言葉は創業者と井部社長が決めたものであり、良いものを作るには“心のゆとり”が必要との思いを込めています。
常に創業者の思いを大切にする井部社長の姿に経営姿勢が受け継がれていると感じました。
また、井部社長がマツウラで研修していた当時、私も製造現場で働いており、同じ時間を共有した仲間です。
その彼が社長として43名の企業を率いるリーダーとして活躍する姿を見て頼もしく感じた取材でした。
今後も更なる活躍を期待して筆を置きます。


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