ユーザーを訪ねて No.107
山陽精工株式会社
今日以上の明日を目指す、高技術者集団
「研究即断」が企業理念の
――山陽精工


山陽精工株式会社 
本  社山梨県大月市
本社工場山梨県大月市
代 表 者代表取締役社長 白川 寿一 氏
資 本 金2,500万円(平成13年8月現在)
売 上 高8.5億円(平成13年3月期)
従 業 員 数50名
事 業 内 容●光学機器・医療機器・半導体製造装置などの精密部品加工、組み立て
●実装基板観察炉「SMT SCOPE」の製造販売
●機械周辺装置の開発・製造ならびに各種ユニット装置・機器の組立てなど


 「山梨に太陽の陽光が出る。そんな夢の会社を――」と、同社を創業する時に、 先輩から命名された「山陽精工株式会社」は、1963(昭和38)年、現社長の白川寿一氏が創業。
日本一の富士山を仰ぐ山梨は、大月の地に創業の白川社長は
「わが故郷で、何か新しい産業を創れないものか…と考えました。 金もない、人もない、信用もない、のないない尽くしの創業。 でも、私は頂戴した仕事は出来ないとは言いませんでした。 その創業時代の苦労が、それからの企業経営に役立ってきました」
と、一言一言噛み締めて話す言葉には、自信が溢れていました。

 同社のこの創業時代の思いが、技術を極め、研究して即実行する「究技即断」に如実に現われています。
第107回目の「ユーザーを訪ねて」は、「究技即断」の企業理念で技術開発し、 前向きな経営マインドで着実に伸展される「山陽精工株式会社 本社工場」を、 残暑さめやらぬ8月下旬に訪ねました。
社長 白川寿一 氏専務 白川太 氏


<ニコンの測量機器、顕微鏡の高精密な部品加工で、信頼された同社の加工技術>

 同社の創業時の苦労、特に高精密な機械部品加工による技術蓄積と技術開発が、 現在の光学機器・医療機器そして半導体製造装置などの精密部品加工や組立てのみならず、 高精度な機器の周辺装置の開発や製造、各種ユニット装置や機器組立に昇華。
さらに同社の独創技術による「実装基板観察装置SMT SCOPE」の開発成功で、 技術で生き残れる企業として、一躍脚光を浴びています。

 「山陽精工という立派な社名で創業したものの、実際は下請けからの出発でした。 いろんな仕事を、とことん品質と加工精度でやり抜きました。 丁度、私の遠縁が日本光学(現在のニコン)に勤めており、ニコンの仕事は3年早いと言われながら、 試しにやってみろと、加工品を10種類ほど頂きました。 これを徹底的にやり抜き、全品ニコンのテストに合格したんです。 以来、ニコンから難しくて面倒な、他の下請けなどで吐き出された仕事などを、 何でも引き受けました」
と、白川社長が、ニコンとの出会いと多品種少量加工技術をとことん吸収したことを話されます。

<大手著名ハイテクメーカーの直系協力工場として、高精度・高精密な加工を>

 ニコンの仕事は、測量機器部門から顕微鏡部門のテスト加工へ展開。
「顕微鏡のレンズを入れるバレルの加工でした。 加工物が15mmの直径のものを+0、−9ミクロンの真円度を要求されました。 これも合格したものの、工場の現場確認をしたいと、ニコンから責任者が来ましてね。 その責任者が落合先生でした。 技術は分かった、設備さえ整備すれば合格だと、その時に太鼓判を頂きました」
と白川社長が話せば、
「30余年も前のことですが、何しろ白川社長の真面目さと熱心さ、その熱意に心を打たれました」
と、同社の技術顧問をされる落合文嵩氏が、我が事のように語っていました。

 高精度、高精密の代名詞でもあるニコンの仕事、それもニコンの測量機器や顕微鏡などの難しい仕事を、 一手に引受けた同社の高精度な加工技術は、こうして大きく成長していきました。
そして、ニコングループのほか、東京精密、京セラ、東京電子など大手著名ハイテクメーカーの直系工場として業績を順調に伸ばし、 今日に至っています。

 しかし、所詮はたゆまぬコストダウンに応じるだけの下請け。
「企業経営に夢も希望もない。特に若い人が山陽精工に勤めてもらうためにも、 自社開発商品を持ちたい、とかねがね思っていました。 丁度、長男が製図機器などの武藤工業から修行を終えて当社へ入社してから、 私の自社商品を持つ、という夢を実現する動きを本格化させました」
と社長。

