ユーザーを訪ねて No.103
丸澤機工株式会社
―「三方良しの心」を持つIT関連企業―
光通信機器、海底通信機器関連部品で飛躍する




谷島 雄 社長
谷島 雄 社長
 「町工場魂を忘れるな」「三方良しの心」を創業の原点に、今、光通信機器分野で独特の技術や技能を提供し続け、 元気に活躍されているのが、丸澤機工株式会社を中核とした、丸澤グループ9社1,000余名の方々です。

 1949(昭和24)年11月に東京都品川区で、通信機器関係を中心とした小物切削部品メーカーとして創業されたのが、 丸澤機工株式会社の前身、有限会社丸澤製作所。
以来、通信機器、OA機器、そして半導体製造装置や医療機器、各種産業機器関係のキーパーツを手掛け、今注目の光通信機器、 海底通信機器などの関連部品を中心とした、ハイテク分野の真っ只中を驀進しています。

 「ユーザーを訪ねて」第103回目は、この丸澤機工株式会社の本社と宮城工場を、残暑厳しい9月末にお訪ねしました。

本社 本社
同社第一事業部/宮城工場


<身体で実行することが大事な“町工場魂”が、創業の原点>

 創業者の谷島五郎会長からの「創業の原点」を受継いで、若いセンスとパワーで経営の舵取りをするのが、谷島雄社長です。
同社長から、経営の基本をうかがいました。
「創業50年を越えましたが、経営の基本に何ら変化はありません。会長は“町工場魂でやれ”といつも言っています。 これは町工場としての人間臭さをいうのでしょうか、謙虚さ、素直さ、純朴さ、泥臭さ、野暮ったさ、柔軟さ、機動力などです。 これを身体で実行しなさい、ということです。 この考え方を、より理解しやすく取りまとめ、グループ全員に徹底させています。 この町工場魂は、丸澤製作所で創業したときの社訓に表現されています」。

経営理念

「もう一つ、ユニークなのは6項目ある、現在の社訓の一つ、“三方良しの心で”です。
この三方良しの心は、自分も良く、相手も良く、第三者も良くして利益を共有するよう、 お互いにこれらを達成出来るような心遣いで行動しようというものです。
これが丸澤グループの創業の原点なんです」。
「社名の丸澤も、この教えからきています。
丸は相手も良く、自分も良く、全て丸く治まるという願いを込めたもの。
そして澤は水湖(みずうみ)の周りには草木が茂る、また潤うことを意味し全てを潤すという願いを込めたものです。
こんな願いから社是も、全社員と取引関係業者の幸福実現を一歩一歩段階を追って、進めることを企業の目的としています。
その幸福についても、分かり易く健康、長命、開運、子孫繁栄、安心平和が、それぞれ平均と調和のとれた状態という定義づけをしています」。


<創業いらい切削加工を主体に通信機器、OA機器等の精密部品を>

 こんなわかりやすい同社の経営理念のもと、谷島五郎会長と谷島雄社長は、創業いらいの通信機器やOA機器等の関連部品に代表される精密部品を生産し、 最新鋭の技術と設備を保有し、サブミクロンの世界に果敢に挑戦し続けています。
そしてグローバリゼーションに対応して、1989(平成元)年には英国工場(丸澤[テルフォード]株式会社)を、 1994(平成6)年には、中国工場(丸澤磯電[シェンチェン]有限会社)を立上げ、また国内で事業発展と効率化をテコに事業拠点を生産工場や ソフトウェア分野に、合理的に設立し運営しています。

 一方、国内の事業展開では、1961(昭和36)年には、丸物切削加工の受注増に応えるため、 宇都宮工場を、1965(昭和40)年には本社工場を、大田区の現本社工場へ新設移転。
また1972(昭和47)年には、切削加工の一貫工場の宮城工場を新設し、丸澤機工ならびに丸澤グループの、 基礎を盤石のものとしています。

 さらに、中国工場の立上げが順調に軌道に乗ったことから、宇都宮工場の生産を全て中国工場へ移管し、 1999(平成11)年に宇都宮工場の稼動を停止。
また宮城工場も、1972(昭和47)年に宮城県涌谷町へ新設稼動していたものを、工場の狭隘化などから新しく小牛田町に1985(昭和60)年に新設移転し、 新鋭工場として稼動を開始するなど、時代の先を読み先手先手と前進し、今日に至っています。

 谷島雄社長は「企業は少し規模が大きくなったり、取扱っている商品がヒットすると、横着心が出るものです。
町工場魂を忘れるなという会長の言葉も、こんな事にならないような戒めなんです。 柔軟な発想を、今風にいえばファジー的な感性をもって事にあたることなんですが、その感性をこれから、どのようにして残していくか。
これを実践するために、丸澤磯工も、より経営がすっきり見えるような組織や、人事を取り入れてきました。
丸澤グループ9社も、そんな中から出来上がってきたものです」と話されます。


