ユーザーを訪ねて No.118
株式会社 黒田機型製作所

「個性化時代」の自動車業界向け金型製作で特化
株式会社 黒田機型製作所


株式会社黒田機型製作所 KURODA
本社・青葉工場
 電話番号
 FAX番号
 ホームぺージ
神奈川県横浜市都筑区川和町105
045-931-3811
045-931-3818
http://www.kurodakigata.com/
港北工場
 電話番号
 FAX番号
神奈川県横浜市都筑区池辺町3992
045-938-0081
045-938-0082
代 表 者代表取締役社長 黒田隆嗣氏
資 本 金 1,000万円
売 上 高7.1億円(平成15年度実績)
従 業 員 数43名
主 要 事 業プレス金型、フルモールド、検査ゲージ、マスターモデル、アルミ型、INJ型、試作型試作品、防音部品加工

青葉工場港北工場
同本社 青葉工場同社 港北工場



黒田隆嗣
黒田隆嗣 社長

 創業から自動車業界向けに、金型、モデルゲージやフルモールドなどの設計製作を行い、 今日さらに開発競争を続ける自動車産業を金型と外装分野で支える技術集団企業、株式会社黒田機型製作所に黒田隆嗣社長をお訪ねしました。

 同社創業は昭和21(1946)年現社長の祖父が「人の和を重んじる」との企業理念により、神奈川県入江町で創業。
もともと創業者は自動車メーカーの木型部門の工場長をつとめ、主として自動車のボンネットなどを鋳造する木型の製作を担当していましたので、 創業当時の商号は黒田木型製作所でした。
昭和39(1964)年に2代目として現社長の父黒田清隆氏が継承し、新たに機械加工を始め、検査ゲージ、スチールの部品加工を手掛け業容を拡大。
商号も「木型」を「機型」と改め、幅広く自動車業界に係わる企業に進展しました。


大手企業の出来ない金型へ特化

 黒田社長は高校3年の時からアルバイトで工場の仕事にかかわり始め、「金型のいろは」から現場で実体験。
それ以来金型製作が手作業による工程から、CAD/CAMを使ったデジタル工程へ大きく変化していくことを肌で感じ、 大学在学中に、静岡の某工場へ修行をかねて就職。
この工場では最新式のCAD/CAMによる金型を製作していましたが、社会人一年生の見習いや修行の基本として、 掃除や下働きを行い、CAD/CAMのオペレータが帰宅した後、特別な許しを得て独学修行。
毎日深夜の1時、2時に帰宅するという勉強を1年半続け、最新の知識と経験を習得。
「静岡の工場の人達や父親も、当初は3日も耐えられないだろうと言われたが、3年の予定を1年半でとにかく取得しました。 この期間の経験が、それからの黒田機型の経営に大きく生きてきました」と話しています。

 平成7(1995)年28歳で2代目の社長の実父から3代目の社長に就任。
しかし職人気質の強い社員が、これを契機に退職し社員は2/3に激減し、さらに主力自動車メーカーが工場閉鎖の時期に当たったことも重なって、 社長自らが営業に走ることが、初仕事になった毎日でした。
「若造だから門前払いは当然でした。しつこいと言われようと何といわれようと、毎日走り回りました。 そんな中で、某社の購買担当者から外注先を育てるつもりで仕事を出すよと言われた時、ご縁と巡り合わせに感動したものです」と初仕事の思い出を話されます。
2年後には自動車産業の中で、主力自動車メーカーの他に、ガラス関連など複数の周辺企業にも参入でき、 現在の新しい経営基盤が確立できました。

 その経験から「金型を完全に製作するメーカーにはならない。大手企業の出来ない金型のパーツに特化する」ことを経営戦略にしてきました。
得意先のニーズに合わせた自動車板金部品のせん断や、曲げ型のエッジ部分に使われるセクショナルダイの製作技術などを新しく開発し、 独自の地位を確保しました。


