新しい技術こそマツウラの真骨頂
物作りの原点にマツウラの機械がある
MADE IN JAPANを忘れずに/大賀会長
230余名の前で話す大賀会長
ソニー名誉会長で、マツウラ会長の大賀典雄さんが、2月15〜17日のマツウラ本社工場の来社を機会に、
約1時間、本社在社の役員と社員を前に講話と質疑応答を。
大賀会長は230余名を前に、「久しぶりに皆さんの元気な姿を拝見。今日は特に嬉しく思ったことがあります。
それは、マツウラの皆さんが新しい技術と新しい商品に一所懸命に取り組んでいる地道で真剣な姿を、拝見したからです。」と、
わかりやすく、語りかけました。
大賀会長の講話要旨と、ザックバランな質疑応答の要旨は以下のとおりです。
マツウラ役員と幹部社員に囲まれた大賀会長
― 講話 ―
1.
久しぶりにマツウラの皆さんと、こうしてお会いできて大変うれしく思います。
私は一昨年秋から昨年3月までの闘病生活、生と死との背中合わせの中で、3ヶ月余りを暮してきました。
今までは、ほぼ1年に1回は福井を訪ねて、マツウラがやっている新しい商品や、技術などを見てきましたが、
それが私の楽しみでもありました。
2.
そして今年、久しぶりに訪れることが出来ました。
特に今年の見学は私にとって、大変嬉しい思いがしました。
それは新しい技術を駆使した、新しい商品が皆さんの力で完成していたことです。
レーザによる造形と高速切削加工の一体化が完成したことは、まるで夢のようなことだからです。
3.
いかにも簡単そうな「ジッパーはYKK」と、いわれるほど世界一のシェアを確保し堂々とされていらっしゃるYKKさん。
その蔭にも皆さんの力で作り上げた、マツウラの機械が活躍しているのです。
YKKのジッパーの素晴らしい開閉の時の感触、「これこそジッパーだ」との思いを実感されるでしょう。
その実感された円滑なすべりの裏舞台でも、マツウラの技術が支えてきた、と私は思います。
4.
マツウラが作っている機械は、このように縁の下の力持ちであって、
私達の目の前に出てくるような第一線に出てくるものではありません。
しかし、さきほど新しく皆さんが作ったM-PHOTONを見て、縁の下の力持ちとして、
どれほど世間の皆さんに、これから役立つだろうと思うと図り知れない嬉しさがあります。
5.
私が昔、学生時代であった頃以降に、ジグポーラという工作機械がありました。
数ミクロンの精度が出たが、今やその精度以上のものが、生産現場で使われている。
この技術もマツウラの皆さんが、苦労してやってきたからで、私は皆さんに感謝したい。
合わせて、世界規模で日本で作った機械が、こうして世界に雄飛し活躍していることに、改めてお礼申し上げます。
6.
最近の情勢は大変な時代です。
日本の政治や経済の問題は遅々として進まず、安定しているように見えて、本当はますます悪い状況になっています。
私達は、しっかり日本のリーダーである今の内閣に、物を申していかねばならない。
今は正に戦後、最悪の状況でしょう。
デフレは大変なんだということを実感し、何とか打破するために、少しでもインフレの方向にむかわせねばならない。
本当なら景気が僅かでも、上向きに伸びねばならないのに。
こんな閉塞感は、やはり私達日本国民が、政府や国家を信用しないからでしょう。
従って良い循環になるよう、何とかしてギヤを入れ換えるように、力を結集しなければならない。
7.
