ユーザーを訪ねて No.114
株式会社 開工業所

高度な技術力と創造力で、新しい明日を拓く
三つの中核部門(金型・工具、造機、管材)で着実に伸展中


株式会社 開(ひらき)工業所 HIRAKI INDUSTRY LTD.
本   社山口県下関市長府港町7-15
工   場同上
代 表 者代表取締役社長 開 憲二(ひらきけんじ)
資 本 金2,000万円
売 上 高12億円(平成15年5月期)
従 業 員 数100名(平成15年9月現在)
主 要 事 業● 金型・工具部門
アルミ型材熱間押出工具/ステンレス・銅合金パイプ熱間押出用工具/各種工具
● 造機部門
各種機械設備(連続鋳造装置・小型プレス・押出プレス用付帯設備・押出用精整設備・鋼管用精整設備・圧延品精整設備等)の設計・製作・据付・配管工事/機械設備やクレーンの保全点検整備
● 管材部門
熱間押出用ビレット加工/熱間押出用マンドレル加工/各種深孔加工/軽合金・銅合金およびステンレス鋼管の二次加工




開 憲二社長

 「お客様の満足を超える“何か”に挑戦することを、最高の目標に、私は工夫し改善し努力しています」と、 ゆっくり話されるのは、「あくなき未来への挑戦」を標榜される、株式会社 開工業所の開 憲二社長です。

 「技術のひらき」「品質は工程で造り込め」をモットーに、金型・工具、造機、管材の三部門を企業経営の柱にして、 高度な技術力と創造力で着実に新しい明日を拓いていく同社。
これからのニーズ、さらにお客様のシーズに応え、最新鋭の設備と高度な技術力で、 アルミ合金・ステンレス鋼・チタン・ジルカロイ等の特殊合金材などの新素材や新製品を、 ミクロン単位の高精度・高品質・短納期そして低価格で加工し、数多くのお客様に提供している中堅メーカーです。

 第114回目の「ユーザーを訪ねて」は、今もっとも光り輝いている東アジアのゲートウェイ、 そして本州の西端、古くから我が国の西の玄関として、大陸の窓口として繁栄している「下関市」に、 株式会社 開工業所様を今秋10月に訪ねました。


金型・工具、造機、管材の部門が三本の矢

 同社は戦後間もなく、昭和21(1946)年5月、創業者の開 溜氏が勤務されていた、神戸製鋼所長府工場とのご縁で創業。
いらい、神戸製鋼所の事業発展と軌をひとつにして同社は伸展し、今日に至っています。

 「神戸製鋼所さんから私達は多くの事を学んできました。 特に神戸製鋼所さんの技術陣や設計陣は、メーカーの設計者・技術者として、真摯な態度や清廉な理念に基づいて、 私共と接し相互に力を合わせて、新しい技術や加工の研究に努められており、その姿勢に敬服しています。 ですから、神戸製鋼所さんの教えや学びは、即ち私達の生命でもあると思ってきました。 学んだ技術や品質、物造り、そして企業経営の姿勢が、そのまま開工業所の企業理念になり経営姿勢になっています」と開社長が話します。

 同社の事業は、三つの中核部門で構成されています。
ステンレス鋼・銅・アルミ等パイプ押出用の金型・工具を主製品として、豊富な経験と高度な技術、 そして最新鋭設備と熱処理まで一貫生産をし、特に大型のアルミ押出用金型では、国内有数の加工技術をもつ「金型・工具」部門。
一般産業機械や機械部品の設計から製作・据付までの一貫作業を、培われた知識と経験を生かし、 結合力で高性能な製品で、お客様へ提供。
さらに機械設備の保守・点検整備・配管工事など幅広く技術・技能を提供する「造機」部門。
そして原子力用高級鋼管を始め、ステンレス鋼、合金鋼、チタン等の各種管材用ビレット加工を行うと共に、 軽合金、銅合金、鋼管製品の二次加工をも行っている「管材」部門。
これら三部門が同社経営の「三本の矢」です。

 開社長は「現状、神戸製鋼所ではアルミ押出・金型を、そして車両関係の日立笠戸・川崎重工その他、 自動車関係でトヨタ自動車・日産自動車・ホンダ技研・富士重工など、OA機器でキャノンその他に使用する、 御注文を頂いています。 また数年前から、新規の顧客としてアルミサッシなどの金型需要にもお応えし、 当社の技術力・サービス・スピードが少しは認めて頂いているのでは―」と笑顔で応えられます。


