こんなユーザー No.102
「ものづくり技術館」でグローバルな情報発信と地域貢献
─ KTC(京都機械工具株式会社)─


会社概要
会社名KTC(コミュニケーションネーム)
※京都機械工具株式会社
創立昭和25年(1950)
所在地本社事務所:京都市久世郡久御山町佐山新開地128番地
久御山工場・KTCものづくり技術館:(同上)
代表者名代表取締役社長 宇城 邦英 氏
従業員327名
ホームページhttp://www.kyototool.co.jp
事業内容・自動車整備用工具その他一般作業工具ならびにこれに関する機器の製造販売
・精密金型の製造販売ならびにプラスチック成形加工および樹脂製品組立
・DIY店向け商品の販売、不動産の賃貸



ハンドツールメーカーとして国内NO.1の実績と信頼


KTCものつくり技術館全景

 今回のこんなユーザ−は、ものづくりには絶対欠かせないスパナやメガネレンチなどの工具を製作しているKTC(京都機械工具株式会社)様です。
久御山工場の一角に「KTCものづくり技術館」を建設し、ものづくりに対する熱い想いを京都の町から発信しています。
今回の取材はこの「ものづくり技術館」を中心にお話を聞きました。
KTC様は日本を代表するハンドツールメーカーとして「軽くて強くて使いよい」を基本に高品質、独創的な技術力で市場をリード。
8000アイテムにも及ぶ多彩な製品を開発し、アイテム数・生産量ともに国内NO.1の実績と信頼を得ています。
創業時より、自動車の車載工具の生産を開始し、その後、本格的に市販工具へと進出。
平成7年(1995年)には、世界のプロメカニックに対応した最高級工具「ネプロス」ブランドを発表し、 一流メカニックが集う鈴鹿サーキットの公認ツールに世界で初めて認定されました。
また平成13年(2001年)には、「TOYOTA F1」チームとテクニカルパートナー契約を締結し、 自動車レースの最高峰F1にもKTC様の工具が使用さています。

 歴史を振り返ると昭和57年(1982年)にマツウラのマシニングセンタ「MC-760V2」を設置されました。
以来、金型製作また部品加工として10台を導入いただき、マツウラMCはKTC様の世界最高レベルの工具づくりの一端を担っています。
平成14年(2002年)には「KTCものづくり技術館」(以下MG館)の試作研究室にMC-660VGを導入され、新しい工具開発の中心機として稼動しています。

「ものづくり」の熱い想いを後世に


1階ショールーム全景(3,000アイテムを一堂に展示)

 お客様との直接対話ができるコミュニケーション(情報交換)の場が必要と考えられ、創立50周年事業の一環として、 企業ミュージアムとオフィスを一体化させたMG館を平成14年(2003年)8月に竣工されました。
設計コンセプトは「グローバルな情報の受発信拠点づくり」と題し、「ものづくり」への熱い想いをお客さまとともに共有したい、 「ものづくり」へのこだわりを魅(見)せたいという気持ちを表現されています。
設計には、社内で45のプロジェクトを編成し、全社員の約3分の1(約100名)が参画されたそうです。
ショールーム、ガレージ、プレゼンテーションルーム、屋上緑化、セキュリティ、見学受け入れなどにチームが分かれ、 用途や機能を自分たちの手で描くとともに、設計コンセプトを如何に実現するかに徹底的にこだわりにこだわったそうです。
また、各チームが夫々担当するセクションで、お客様をお迎えするにあたり、如何に"おもてなし"を表現するかを検討されたそうです。
「社員の想いやアイディアが随所に活かされています。 10年、20年、更には50年経過しても社員が誇りに思える施設になっています。」とお客様センター長の坂本隆司氏は語られています。

