ドイツ - ユーロ -
マツウラ・ヨーロッパ代表 鞍津輪隆



 とうとうドイツマルクが、イタリアのリラその他ユーロ圏の通貨と共に、2月28日をもってその生命を閉じました。
3月1日からは、欧州の12ヵ国で、ユーロが唯一の法定通貨となります。
今週末の新聞にはこれらの旧通貨への惜別の意を表した記事が満載であろうと、 ドイツ語、英語の主要な8紙を買い込んで調べたところ、記事は1本だけ。
しかもアメリカ系の新聞に掲載されただけという寂しい状況でした。

 この記事も、『この最後の日には、本年1月1日のユーロ通貨導入時のファンファーレは、 鳴りひびかなかった。別れのパーティーも無かった。 ローマ市長がトレビの泉に最後のリラのコインを投げ込んだだけ。』 とそのあっけない別れを表現しています。
私が、御苦労様の一言ぐらいの記事はあっても良いのではないか、 マルクの歴史的変遷についてでも書けるではないか、と思うのは日本人の浪花節的心情からでもなく、 ましてやこれらの無駄な新聞を買うのに17ユーロも使った悔しさからでもありません。
ドイツではユーロ導入に対しての国民投票はなく、政府が勝手に決めたことからこれに関する裁判沙汰があり、 去年の12月の世論調査ではユーロ圏の52%の国民が、まだ旧通貨とは別れがたしと言っていた状況があったからです。

 この歴史的通貨の切り替えが想像以上にうまくいき、マルクなどというお金など、 とうの昔に忘れてしまったということなのかもしれません。
EUの統計局ユーロスタットの直近の統計によると、3億人がユーロを使い、67%がユーロが好きと言い、 60%がユーロの方が良いと思っている。
最近時々行われるテレビの街頭インタビューでも、ほとんどの人がユーロになって問題はないと答えています。
上記統計によると、ユーロになってから、昨年同期比で通貨泥棒が450件から44件、 通貨偽造が1日平均2000件から1月1ヵ月間での50件に激減している。
気になるユーロへの切り替えによる便乗値上げは、サービス産業で見られるものの、 1月のインフレ率への影響は0から0.16%の間とのこと。

 大手スーパーのALDIは、便乗値上げをしないどころか、むしろ値下げしたことを大々的に宣伝して、 この不況期を乗り切ろうとしています。

 ドイツでは10マルクしていたものが約5ユーロになったので、私のような安物買い人間は、 つい安くなったと勘違いして不要品まで衝動買いしてしまいます。

 ヨーロッパにもこんな良い人がたくさんいて、消費経済を活性化し、 明るい兆しが見えつつあるユーロ圏の経済の復活を、加速して欲しいと願っています。


ユーロのコイン:表のデザインは共通、裏は国によって違う

前画面へ戻る