ユーザーを訪ねて No.105
株式会社ヒカリ
あらゆる業種に対応し「省力化」「自動化」に貢献する
自動制御と画像処理技術、そしてハートのノウハウで――


株式会社ヒカリ 
本   社愛媛県温泉郡
代 表 者代表取締役社長 富田 耕治 氏
資 本 金9,600万円(平成13年4月末現在)
売 上 高71.0億円(平成13年3月期)
従 業 員 数266名(平成13年4月末現在)
事 業 内 容FA事業部(合理化・省力化自動機械の設計・製造・販売・メンテナンス)、機器事業部(油圧機器・農業機械の精密部品加工)、帝人事業部(繊維機械のメンテナンス)
FA事業部南吉田工場
所 在 地愛媛県松山市
従 業 員 数22名
主 な 業 務FA事業部(合理化・省力化自動機械の設計・製造・販売・メンテナンス)の各種精密部品加工ならびにユニット組立、
関 連 会 社株式会社光真商事(松山市)、双葉工業株式会社(松山市)


 株式会社ヒカリ。あらゆる業種に対応するFA技術によって「省力化」「自動化」に貢献する、 自動組立システムの設計・製造に本格的に取組まれて30年余――。
家電製品の製造自動化から始まったFA技術の追求は、新たな分野の開拓と応用と発展を積み重ね、大きく拡がってきました。
その範囲は、いまや家電業界から半導体、光学機器、自動車などの機械製品から、食品、住宅設備、医薬品まで、あらゆる業種に及んでいます。
さらに未知の領域にも、積極的に挑み、業種特有のノウハウの吸収を図り、その成果が21世紀を迎えた今日の、同社の総合力になっているのでしょうか。
また、新しい生産システムの機械構想に挑むシステムエンジニアリングから、設計、制御、部品加工、組立、計装、そしてメンテナンスまで、 FAに関する全ての工程を社内でこなせる体制は、同社ならではの特徴。
FA専門メーカーとしての機動力を最大限に発揮し、商品サイクルの短縮化に伴う、短納期の要望にも確実に応えられています。
そんな株式会社ヒカリの本社ならびにFA事業部様と、FA事業部の機械加工部門やユニット組立を担当する南吉田工場様を、四国の松山に訪ねました。

株式会社ヒカリ本社・FA事業部 株式会社ヒカリ・FA事業部南吉田工場


<明るく夢のある、そして名は体を表す社名、「光鉄工所」>

 松山市郊外の南東部にある、重信町が造成した重信工業団地の一角に、白をベースにライトブルーのツートンカラーに彩られた、 モダンなデザインの本社とFA事業部が収客されている建物が。
まさに社名のヒカリと主事業のFA関連機器が、建物や周辺の環境全体にピッタリ一致した、素晴らしい景観となって、目に飛び込んできました。

「明るい社名のイメージを、何とか捻り出したくて、この団地に進出し、今年で7年。 ヒカリ輝くイメージとは裏腹に、私達がやっている仕事は泥臭く、人海戦術そのものです。 何よりも、お客様の満足を第一に考えることを基本にしていますが――」

と、同社の富田耕治社長は話されます。
同社の創業は1961(昭和36)年1月。
現社長の実父、富田洋司(平成8年5月没)氏が、公務員から当時の時代背景などを考えて独立開業。
といっても、井関農機や帝人など地元にある著名企業を得意先にもつ、後継者のいない鉄工所を、引継ぐ形の創業でした。
創業時の社名は、明るい夢のあるものと「光」に、名は体を表すことから「光鉄工所」とされたようです。


社長 富田耕治氏

<「光鉄工所」から「ヒカリ」へ華麗に変身した同社>

 創業当時は、行きがかり上、井関農機や帝人への人材派遣と鈑金加工などが主な事業でした。
しかし1971(昭和46)年、松下寿電子工業の鈑金や組立ラインなどの取引を開始。
テープレコーダ、ビデオデッキの自動組立ラインをこなすなどが切っ掛けとなって、自動機械やFA関連へ大転換されました。
こうして同社の事業は、昭和46(1971)年から昭和50年代後半まで、井関農機の農業機械、帝人の化学繊維の関連事業に、 松下寿電子工業の自動化関連事業が加わって、3本の大きな柱に育ちました。
さらに、昭和60(1985)年のプラザ合意を境にして、FA事業が大きく進展。
今では総売上の90%をFA事業部がしめ、油圧機器や農業機械関連の機器事業と、繊維機械関連のメンテナンス事業が各5%と、 華麗な変身を遂げています。
一方、同社は創業30周年を期に、1991(平成3)年1月、社名を新しく「ヒカリ」と脱・鉄工所を図り、また企業理念を
「〈存在意義〉ゆとりを創造する、〈経営姿勢〉人を活かし、時を生かす、〈行動指針〉自らの可能性に挑戦する」
と制定、万全な体制で大きな飛躍期に挑んで、新21世紀の今年、創業40周年を迎えました。