押出金型を放電加工から、高速切削/直彫加工へ転換

 これら技術面や品質面などで第一級のお客様を、満足させうるためのノウハウについて、 開社長は「神戸製鋼所さんのアルミ関係で培った技術が基本です。 同社へ納入する製品の品質・価格・納期は勿論ですが、私達が考えてきたのは“同業他社とのちがいを出す工夫”と“プラスアルファの満足度”でした。 言葉ではなかなか表現できませんが、例えば4〜5年前から実行してきたことで、押出金型は、放電加工が常識でしたが、切削加工でやっています。 何でも放電では他社と勝ち目がありませんし、ちがいが出ません。 特に最近、軽量化が叫ばれている自動車やのぞみなど新幹線の鉄道車両、航空機などの関係部品は、 品質・価格・納期が一段と厳しく要求されています。 当社では、物によって一例ではありますが、ICリードフレームを圧延する特殊金型は、 図面を頂いて納品まで約10〜12日掛かっていた工程を、2〜3日で処理できるまでに工夫を積み上げてきました。 これも放電加工ではなく、創業から培ってきた“他社とはちがう何か”の当社のパワーであり、ノウハウと思っています」と話されます。

 この放電加工から切削加工への発想の転換を、成功させたのが高速切削加工という新しい、切削技術です。
これが大きな突破口になったようですが、この突破口に火をつけたのが、マツウラの高速切削機械との出逢いでした。

 「本当に、こんなに硬い材質のものが削れるのか、信じられなかった。 高速加工が出来るというマツウラともう一社の二社に、試し削りを同じ条件でさせました。 マツウラは約束通り仕上げてきましたが、もう一社は長い間待たされたあげく、 歯が立ちませんと預けたままの材料を返却してきました。 マツウラの試し削りした物を一目見たとき、これから私達の勝負は高速切削加工だと思いました。」と開社長。
これが同社にマツウラのMC-800VG型で15,000回転主軸が導入され、高速切削による直彫加工がはじまった端初でした。

 このMC-800VG型で、お客様から図面を頂いて即、見積し、ご注文頂ければ2〜3日で納品という、離れ技がやれるようなりました。




図面を頂いて3日目に納品が、セールスポイント

 そして昨年、マツウラのリニアモータマシンLX-1型の主軸回転60,000を追加して導入されました。
LX-1型は、今後の新しい材料や技術が出たときの事を考えて採用された由ですが、 既に大手事務機器メーカーの複写機用ドラムの芯棒の加工で、1/100mmの客先要求が8/1,000mm以下の高精度で仕上げており、 さらにこの条件を夏でも冬でも8/1,000mm以下で仕上りになるよう、加工現場で挑戦中でした。

 これらが同社の提案型販売のはしり、MC-800VG型であり、同社のセールスポイント“図面を頂いて3日目に納品”は、 「さらに当社にとって完璧になり、強く大きな武器となりました。特にLX-1の威力には、大きな驚きでした」と開社長。

 “図面を頂いて3日目納品”のビジネスモデル作りには、同社も相当な苦労があったようです。
開社長は「どんなに良い機械や道具でも、私達ユーザーや使うオペレーターの工夫と努力、 そして絶対うまく使うんだという意気込みや心意気などが大事ですね。 それと治具や工具、刃具などとの絶妙なバランスが、どのように早く自分のものに出来るかですね。 そんな意味で、高速加工では豊富な実績と経験があるマツウラさんと出逢ったこと。 それと機械の購買選択を現場の作業者に決めさせているのが、当社の取り決めなんですが、 彼らが必死で挑戦してきたことなどが、当社の早く立ち上がった成功要因です」と話します。

 同社は、将来をにらみながら“さらに新しい取り組み”として、マグネシウムやステンレス・ジルコニュウム、チタンなどの押出型などに挑んでいます。

 そして同社の技術力を、日本中のお客様に喜んで採用頂けるような努力を惜しまず続けられています。
そのためには、これからどんどん育っていくユーザーの若いスタッフの方々に、開工業所と取引して恥をかいた、 といわれないように最大の努力をしていくつもり、とも。
「私達、開工業所とお客様とが相互に助合い、切磋琢磨して、より良い結果が出るよう努めていきます」と、きっぱり話す開社長。

ダイス マンドレル




 幾度も世の中を変えてきた歴史の舞台、関門海峡を目の前にした、当地、下関市。
その工業部門の一角を担う神戸製鋼所長府事業所と、軌を一にして発展の、株式会社開工業所。
企業規模は中規模ながら「他社にはない技術を、他社が真似のできない方法」で、 日本中のお客様を満足以上の満足で―と、健闘しつづける姿の一端を垣間見た、今回の初訪問でした。


前画面へ戻る