ユーザーを訪ねて No.111
Hampel社

速く、きちんと、低コストで
Hampel社の事業哲学
- ドイツに根づいたマツウラの高信頼性 -


Hampel社
社  名Hampel (Ulrich Hampel Praezisionsteile)
代表者名Ulrich Hampel 氏
所 在 地旧東ドイツ サクソニヤ州
創  業1990年
資 本 金個人営業
事業内容各種精密部品加工業
従業員数48名


 “速く、きちんと、低コストで”――これが、Hampel社がビジネスを確実に展開できる理由を物語っています。
Ulrich Hampel氏が創業し、代表のHampel社は、サクソニヤの町、Elstraに拠点を置く部品加工会社。
契約したすべてのビジネスを確実に実行できるのは、単に中小企業のエネルギーだけではありません。
Hampel氏には、必要な技術を的確に選択できる能力があるからです。
マツウラ製MC“MAM72-3VS”の購入によって、更なる成長の可能性が開けたのです。
このコンパクトなマツウラ製の工作機械によって、少人数で多品種少量の精密な部品を加工することが出来るようになりました。
激しいドイツ市場の受注の獲得競争では、旧東ドイツの企業といって同情してくれることはありません。
むしろその逆で、高精度の加工を必要とする部品を、由緒ある競合他社より速く、 しかもミス無く製造出来ることを証明しなければなりません。
もちろん、賃金の安いチェコやポーランドに近い地域で成功するには、それなりの理由があります。
過去10年のHampel社のCNC加工業としての成長率は、同業者のなかでも、そう簡単には見つけられません。
約200を数えるビジネスパートナーは満足し、優良な中小企業に与えられる“Saxonian Oscar賞”を受賞したことなどから、 まさに叩き上げのHampel氏と、その従業員が如何に多くの顧客たちから信頼されているか明白でしょう。

写真は、ハンペル氏(右)と、MMG社のバーグマイスター氏(中)、クライマン氏

< CNCテクノロジー:夢から会社成長の原動力に>

 Elstraという田舎町の入り口にあるHampel社の多彩な活動とその設備からは、 Hampel社の創業時代を想像するのは難しい。
「私の初めての仕事場は、家のガレージであり、唯一の道具は1台の旋盤でした」 とHampel氏は創業時代を思い出しながら話されます。
「トラバント車(旧東ドイツで作っていた乗用車)で、あちこち仕事を求めて動きまわりました。 大手生産工場で得た金属加工の専門的な体験、持ち前の忍耐力と感性などで、会社を創業してまもなく、 手書きのメモからでも正確に加工出来る、信頼できる奴だ、と認められてきました。 この繰り返しが噂になって広まり、工場は急成長。 1996年に隣接していた7,000uの建設会社の敷地を獲得して4つの工場と倉庫を建てました」。
Hampel社はまだ自営で法人格の株式会社にはなっていませんが、6人の見習いを含めて48人の従業員を抱えています。
ほんのここ6ヵ月の間に、10人が入社。
高性能の新鋭機械に投資した方が資金の回収は早く終わります。
これらは決して容易なことではありませんが、このような投資が、 会社を“健全に成長させる”ための必須条件であることが、徐々に理解できるようになりました。
Hampel氏は、「10年前の私にはCNC工作機械は夢でした。 今では、CNC工作機械は、会社が発展するための単なる道具に過ぎません」と胸を張って話されます。

 さらに同社のHampel氏は、「工場をじっくり見てください。旧式の旋盤の横には、 オークマ、大宇、ギルドマイスター等のCNC旋盤が15台、そして、マツウラ等のマシニングセンタ7台が最新設備。 さらに切断、洗浄、溶接等の設備もあります。 ISO9002取得の工場として精度レベルを確保するため、ミツトヨ製の3次元測定器も3台設置しています」。