<丸澤磯工の第一事業部が光通信、海底通信関係機器を担当>

 この丸澤グループ9社の中核、丸澤機工株式会社には直轄生産拠点が本社工場と宮城工場の2拠点があります。
また業務組織では、宮城工場を主とした生産拠点とする第一事業部と、本社工場を拠点の第二事業部に区分されます。

 第一事業部は、主に通信機器分野を担当するもので、難削材の超精密旋盤加工、フライス加工および光通信機器部品の組立に優れた技術を有する事業部。
第二事業部は主に、産業機器やOA機器分野を担当し、自社生産、国内外グループ会社および協力会社による統合カを発揮した生産を最も得意とする事業部。
この二事業部門が同社の製造部門の中核として活躍しています。

 この第一事業部が担当の宮城工場は、東北新幹線は仙台の一駅北の古川駅の東方、約7kmの国道108号線に面した小牛田町に、時代の先端を行く斬新なデザインの工場があります。

 同工場は、1972(昭和47)年に新設されたが、工場の狭隘から、1985〈昭和60)年に現地へ新築移転したもので、工場敷地約5,000坪に、 約2,200坪の一部二階建の工場ならびに事務棟からなっています。
現在の工場は新築移転して、2回の増築をしたもので、工場の中心が三角屋根になっている斬新なイメージは、 宮城工場内からの応募によるデザイン。
田園地帯に、時代の先端を行く“光モノ"に携わっていることを強調されたとか。


<宮城工場の新鋭戦略MC マツウラのMAM72-3VS型>

 宮城工場の進出に合わせて、僅か3人で立ち上げたスタッフの一人が、現在の取締役第一事業部長の藤谷操さん、事実上の宮城工場長です。

 同工場は、光関係の切削、研削などの加工がつきまとう部品の加工が殆ど。
加工精度もサブミクロンに近いもので、内径加工や外径加工が特に多く、特に最近では、光ケーブルや海底用光ケーブル用に使われる、 光コネクターやアイソレータ、変調器やフィルターに関連する部品の高精密な加工や組立が、生産の90%を超えています。

 これらの高精密な加工業務に、今年採用されたのが、マツウラのMAM72-3VS型。
採用の経緯について、社長の直轄部門である研究開発部の牧山義人部長は 「昨秋に光変調器関係の新しい仕事が入ってきまして、それも従来のアルミ材からサス、ステンレス材に変化しましたので、 従来とは違った新しい設備と加工方法で、取組んでみました。 知り合いの商社から、マツウラを奨められましてね。 いろんな検討やテストを行って、5軸制御のMAM72-3VS型を導入しました。 加工精度面では期待通りです。工場の環境や熱などによって微妙な変化は避けられませんが、満足しています」 と話しています。

 宮城工場で実際に使っている、藤谷第一事業部長は、「今年6月に主軸15,000回転を、8月には主軸20,000回転のMAM72-3VSをおのおの設置しました。
光通信関係の小物部品加工を主として、ステンレス材の加工でそれも形状などが変更の連続の試作と量産の、 いずれにも対応出来るようにしました。
結果、ほぼ満足な加工精度と、納期通りの仕上がりです。
最初、長物加工などで歪が出たんですが、材料に熱処理して加工したことで、それは解決しました。
15,000回転と20,000回転の主軸は、加工範囲を拡げて、いろいろな対応と加工が出来るからです。
昨秋から、今年夏にかけて大量な仕事が入り、さらに増加しつつある光関係の仕事も、このMAM72-3VSで一息つけ、 お客様からも満足の声を頂いています」と話されます。
IT産業の中心的な、光通信機器と海底通信機器などの関連部品を一手に加工、組立されている、同工場の主力設備のマツウラMAM72-3VS。
同社の戦略新鋭設備として、そのカを遺憾なく発揮されている様に、嬉しさがこみあげてきました。

MAM72-3VS
同社/加工物の一部 フルに活躍中のマツウラ製MAM72-3VS


<それでお客様が、満足しますか>

 同社谷島雄社長は、マツウラ製品の採用について、 「今から6〜7年前ですね。会長がマシニングセンタを買うならマツウラを、どうしても買えと。 丸物加工が得意だった当社が、フライス加工ならマツウラが良いと、某セミナーで聞いてきたんです。 以来、マツウラのMCが使えるような仕事を、と努力してきました。 この2台の導入を試みたんですが、先日も導入するのが遅すぎると、小言を言われたほどですよ」 と話されました。

 また、生産設備財メーカーへの注文として、谷島雄社長は 「作り手のメーカーと、使い手のユーザーが力を出し合って、機械が持てる能力を100%出し切れるようなシステムを、 これから是非とも作ってほしい。 そしてその機械が、市場で問題が出たときは、いち早く私達に知らせ、解決策を開示してほしい。 こんな信頼関係がメーカーとユーザーにあれば、ユーザーも安心して使えます」とも―。

 この声こそ、同社のあちこちに掲示されている「それでお得意様が満足するか」の問いかけに対する、メーカーとして の永遠のテーマであるようです。
正にこのようなユーザーとメーカーの厚い信頼関係があってこそ、これらが機能する、と再確認したそんな一刻でした。


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