明るく清潔な空調完備の工場

<中小企業創造法認定の自社商品「実装基板観察装置SMT SCOPE」が開発完成>

 その商品開発の第一弾が、山梨県から中小企業創造法の認定を受けた「実装基板観察装置SMT SCOPE」でした。
自社技術による商品開発は、白川社長の長男である白川太専務が中心となって、 5〜6年前から7〜8名のスタッフによって「開発事業本部」で開始。
精密切削加工技術による数多くの蓄積ノウハウと、同社商品の「ドライカットS」による熱の専門家の協力、 そして若い社員の夢と希望を持った情熱が、自社商品の開発を成功させたのでしょう。
「新事業のため、外部から専門スタッフを採用したほか、社内公募による技術開発スタッフにより、 東京都下の八王子に開発拠点を置きました。 このSMT SCPOPEは、基板メーカーでハンダ作業をチェックするためのもので、 日本を代表する半導体メーカーの研究所や、大学の研究室に採用され注目を集めました。 ただ、この装置は製造ラインに直結しないだけに、市場が限定されかねないので、 例えば医療に役立つような汎用型の商品開発に、これから注力したいと思います」
と、白川専務は元気に話されます。

今年1月完成し稼動に入った新鋭・本社工場

<2001年1月完成の、1フロア1,000uの明るくて清潔・空調完備の、本格的最新鋭の機械加工工場>

 精密部品の加工や自社商品の部品加工は、創業以来の同社の中核事業として「技術事業本部」が担当しています。
その生産拠点が今2001年1月に竣功し、直ちに稼動に入った新鋭の本社工場です。
間口40mに奥行25mの1フロア1,000uの空調完備の工場は、基礎工事に86本のコンクリートパイルを打ち込み、 工場内の主柱は僅か4本。
明るくて清潔な本格的、最新鋭の機械加工工場です。

 「私達の企業が、建物にしろ機械設備にしろ、新たに投資するには、1年以上も前から調査し検証し尽くします。 ですから、時と場合によっては、設備が稼動する頃には、タイミングを失することもあります。 今が正に、そんな時でしょうね」
と白川専務。
白川社長も
「昨年春から年末頃は、1日24時間、土日返上の2交代でした。 それが今年は、仕事量の減少などで、定時間内で仕事をこなしています。 今秋には、昨年ピークの70%減になる見込みです。しかし、これこそ私には天の恵みです。 技術と力を底積みする絶好の機会として、来る次の跳躍期に備えたいと考えているんです」
と自信深げ。

 本社工場の新築投資に合わせて、高精度な部品加工用の機械設備も昨年から検討に検討を重ねてきた同社。
新しくフライス系機械設備の検討に、ステンレス材やインバー材の加工で、 角度が10秒以内の精度が出せるか―をテーマとして、フライス系のマシニングセンタ・メーカーの5社に試削を依頼。

 「マツウラのマシンは、16〜17年前に立形を1台設備して、精度の良さを知っているんですが、とにかく、 当社のテストを受けるかどうか。 もともと当社は、高速加工より高付加価値加工なので、高精度な加工が、 それも平面加工より角度加工を得意としている、当社の特徴を活かせるか、 テスト切削をお願いしました。 それも、5面加工で出来れば尚更良い・・・」
と、白川専務。

フル稼動中のマツウラ製MC-550VX(左)とMAM72-3VS

<トコトンやり抜いたマツウラの決意!技術レベルでマツウラと同じ会話が出来る>

 「このテスト要求に、5社のうち4社はギブアップ。 とにかく、マツウラはやってみますと大変な熱意でした。 最初はだめだと思っていたマツウラさんでしたが、バカ正直にやり抜きましてね。 私達、技術屋がマツウラの技術追求の心に惚れました。 儲けというより、正に技術だけ。コスト計算したら恐らく駄目でしょう。 訳のわからないことを、しつこくやり通し、半年目には惚れ惚れするモノに、仕上げてくれました」
とは、白川専務とニコンOBの落合顧問の弁。

 本社工場の竣工と同じく、マツウラの5軸加工機MAM72-3VSなどが新設され、本格稼動に入っています。 従来まで、同社のプリズム等の高精密な部品加工は、横軸形MCでやっていたものが、 マツウラの徹底したテストによって、立軸形MCの加工で、より良い加工が可能になった由です。
「当社の加工精度は、JIS規格の1/2から1/3と、精度を売りにしているんです。 これに必死になって食いついたのがマツウラ。 山陽精工は技術レベルで、マツウラと同じ会話が出来るようになりました」
と白川専務が話せば、白川社長は
「落合先生の指導で、機械設備はとにかく良いものを買いなさい、と言われ続けてきました。 これが山陽精工の今日です。 今日以上の明日を目指す、高技術者集団―と、我社が目標に掲げている理由が、こんな所にあるんです」
と―。

 富士の国やまなしに見事に開花した同社。
さらなる今後の伸展と飛躍に、大いに期待されているようでした。
自社開発商品の新製品
「高温観察装置 SMT SCOPE SA-500」
17年前に設置のマツウラMC-760V
現在も元気に稼働中!



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