サンプル

高速加工への挑戦で全社が燃える

 さらに新しい挑戦で、アルミ金型の製作に取り組みましたが、競合が多く、独自の技術がなかなか確保できないことがわかりました。
この独自技術を持つには、特に金型の精度や生産性を驚異的に上げる必要性を痛感。
たまたまマツウラの高速加工の実績を聞き興味を持っていましたが、実際に高速加工機FX-5のテストカットをマツウラ本社で見学。
アルミ金型の深堀を驚異的速さで加工する実態を見せつけられ、「この機械は簡単に使えるものではない。 だから完全に使いこなせれば、他社より数段高い技術力が得られるはずだ」と直感。
すぐ同社の新しい主力設備として、導入の決断をされました。

 新設高速切削加工機の導入に時期を合わせ「本社青葉工場」の近くに第二工場「港北工場」を新設。
この新工場へマツウラの高速加工機FX-10GW(加工範囲1.0×2.0m、主軸回転数27,000rpm)を、アルミ金型の深堀切削加工するため、 Z軸をハイコラムにした特別仕様で、平成15年4月に設置し、高速切削加工という未知への挑戦に取り組み始めました。
アルミ金型製作で、限界ぎりぎりの深堀加工を実現するために、首下320mmもある長大な特別仕様のツーリングなど準備し、 本格的な高速金型加工への体制を準備。
またCAD/CAMシステムでは従来の金型用プログラムが使用できず、高速加工に適するプログラムへの大幅変更も行いました。
あらゆることが手探りの状態でスタートし黒田社長も、導入した当初の1ヶ月間はFX-10GW機にかかりきりの状態でした。
しかし、この新しい加工技術への挑戦で全社が熱く燃え、試行錯誤を繰り返しながら苦労して製作した金型を前に、 全社員の連帯感を生み出すことが出来ました。


稼動中のFX-10GW型は同社の主力設備に!

技術的に自立したプロフェッショナル集団へ

 現在、「本社青葉工場」は、プレス金型の設計、製作とフルモールドの製作を担当する圧型事業部、 「港北工場」はアルミ型や、アルミ部品までの高速加工を担当するツーリング事業部と防音材の量産を担当する防音事業部、 さらにガラスやボディパネル等が設計通りに製作されているかどうかを検証する検具(ゲージ)製作と多岐の分野で「ものづくり」が行われています。
そしてCAD/CAMシステムも最高レベル機を15セット余り設備し、お客様のどのようなCADデータにも正確に対応できうる体制が完備してきました。

 今まで金型を中心に、その周辺のゲージ関係の仕事まで行ってきましたが、金型はあくまでも単品加工、 これとは異なる量産的な部品加工市場への新参入を始めています。
今では新設の現FX-10GWは半導体関連の、アルミ部品の加工をはじめています。
黒田社長は「アジアのものづくりは安く出来ると言うが、あくまでも安いのは人件費のみで、日本国内の設備、 人材から生み出される価値には新しい創造と技術という競争力がある。 社員にはいろいろなことをやらされ、つらい会社と思われても良い。 挑戦することで技術的に自立したプロフェッショナル集団を作っていく。 これからは人材で企業の価値が決まるのですから」と熱き思いを語ります。
そのために担当の職場の異動も頻繁に行い、CAD/CAMのオペレータも加工現場に回り、机上でなく、ものづくりの現実を体験させています。
また新たに今年1月から毎月の経営の状況を数字にして全員に知らせるガラス張り経営を始め、技術力だけでなく経営的感覚を有する人材育成にも着手されています。
黒田社長の目指す「大手企業のやれない分野に特化する企業」へ向けハード、ソフト、人材が日々成長し続けていることを工場現場のすみずみに感じました。



 大型の自動車用金型と聞くと、ボンネットなどの板金用金型を想像しますが、今回の同社訪問で自動車金型が多岐に渡って奥行の深さを体感することができました。
そんな中で他社のやれない市場をターゲットに日々挑戦される黒田社長の情熱と勢いに圧倒されました。
また黒田社長のリーダーシップのもと、同社の火の玉のように燃える全社員の知恵と工夫が新設の高速切削加工機FX-10GWの可能性をさらにさらに高めていることに感動の取材でした。


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