イラク問題にしても、英国や米国と鉄壁のような欧州連合との間に、不協和音が出ている。
世界の困難さや混乱さが、イラク問題そのものだろうが、このような状況は当分の間、混沌とした形で続くと思う。
こんな今だから、なお平和と戦争とでは、景気に大きな差が出てきます。
戦争では大きなダメージがあり、特に経済の立ち上がりで大きな問題になりかねない。
日本は北朝鮮問題もかかえており、難しい立場にある。
このような状態だから、私達は日本の政府や国家をしっかり見守り、今以上に悪くならないよう仕向けていかねばならない。
M-PHOTONを興味深く見聞する大賀会長
― 質問Qと回答A ―
Q高岡:(レーザ事業推進室長代理)
テクノロジストの生産性や効率性を、引き上げねばならないとの思想があるが、どのように思考し行動したら良いか。
A大賀:
必要なところどころにテクノロジストがいることが、極めて大事である。
マツウラの前会長(故松浦敏男氏)の思いが、現在までテクノロジストを大事にしてきた。
今のマツウラの結果は正にこれだと思う。
これだけ苦労してもこれだけか、というのではなくて、日本からテクノロジストが逃げ出しつつあることに大きな危惧を抱いている。
日本が生きていくためには、テクノロジストが頑張っていくことが大事で、日本の生産を外国に出さずに進められるように、力を合わせて努力してほしい。
日本はこれから、どうやって生きていくのか。
外国に出した生産を日本に戻すために、新しい物作りのために、私達は生産性をあげ魅力ある商品に仕上げねばならない。
マツウラの機械をうまく使って、日本に生産を戻して、うまく使いこなせるようにせねば、ね。
マツウラが MADE IN JAPAN に日本の物作りの中心になるように、そしてさらに頑張れるよう、素晴らしい商品を出してほしい。
そんな点からみても、今のやっている新しいM-PHOTONは可能性の多いものになると思う。
Q橋本:(総務部長)
中国の工作機械消費量が、世界の3番目になった。
もしマツウラが中国に販売するとしたら、どんなリスクがあるか。
A大賀:
マツウラの機械を中国に販売することは賛成しない。
今、日本には1億2千万人の人がいる。
この人達が食べていかねばならないことは明らかであろう。
そのために、ビジネス上からは当然と思うが、中国に負けない、競争に負けない商品や物作りをして、技術を編み出す、生産をしていく。
そのためにも、日本の生産を無くさぬように、皆さんも工夫し努力してほしい。
中国の発展以上に、これから日本で1億2千万人の全ての人達が食べていけるよう、皆さんが努めてほしい。
Q天谷:(開発研究部長)
テクノロジーが良いだけでは、今は売れるとはいえなくなった。
反対に、マーケティングで世の中に売れていくことが出来るか。
何か考え方があれば教えてほしい。
A大賀:
トヨタ自動車は、30年余り前には三流会社だったはず。
それを一流の日本一にしたのは、生産革新から製品革新にしていった豊田英二氏が社長の頃。
それこそ、品質第一とプロダクトプランニングの二つだったはず。
日本国内で作っても、日本国内でも海外でも売れるのは、プロダクトプランニングがキーワードだったからであろう。
世界の市場で知った情報を持ちよって、新しいプロダクトプランニングパワーによって努力すること。
プロダクトプランニングパワーを作るため、数多くの人達やグループを結集し、マツウラが福井でやっていけるよう、
たえず徹底的かつ真剣に討論、討議し、社長に意見を通して将来のマツウラが、福井という特性を生かしていくことが大事。
ソニーも役員会が終ったら、夜中の12時すぎだったことがよくある。
将来の工作機械がどうなり、マツウラがどうなるのか。
ストラテジーをどうするのか。
毎月の会議を開催するなどを含めて、真剣にとことんやってほしい。
英知を集めることが大事。
「マツウラだけは、マツウラの技術や機械は、大丈夫だ」といわれるように、それこそマツウラが英知を結集してやることだろう。
Q上村:(国内営業部長)
縁の下から私達は、もう出ても良い時ではないのか。
上に出る時の意見は。
A大賀:
誰も縁の下にいろとはいっていない。
上に出るために、もっとパブリシティをうまく活用してはどうか。
マツウラに限らずパブリシティの活用方法が、あまり上手ではない。
新聞やテレビなどで、それも全国版やワールドワイド面で、うまく取り上げられれば大きな反響がでる。
又、縁の下が70%、縁の上が30%でも良いはず。
地味にやってきたことを、さらに進めていくことも、また一手である。
ソニーも、最初は海外からの日本へのパブリシティが、大きくパワーとなり、通りも良かった経験があった。
この底流にある根本は、ソニーの基本であるサムスイング・デファレント、サムスイング・ニューだ。
この考え方は、マツウラにも勿論、あい通じるものである。
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