ユーザーを訪ねて No.115
株式会社 タカトリ

価値ある企業を目指す 株式会社タカトリ
電子部品の製造装置そして、繊維機器のメーカーとして―


株式会社タカトリ Takatori Corporation
本   社奈良県橿原市新堂町313-1
工   場同上
代 表 者代表取締役社長 増田 好美氏
資 本 金9億2,400万円(平成15年9月末)
売 上 高68億円(平成15年9月期)
従 業 員 数234名(平成15年9月末)
主 要 事 業● 半導体・液晶関連機器・ワイヤーソー・繊維機器の製造販売
● 液晶モジュールの組立






 神武天皇建国の神話が語られ、大和三山に囲まれた地、奈良・大和路はまほろばの国。
古代日本人の故郷、奈良県の中心地には、戦前から戦後にかけ編織を得意とした繊維産業が、ひとつの産業として発展してきました。

 この地に昭和31(1956)年10月、株式会社高鳥機械製作所(現、株式会社タカトリ)を設立されたのが、 同社代表取締役会長の高鳥王昌氏です。
同社は、主力事業として半導体・液晶等の電子部品製造装置の開発、生産を行っていますが、 創業は奈良でメリヤス機械の修理業から出発。
その後、パンティストッキング自動縫製機で、世界ブランド「タカトリ」を確立しつつ、 時代を見据えて事業規模拡大に限界を見て脱繊維を模索。
昭和58(1983)年、半導体製造装置事業へ進出を決めてから、液晶機器事業、MWS(マルチワイヤーソー)事業、 そして液晶モジュール組立事業への進出など、新規分野への挑戦を続け今日に至っています。

 今では、液晶・半導体など電子部品製造装置の電子機器事業が売上の約70%に、 繊維機器事業が約10%、液晶モジュール組立事業が約20%と、みごとにハイテク事業に転身。
今号の「ユーザーを訪ねて」第115回は、液晶・半導体など電子部品製造装置メーカーの「株式会社タカトリ」様を、 奈良県のほぼ中心地・橿原神宮から西北へ約3.5kmの本社・工場に、昨年11月末、訪ねました。


電子機器・繊維機器・液晶モジュールが同社事業の中核3事業

 同社の事業分野である電子機器事業は、平面ディスプレイに代表される映像関連の分野の液晶機器事業、 軽薄短小化に伴うパッケージ技術の変化により製造工程の「切る、貼る、剥す、移す」という要素技術をベースにした電子機器製造装置を生産する半導体機器事業、 そしてシリコン・サファイヤ・水晶・セラミックなど電子部品の元となる硬脆性材料を高い精度と高度な技術で切断加工する分野のMWS事業の3部門で構成されています。

 そして創業の原点、パンティストッキング自動縫製機や、洋服などのポケット口自動縫製機・アパレル裁断システムなどで構成される繊維機器事業。
さらに小型から超大型まで、広範な液晶モジュールの組立生産をしている液晶モジュール事業の三本柱です。

 同社の創業である繊維機器から売上の3/4以上を、半導体・液晶を中心にし電子機器分野に転身された経緯を、 同社の増田好美社長は、次のように話しています。

 「電子機器の製造装置に、結果として転身できたのですが、大変でした。 繊維が万年不況産業でしたから、脱繊維を考え例えば、大学ノートを作るラインをやったり、 食品機械や試薬分離分配分析機器なども手掛けました。 試行錯誤の連続から、たまたま地の利と時の運もあったのでしょう。 半導体関連分野に出会ったのを機会に、いろいろ苦労し工夫もし、全社あげて努力してきました。 液晶・半導体への転身は、結果論ですよ。」 そして、「ただタカトリはメーカーですから、品質第一・納期最短・コスト重視・多機能かつ市場タイミングに合うように異分野でも努力してきました。」ときっぱり。


トップダウンでマツウラの高速・5軸制御加工機とシステム―

 同席されていた執行役員、生産本部資材部長の吉村俊幸氏は 「メーカーの使命である、品質第一とコスト低減、そしてタイミングよく市場へ提供する納期短縮や工程短縮に可能性ある面白い機械があるから、 使ってみてはとトップダウンで、マツウラの5軸加工機を提案しましてね。 高速加工と5軸加工が可能なマシンを設備しました」とマツウラMAM72-35Vマシンと、3次元CAMの導入について話されます。

 同社の繊維機器や電子機器の主要パーツは、ほとんどがアルミ材に特化していることから、 マツウラMAM72-35Vの導入を機に、社内転換を新しい切削加工方法の「高速加工」「5軸制御加工」「新しい3次元加工から5次元加工」への転換を企図。
「製造現場では、高速加工と5軸制御加工とが同時に出来る機械、それも3次元CAD/CAMと連動させることで、苦労したようです」と吉村部長。

 製造現場で、新しいシステムの設置から立ち上げまで担当し、最近まで事実上のオペレータだった製造部加工部門リーダー、 柳川賢一氏は次のように話しています。
「加工部材がアルミに特化したのは、ハイテクメーカーとして当然ですが、これをマツウラの新しい機械とシステムでやること。 マツウラにも協力願ってギブスシステムで、図面を変更するCADからプログラムを作成するCAMの仕事をやり、 これをマツウラのMAM72マシンの5軸加工機につなぐという、三段構えの仕事でした。 しかも、どれも初体験。 やるからにはタカトリで一番に難しいパーツに挑戦しようと。 もともとアルミダイキャストだったパーツを、アルミブロックの削り出しにする、 パンスト用縫製機の肝心なパーツです」

高速・5軸制御加工機(40パレット装置)MAM72-35V型 加工時間が従来方式の1/2に短縮となったパーツ


全てが新たな「3次元CAD/CAM」「高速加工」そして「5軸制御加工」の新システム―

 「マツウラの3次元CAMが最初で未経験なら、主軸回転が高速の12,000加工、5軸制御も多面パレットも未経験と初物づくしでした。 初体験から、いろいろ苦労して約1.5月で試削になりましたが、コンピュータ上と実削では思わぬ喰い違いが出ました。 さらに1ヶ月くらい―。 でも成功した時には、これでやれば品質で間違いないと確信しました。」

 以来、新しいシステムを製造現場の生産設備として稼動させ、同時に試削パーツの知恵と工夫をもとに、プログラムの作り込みを実施。
「設計部門にも5軸制御加工機の新システムの設置を伝え、設計や図面の変更もすすめ5軸制御機の従来モデルのプログラム作成は、かなり点数も増えました。 あとは材料のアルミブロックさえあれば、受注や指示と同時に加工ができます。 1個でもJITで生産が出来ることも可能です。 2年前の苦労が今、報われました。 半導体製造装置や繊維機器などのパーツも、5軸加工機用にどんどん設計変更し、昨年から本格的にこの新しいマシンとシステムで加工を始め―。 でも稼働率は、まだ余裕がありますから、さらに工夫し努力します」と話す柳川氏。



 松浦さんもタカトリもメーカー。 需要者様の最初の商品は、商売にならないものです。 最初の1号機の効果が認めれば、2号機を発注する。 このレピートで初めて商売になる。 だから松浦さんもタカトリから早く効果を認められて、2号機のレピート注文をもっていかねば。 評価は厳しいものですよ―。
最後の増田社長の言葉は「お客様のトップの掛け値なしの本音」愛ある一言でした。

 この本音に秘められた含蓄ある多くの中身を噛しめながら、晩秋の奈良は大和路を後にしました。


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