製品づくりへのこだわりが息づくミュージアム


環境への意識を高めて屋上緑化に挑む

 1階ショールームでは、壁面展示を中心に約3000点にも及ぶ工具が展示され、実施に手で触れ、体感することができます。
日本のものづくりの原点は、如何に使いやすく工具を工夫するかであり、その歴史や最先端の状況をここで見ることが出来ます。
また、一角には実際に工場で使用していたエンドロップハンマが設置されています。
このエンドロップハンマは建設後に設置することは出来ないので、基礎工事を行う時に設置し、その後、建物を建設するなどのエピソードをお聞きすることができました。
 また、自動車整備用体験ガレージがショールームに隣接されています。
工具の研修に参加された方々が実施にエンジン等の部品の取外し、組立てを経験できる施設になっています。
「自動車整備用工具は各社で部品が異なり、それ専用にすれば整備工場等では多数の工具が必要となります。 それを踏まえて工具に汎用性を持たせることが大事なのです。」と執行役員技術開発本部長の大門俊信氏は開発の苦労を語られています。
同じく1Fフロアーには試作研究室があり、3階の開発研究部門と直結して工具の試作や試験が迅速に行える体制になっています。
単なる記念館ではなく、現在進行形の「ものづくり」が体感できます。

環境への配慮と自然との共生オフィス

モノ作り/お客様センター センタ長 坂本隆司 氏 執行役員、技術開発本部長 大門俊信 氏

 3階には研究開発、マーケティングや営業部門のオフィスが集約され、お客様の声が新製品開発や提案型営業に活かされています。
中央にはライトコート(2Fからの吹き抜け空間)が設置され、外光をふんだんに取り入れ、創造性を発揮できる室内空間とコミュニケーションの活性化を促進しています。
更には環境対応の観点から屋上を全面緑化しています。
約100種、2000株の植栽を行い、断熱による空調負荷の低減(夏は涼しく、冬は暖かい)や、ヒートランド現象の抑制などを実現しています。
そして、この屋上ガーデンはランドスケープアーキテクトの二見恵美子女史によるデザインで、「地域との共生、環境問題への配慮などKTC様の社風に深く感銘を受け、 屋上ガーデンにその意図を反映させています」とのことです。
この屋上ガーデンはお客様や社員の憩いの場として活用され、環境問題についての意識向上にも役立っています。
また、このMG館は第16回(2003年)日経ニューオフィス推進賞を受賞されました。
大手企業が受賞している中で、このMG館は経営戦略の具体化や社員の溢れるアイディアで実現した体験型ショールームとオフィスの一体化、 おもてなしの心や5Sへの取り組みが認められ、「経済産業大臣賞」を受賞しています。

開かれた情報情報発信拠点へ


試作研究室で稼動するMC-660VG

 開館以来、2年間で約8000人もの来場者が来られました。
ビジネス関連だけでなく、学生や一般の方など広く受け入れられています。
京都は修学旅行のメッカであり、その利点を活かして、全国の工業高校にダイレクトメールの発送を行い、修学旅行生の訪問先や 「産業観光」の新たな受け皿としても注目を集めています。
また同館のプレゼンテーションルームを利用して各種団体の研修会や見学会なども開催されています。
「受け入れ業務は大変ですが、オープンにすることで、社員全員が普段接点のないお客様を意識し、CS*や5S*活動が活発化しています。 この意識改革こそがMG館のもうひとつのコンセプトです。」と坂本センター長の言葉が印象的でした。

*5Sとは、仕事をする上での基本となる5つの行動(整理、整頓、清掃、清潔、躾)を意味します。
*CSとは(Customer Satisfaction=お客さま満足度)の意味です。



 平成16年9月号のコーヒーブレイクで取り上げました「手の文化、足の文化」で「日本のものづくりの基本は手である」と述べましたが、 正に手が使う工具は「ものづくり」には絶対必要ですが、あまり表舞台にはでないものです。
工場では常に、「工具を工夫する、また工具を大事に使う」など日常良く聞く言葉です。
しかし、その工具を作っている人々のことまで考えたことがありませんでした。
今回の取材で「ものづくり」に携わる多くの人々のお陰でマツウラも工作機械の製作できることに感謝しなければと感じました。

 また、MG館を取り上げた新聞記事にショールームで工具を見つめる親子の後ろ姿の写真が掲載されていました。
展示されている工具の前で「ものづくり」の楽しさを語る父親の後姿に、わが身を振り返り大事なことを忘れていると反省させられました。
京都へ行かれる予定がありましたら、是非事前に予約頂き、MG館を訪問されることをお勧めいたします。

お申込み方法
申込み先KTCものづくりお客様/センター
TEL.0774-46-3959
(情報)URL http://www.kyototool.co.jp/mg/
開館時間平日(月曜日〜金曜日)AM9:00〜PM5:00
申込要項見学希望日時、人数、連絡先等



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