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日刊工業新聞社のご好意により、
誌面の都合上レイアウトを変更して転載いたしました。

企業の健全性を高めるIMSの役割とは


松浦社長
ISO規格化も検討されているという労働安全衛生マネジメントシステム(OH&S)規格の認証を取得する企業が現れ始めた、 工作機械メーカーの松浦機械製作所(福井市)でも認証を取得、さらにISO14001とOH&Sを統合、 IMS(インテグレイテッド・マネジメント・システム)を構築した。
そこで同社の松浦社長に、認証取得の目的やIMSの概要などを聞いてみた。



プロフィール 松浦正則(まつうら まさのり)氏
1937年(昭和12年)生まれ。
55年福井県立乾徳高等学校(現福井商業高等学校)卒業後、福井相互銀行(現福邦銀行)に入行。
58年松浦機械製作所入社。専務、副社長を経て85年より現職。
このほか現在、ナショナルマシナリー・アジアとマツウラマシナリー(ドイツ)の社長、アイエムエヌとマツウラマシナリーPLCの会長も兼務。
さらに日本工作機械工業会理事、同工業会国際事業委員会委員長、福井県機械工業協同組合副理事長、通商産業省日本工業標準調査会委員、 ソニー教育振興財団評議員、発明協会福井支部長といった要職も務める。



ISOの認証取得は必須の課題

──まず、御社でのISOの取り組みについてお聞かせください。
松浦:  当社は輸出比率が高く、主力製品のマシニングセンタは75%以上を輸出しています。
輸出比率が高いということは世界的規模でビジネスを展開しているということになりますので、 ISOの認証取得は、世界市場を重視する観点から必須の課題と言えました。

 そこで、まずISO9000シリーズの認証取得から取り組み、1994年にISO9001を取得しました。
同様にISO14001シリーズの認証取得にも取り組み、1998年にISO14001を取得することができました。


「常に変化を先取りする企業」と社の内外に印象づける

──このほど、日本品質保証機構(JQA)から英国の労働安全衛生規格「BS8800」に準拠したOH&S規格の認証を取得しましたが、そのねらいは。

松浦:  まず1点目が国際的信頼性の向上です。
先ほども申し上げたように、これまで当社では、世界市場を重視する観点からISO9001、ISO14001と認証を取得してきました。
しかしOH&SはISOの正式規格ではないものの、ISO同様、世界に通用するパスポートであることには変わりありません。
そこで、認証を取得することによって、信頼性を向上させることができるのではないかと考えました。

 2点目は従業員とその家族、お客様への安心感の提供です。
品質、環境、労働安全衛生のマネジメントシステムを構築すれば、誰にでもわかる目に見える管理が可能になり、安心感を提供することができます。

 3点目は「常に変化を先取りする企業」だということの印象づけです。当社は常に先を見据え、 時代の変化にすばやく対応する企業だという自負があります。
この自負を社の内外に印象づけるには、今回の認証取得は有効な手段だったのです。


──認証取得に取り組む以前の労働安全衛生の取り組みは。

松浦:  安全衛生委員会で日常的にパトロールをする程度でした。
実際には安全推進委員が交代で社内を巡回し、ヘルメットの着用指示や保護マスク・保護メガネの点検、といったことを主に行っていました。 法律で定められていることを、ただやっていたというレベルです。


──労災の発生状況は。

松浦:  最近5年間のデータを見ると、労働基準監督署に報告が必要な災害が4回ほど、逆に報告が不要な災害、いわゆる「赤チン災害」と言われるものは3ヵ月に1回ほどの割合で発生していました。

 実際のところ、認証取得活動を始める前までは、こういったデータすらしっかり整備していませんでした。 当然、過去のデータを生かすこともできなかったので、システムを構築した現在、データをまとめて次に生かすことを心がけています。


──数字的に見た場合、労災の発生件数が少ないようですが。

松浦:  他社と比較しても災害発生件数は少ない方ではないかと思います。 特に、労働基準監督署に報告が必要な災害は少ないのではないでしょうか。


システムの統合で効率化と相乗効果をねらう

──OH&S規格の認証取得はどのように進めたのですか。

松浦:  プロジェクトチームを結成し、チームのメンバーが中心となって活動を進めていきました。 構成は委員長・副委員長が各1名、事務局が1名、推進委員が8名の計11名です。

 プロジェクトチームの特徴は、推進委員8名のうち6名がISO9001の内部品質監査員、もしくはISO14001の内部環境監査員だということです。
メンバーがISOに精通していたことから活動がスムーズに進み、昨年4月に活動をキックオフして今年の2月末に認証を取得することができました。


──具体的な活動内容は。

松浦:  まず手始めに、BS8800を理解するために推進委員を対象に定期的な勉強会を開きました。
そして、それと並行して、ISO14001との統合について検討を始めました。
このほかには初回状況の確認やリスクの摘出、リスクアセスメントなどを実施し、予備審査・本審査を経て認証取得にこぎつけたのです。


──活動で一番苦労したことは。

松浦:  法規制への対応に一番苦労しました。
地方の場合、都心と違って法改正などの情報伝達も遅いですし、法律の内容を理解するのも一苦労です。
特に中小企業ではこの面で苦労するのではないかと思います。


安全対策 安全対策 安全対策
注意を呼びかけるだけではなく、近寄れないように機械を囲う 何もはみ出していない通路、衝突事故などが起きるのを防ぐ 高所で作業する作業者には、必ず安全帯の装着を義務づけている


──リスクアセスメントについてはどうでしたか。

松浦:  もともとISO14001の環境影響評価の項目に安全が盛り込んであり、それをほとんど利用したので、それほど苦労はしませんでした。
妥当性を出すためにリスクアセスメント用に評価項目の細分化・見直しを行った程度です。
環境影響評価の作成に比べたら、はるかに楽なものでした。


──ISO14001とOH&Sを統合したIMSを構築した理由は。

松浦:  この2つのシステムはよく似ており、統合によってシステムの効率化が図れたり、相乗効果を得ることが可能になるのではないかと考えたからです。
統合によって得られるメリットには重複・類似作業の回避、審査関係工数・費用の低減、文書・記録類の併用による紙、データの削減、などが挙げられるのではないのでしょうか。

 認証取得活動を開始した時からISO14001との統合を念頭に置いて活動を進め、実際、ISO14001の更新審査と同時にOH&S規格の本審査も行うことができました。
環境と労働安全衛生の複合審査は、JQAでは初めてだったそうです。


──最後に、IMSがめざす方向性をお聞かせください。
松浦:  健全な経営・企業の継続性をめざす場合、IMSは有効な改善ツールになると考えています。
今後はISO9001の2000年改訂に合わせてIMSにISO9001を統合することも検討しており、当社の健全性を高めるためにも、積極的に活用していきたいと思います。


(本誌・大沢 裕司)