こんなユーザー No.96
ありとあらゆる特殊鋼材・それも熱処理ずみのものをみごと加工する――八千代田精密(株)
航空宇宙機器部品加工の主事業を水平展開
山形県米沢(上杉鷹山)の地で――
―八千代田精密株式会社―
会社概要
商号
八千代田精密株式会社
創業
2000(平成12)年3月
所在地
山形県米沢市
代表者
代表取締役社長 佐藤 久志 氏
資本金
1,800万円
従業員
23名
事業内容
●航空宇宙機器部品加工
●風洞実験模型制作
●精密機械部品加工・各工具設計製作
佐藤 久志社長
東北6県で今、一番元気のある山形県は南部、置賜地方。
名君・上杉鷹山の才知と英断によって、特色ある産業と経済を地場に再興させ、 現在に至っている歴史と文化、伝統の街・米沢市。
その北部近郊で、航空宇宙機器部品加工を主要業務に、根付かせているのが「八千代田精密株式会社(社長は佐藤久志氏)」です。
同社がこの事業に関係されたのは、今から35年前の1967(昭和42)年。
もともと1948(昭和23)年に、八千代田産業株式会社の設立で、工作機械の製造販売をされたのが創業の原点。
いらい国産初の油圧倣い装置メーカーとして開始した1962(昭和37)年から5年後の、 1967(昭和42)年に石川島播磨重工業・田無工場様からの航空機エンジン部品製造の開始が、この業界の端緒です。
その間、1965(昭和40)年には、八千代田産業の分社化で、NC工作機械や油圧倣い装置の製造のほか、 航空機部品関連の業務を八千代田工業へ事業譲渡。
そして、この中の航空宇宙機器関連製造を、1979(昭和54)年に新しく米沢に工場を新設し、同事業に本格的進出。
さらに2000(平成12)年3月、八千代田工業から新しく「八千代田精密株式会社」に独立し設立創業。
同6月から新組織と新体制で本格稼動に入り、今日に至っています。
豊富な技能・技術に裏打ちされた経験が強味に
同社の佐藤社長は、その特長と経緯を、次のように話されます。
「もともと当社関係の創業者・浅間龍蔵氏が85年前の1917(大正6)年に、 千代田貿易商会を設立したことが源流でした。 米沢出身の同氏のこと、進取の気質も高く機械という、当時としては新しい事業一筋にすすめたのでしょう。 この80余年の間には、いろんな経緯がありました。 結果として東京での事業展開も、今では米沢の当社だけが、存続企業として小規模ながら創業者の出身地に、 根を下ろせたことになります。 この間のやってきた豊富な経験と実績、そして技術や技能が今の会社に、 うまく伝承され会社の全員の心身に、しっかり根付き、これが当社の強味になっています。」
同社が航空宇宙機器への事業展開は、これらの経験と実績の中で、 物作りの基礎的な心を知り尽くしたから可能だったのでしょう。
同社の工場の隅々には、その技能や技術が散見されました。
例えば、同社の設備の1/3は同社のスタッフが技術と技能を持ちよって、全て自社製ないしは、 汎用設備のNC化改造によっていますし、同社製の設備は、しっかりと稼動していました。
「これも、今までの高度な技術と技能の蓄えがあったからです。 米沢工場の進出いらいの技能をもつ人材は、約70%で、この人達が工場の物作りの中心的な支えになっています」と佐藤社長。
具体的な経営目標が工場に掲示されています
同社が自前で製作した2頭軸フライス盤も現役の有力設備です
作業の遵守事項と5S運動をも工場に掲示されています
航空宇宙関係部品もカンバン方式の1個流し
同社のこれら航空宇宙関係事業は、米ボーイング社の部品加工で、 日本の大手航空産業・富士重工業株式会社様からの直接受注によるものです。
それだけに、この事業への気配りには、一般的な事業にはない特別なものがいるようです。
佐藤社長は「加工精度そのものより、形状が複雑なものや、航空機用の部品ということで一般とは違う加工を指示されるものがあること。 それと材料は全部、特殊な材質のため支給されますから、加工ミスや材質ミスのない完璧な管理と注意が第一。 あとは納期おくれのないことですね。 それと、加工図などが米国からの発注のため、JIS規格にはないインチサイズや、 日本にはない独特のものなどもあるため、ついウッカリ間違えた、なんてことは出来ません。 この点は、大変な重圧感があります。」と話されます。
またここ6〜7年の傾向として、航空機器製造業界でもトヨタのカンバン方式に倣って、 発注が原則1個流しが時代と共に定着してきたため、だんだん難しくなってきたようです。
こんな状況下で、同業界の部品加工は、加工工程などがさらに多く複雑になっているため、 段取りの取り方によっては、大きな差が出てくることが、今からの重要な課題として解決をせまられています。
「私達の仕事は、切り粉を出してナンボの世界です。 特に航空機器関係の部品加工は、例えば100kgの材料のブロック材を96〜97kgも削り取り、 正味部品への仕上げが3〜4kg位になるようなものです。 その上、1個流しの厳しさも加わりますからね。 1個流しは段取り替えで、勝負が決まり、これに工夫をして、いかに段取り負けしないか、考えねばなりません。」と佐藤社長が続けます。
段取り負けしないマツウラのMAM72-35V
佐藤社長(左)と栗木課長
この段取り負けを克服されるために、同社がいろいろ検討して購入設備されたのが、 マツウラのMAM72-35Vの5軸制御加工のマシニングセンタです。
昨年の9月設備して、丁度1年経った今年までの1年間は、同社にとってラッキーな時期でもあったようです。
製造部製造課の栗木和彦課長は、段取り負けしない工夫を、マツウラのMAM72-35Vに解決を見つけられたようです。
「それまで汎用立形マシニングセンタで6回の段取替えが必要だったものが、 MAM72では2回の段取替えですみました。 ですから従来は1日11〜12時間稼動で、1.5〜2個が精々でした。 MAM72は、1日24時間稼動しますし、ほぼ無人稼動で1日7〜8個の仕上がり。 しかも1ヶ月680時間の稼動には、本当に驚いています」と栗木課長。
MAM72-35Vが新しく設備し稼動しはじめた、昨年9月に期を同じくしてISO9001認証の準備と、そのキックオフ。
そして同社では、あらためて「品質第一」としての品質方針を社内外に発表されました。
「品質は顧客が決めるもの、顧客に喜ばれ信頼される製品を提供する――」と、声高らかに訴えています。
「要求された品質を確保するために、たゆまぬ努力と質を高め、全員参加のポリシーでもの造りを致します。 それが私たちの提供しうるものです。そしてそれを提供し続けます。」
同社の利益の源泉となる加工現場は、明るく見違えるほど、きれいな工場でした。
品質第一の品質方針は、正にこれからの日本の物作りの方向づけを、 上杉鷹山の地・米沢から世界にむかって発信している姿、そのものでした。
24時間フル稼動のMAM72-35Vは、同社の主力設備になっています。
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