<3ヶ月以内の短納期をいかにこな熟すかが、FA事業部の最大の課題>

 さて、同社が大きく変身した、主要ビジネスのFA事業部門。
この事業部こそ、同社が新しく21世紀に向かって改めて誓った信念「お客様の満足を第一に」を、 さらに磨きかけねば存在価値を問われかねないものでしょう。
特にFA事業部の特長であり泣きどころでもある、受注から納入まで、長くて3ヶ月以内という、短納期。
この短い3ヶ月以内に、お客様のニーズをしっかり掴み、設計をし部材の手配を行い、部品を加工し、組立完成させ、調整納品する――。
この離れ技を、いかに消化し熟すか。
FA事業部長の森田恒二常務取締役は、同社南吉田工場の案内に同行の際、次のように話されています。

「FAのラインものは、受注から3ヶ月以内が普通の納期です。 設計に1ヶ月弱、2〜3週間で加工部品や部材の手配と完成、残り2〜3週間で組立し、あとは調整と納品でしょ。
従って、加工部品は加工材の調達から部品の完成まで、1週間程度。 それに加工は殆ど一品もの。この一品ものに、いかに対応するか。
とにかく365日、1日24時間を無人で仕事が出来る、一品加工が出来る機械を探し続けていたんです。
丁度1998年、東京JIMTOFのマツウラのブースで、面白くてユニークなMAM72-3Vを見つけました。
日替わりメニュー、変種変量の生産が売りの機械でした。 ただ当時、2パレットでも満足に使いこなしていなかったのに、40パレットが本当に使いこなせるか、それとコストと価格が合うのか。 すぐ検討をするよう、担当者に指示しました。」


FA事業部のメイン製品の一つ・基盤関連の自動画像処理装置

< MAM72-3VS、あと半年の結果が楽しみです>

 「しかし2年たっても、検討結果が担当者から出てこない。 しびれを切らして昨年夏、発注。 このMCを使いこなす努力を、4ヶ月以内にマスターしろと言いましてね、これで加工現場に大きなインパクトを与えたいからでした。
これまで、切削のフライス加工は、6,000回転が最高でしたから、マツウラの15,000回転で切削スピードも早い。
とにかく出来ない理由から、こうやったら、こうすれば出来るというチャレンジ精神を植え付けたかったんです。」

MAM72-3VSはこうして昨年12月、納入設置されました。

「一品加工を何とか工夫して、うまく加工するよう、今だに四苦八苦していますがね。 それでも3月に150時間くらいの無人運転が出来ました。当面の目標は、1ヶ月300時間の無人運転です。
努力すれば必ず出来るはずであることが、MAM72で良く分かりました。 いろいろマツウラさんにも教えを頂いて、初期の目標にチャレンジします」

と、きっぱり話されたのは、FA事業部精機部の中尾貞勝チーフリーダー。
森田恒二常務は、中尾チーフリーダーの言葉を聞きながら、

「これで精機部も一皮剥けるでしょう。 もともと、MAM72-3VSは、デコボコの多いわがFA事業部の生産量の変動比率を、引き下げるのが目的でした。
出来るだけ自社内で加工すること、それも一品加工を無人運転で。 加工職場の環境整備にも、これで役立ちますし、工場環境の変化にも、うまく対応出来ますから。 あと半年、結果が楽しみです。」

と力強く話されていました。


FA事業部南吉田工場で稼働中のMAM72-3VS

今年創業40周年を迎えた同社。
10年後の創業50周年には、5ヶ所に分散している工場や事業部門など全機能を、本社のある重信工業団地周辺に集約する――
という、大きな目標に向かって、第一歩を踏み出した同社。
富田社長を「富田さん」、森田常務を「森田さん」などと「職名」を呼ばず、「さん」で呼び合う同社こそ、 「我、創る故に、我あり」のモットーのように、新しい21世紀の存在価値ある企業そのものでしょう。
ヒカリ輝く将来に向かった、同社の動きに、期待し、注目したいものです。


前画面へ戻る