イギリスは、世界のモータースポーツの要衝。
モータースポーツバレーを探る



年間生産高・約30億ポンド/雇用者数・約3.8万人 そして関連企業数・約4,000社――

 2002年のフォーミュラ・ワンも無事終了しました。
今年も大混戦の中で、私達をはじめ世界中のF1ファンを湧かせました。
F1はマシン(車体)とドライバー(運転手)の極限に近い技術と技量を競い合う、 自動車レースの頂点に立つ世界的なレースです。

 F1に参加する世界の著名な自動車メーカーは、極限に近い「クルマ作り」への技術・研究に鎬を削っています。
その中心となっている世界のモータースポーツの要衝であり、メッカがイギリスである――と、 いう事実が意外と知られていないのです。
どうしてイギリスが世界のモータースポーツの要衝であり拠点になったのか。
英国政府の投資広報誌や、モータースポーツ関係の資料と関係先の取材で、ここにレポートします。


ロンドン/バーミンガム――
ウエストミッドランドのコベントリーを中心とした地域=モータースポーツバレー


 英国中部ウエスト・ミッドランド、コベントリーに本部がある「英国モータスポーツ工業会」で、 世界のモータースポーツ界をリードする、英国の技術の優位性と、その歴史的背景を調べてみました。

 『映画産業といえば、誰もが真っ先にハリウッドを思う。
本当は米国よりインドの方が毎年はるかに多くの映画を制作し、配給しているにもかかわらず。
勿論、イギリスでもフランス、ドイツでも素晴しい映画が生み出されているのだが。
またシリコンバレーとよばれる地域は、1960年代の後半からエレクトロニクスやメカトロニクスに関連するベンチャービジネスが、 アメリカのカリフォルニア州パルアルト周辺に集積したもの。
ベンチャービジネスの語源は、「危険をおかしてやる」「賭ける」という動詞的な意味あいと、 「冒険」あるいは「投機」という名詞的な意味あいのある英語ventureから、 日本の中村秀一郎・清成忠雄の両教授が命名したもので、 高度の専門知識をもち、新技術・新事業の研究から始まり、 それらを事業化した収益性の高い革新的な中堅・中小企業をさす、ベンチャービジネス。
そのモータースポーツ界の、ハリウッドやシリコンバレーに当たるのが、英国のモータースポーツバレーなのです。』

 このモータースポーツ・バレーに該当する都市は存在しない。
地図上に厳密に指し示せる地域があるわけでもなく、ロンドンとバーミングガムにはさまれた、 ウエストミッドランドのコベントリーを中心とした緩やかに広がるバレー(谷)ともいえない一帯を指すようです。
その呼称にふさわしく、ここにはF1やワールドラリー選手権のチーム本部、 モータースポーツ関連の専門メーカー、レーストラックなどが数多く散在しているが、 ハリウッドが地域を超えた概念でとらえられているのと同様に、イギリスのモータースポーツ産業も、 国内全域に広がっており、それらの関連企業すべてが、モータースポーツ・バレーの住人とみなされているようです。

 英国モータースポーツ工業会の会員企業には、ウイリアムズ、マクラーレン、ジョーダン、ルノーなどの F1の名門を含むレーシングチームをはじめ、ブレックランド・テクノロジー、MGロータス、ローラなどのシャシー製造メーカー、 またプロドライブ、リカルド、ワーゴンなどの部品やシステムエンジニアリング専門業者など、 200社以上が名を連らねています。

 その産業規模は、年間生産高で約30億ポンドにものぼり、雇用者数約38,500人、関連企業数は約4,000社――。
モータースポーツ産業は今や、英国の経済成長に寄与し欠かせない産業のひとつに成長しています。
この発祥には、産業革命いらい連綿と受け継がれてきた、英国人魂が深くかかわっているようです。


航空産業から派生・発展してきたモータースポーツバレー

 現在、モータースポーツ・バレーとよばれる地域は、戦前戦後を通じて、航空産業が栄えた土地です。
戦後、この地に復員してきた若者たちは、ポケットの中は空っぽでも、 戦争から解放された喜びで活力にあふれていました。
その彼らが、地場産業の技術を掘り起してマシンを製造し、 放置されたままの飛行場の滑走路を走り出した、といえるのでしょう。

 戦前の国際モータースポーツは、イタリアやフランス、ドイツなど欧州大陸製の大きくて重いマシンが主流で、 大手自動車メーカーが各々のサーキットを支配していました。
ところが、戦後の英国生まれは従来とは発想も技術も異にする、軽いマシンでした。
見かけは、まるで素人づくりの、おもちゃのようなマシンながら、 技術では欧州大陸製となんら遜色なく、何よりもそのスピードが戦前のマシンの比ではありませんでした。
まさにモータースポーツは、英国の戦後に生まれたベンチャービジネスの企業群そのものでしょう。

 その結果、国際モータースポーツが再開されると同時に、英国勢が世界のハンドルを握り、現在に至っています。
英国が世界のモータースポーツの要衝であり、メッカになった理由は、 このような歴史的な背景と必要性があったからでした。

 ここで磨かれた、モータースポーツの物作りの技術やノウハウは、 間違いなく世界の冠たる「物作りの原点」として輝いています。


マツウラ英国の販売拠点MMP社もモータースポーツバレーの一角に

 マツウラの英国市場をとらえている拠点は、バーミンガムの目と鼻の先、レスターシャ州コールビル。
モータースポーツバレーを視野に入れたビジネスを展開できるところに位置している MATSUURA MACHINERY PLC(略称MMP社 マツウラ英国現地法人)。
英国市場で活躍するMMP社こそ、航空産業から大きく派生発展している、 モータースポーツビジネスに特化させる、将来有望な主要な拠点として活躍が期待されています。


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