マツウラMCで精密加工した空圧機器部品

<日本製のマザーマシンで得た高品質と信頼性>

 Hampel氏は極東で製造されたマシニングセンタや各種工作機械には、深い思い入れがあるようです。
最初は偶然でしたが、その後は意図的に韓国製や日本製の工作機械などを使ってきました。
「これらの機械には、最初から、その信頼性と品質に満足できました」。
確かに、最初は価格の問題がありましたが、その後すぐに、機械の購入価格の問題は脳裏の外に行ってしまったようです。
2000年10月、日本のマツウラ本社を訪問した時、「余りにも忙しかったため、最初はこの日本行きの話は断ろうと思いました。 それは、ほんの少し前に、ビジネス関係を築くため、ドイツ政府の代表と日本に行って来たからです。 でも、結局、新しいマシニングセンタのコンセプトをもっと知りたかった」というHampel氏の希望の方が、 忙しさに打ち勝ち、再度日本へ行く決心をされたようです。
というのも、新しいマシニングセンタをすぐ購入する必要が発生したからです。
マツウラ本社で新しいコンセプトのMAM72-3VSを見た時、最初はその性能に懐疑的でした。
「立形のマシニングセンタは、横にパレットが2面ついていれば十分だ」と、Hampel氏は主張。
さらに、約130万マルクという機械の価格が、投資への疑問を一層強めたようです。
しかし、帰国の飛行機の中では、頭の中はその機械のことで一杯になっていました。
「240本ツールと40パレットを収納できる機械の16uの床面積は大きくはない。 パレットの収納を縦にしたのは理にかなっている。 それに、時によっては人を雇うのも難しい時もあるだろうから、このMAM72-3VSを買った方が、 複雑な5軸制御によるパーツの製造も殆ど監視無しですることも可能だろうし、 セットアップに時間のかかる仕事の問題も全て解決出来るはず」とHampel氏は結論。
さらに、Hampel氏にとって幸いしたのが、 地元のビジネスパークにあったほぼ新築同然の工場が売りに出されていることでした。
「マツウラからは短納期で機械があるとの連絡があり、当社のこれまでの業績が良かったことから、銀行も協力的。 今後のHampel社の受注から見て、MAM72がフル稼動することになるだろう」と、 工場新規取得と機械購入を決定。
そして、2000年12月には、MAM72-3VSは完璧に稼動を開始。
いつも評価の厳しいHampel氏にとっても、その稼動状況と稼ぎは十分に満足いくものになっています。

精密部品の加工方法についてブレーンストーミング中のMMGスタッフとハンペル氏(右)

<±0.005mmの精度を出す、マツウラのマシニングセンタ>

 Hampel氏とその従業員の皆さんは、油圧部品や空圧部品の製造において、早くから高精度の加工で良く知られています。
Hampel氏は「このような部品は、常に高品質でなければならない」と説明、 「マツウラのMCで加工すると、この高品質の維持が確信できる。 最近、シリンダーのぶれを5ミクロン以下に抑えられる空圧部品の加工依頼がありましたが、 マツウラを使えば3ミクロンも可能だったし、位置のぶれも僅か1/1,000でした。 また、別の例では、長さが150mmのドリルで直径がそれぞれ40、22、16mmのもので加工した場合のワークピースの位置のずれは、 6ミクロン以下でした。 これだけ見れば、顧客はこの機械の優位性に気づきます」と、Hampel氏。
「殆ど無人で多品種少量の加工が出来、すべてのプログラムはコントロールに記録されており、 容易に呼び出すことが出来ます。 5×8立型パレットでスケジュールに従って機械が自動的にパレットを40個の内から選択して加工します。 パレットを再セットする必要がある場合でも、10分もあれば加工中にすんでしまう」とHampel氏は、 マツウラ製MCの優位性と同氏独自のセンスに裏打ちされた技術に、絶対の信頼を持っています。



 こんなビジネスセンスと高性能技術を備えた、Hampel氏の高精度な品質を基盤にすれば、 Hampel社が顧客の、さらに困難で信頼性のビジネスの大きな発展的な期待に応えられないはずが無いでしょう。
これを一層確かにしたのが、Hampel氏が2〜3日前に行った素晴らしい決断でした。
それは、マツウラのMAM72-3VSをさらにもう一台、追加して購入することでした。
大きく飛躍する旧東ドイツの中小企業、Hampel社の実像は、 まさに「物作りのドイツに根づいた、マツウラの高信頼性」の証でしょう。

 2002年5月取材:MEG:鞍津輪隆 MMG:Bert Kleinmann


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