誌上再録:FBC福井放送「人間ネットワーク」 2000年3月12日放送(第530回)
情報通信革命が始まった (その2)
「IT 革命はコンテンツ・人があってこそ」


人間ネットワーク  21世紀を目前に世界は、情報通信革命を中核として大きく、それもものすごいスピードで変化しつつあります。
先5月号に引き続き、本号でも2000年3月12日に放送された、FBC福井放送「人間・ネットワーク」第530回の「情報通信革命が始まった」 を誌上再録します。

 出演の本田敬吉さんは、日本サンマイクロシステムズの会長で米国本社のサンマイクロシステムズ副社長も兼ねられて、 IT革命ビジネスの真只中で活躍中ですが、一方、著名なエコノミストとして国内は勿論、世界でも30数年にわたって活躍されています。

 IT革命の本質を大胆に、かつ分かりやすく解説されています。



松浦: その時の新しく始めるベンチャーの人達に何がメリットなんでしょうか。


IT 革命で過去を断絶した、全く新しい若い世代には絶好のビジネスチャンスが!

本田: だから、渋谷のビットバレーなんですよ。
今までの暖簾だとか、系列取引だとか、肩書きだとか、経歴だとかが問題にならない世界が出来ている。
これは若い世代には絶好のビジネスチャンスです。
大体このe-businessやネット経済の担い手は、35才未満の世代だと期待しているんですよ。
その結果、同時に仕事をやる以上は資本金が要りますね。
今までは銀行を拝み倒したりしますけど、銀行はなかなかお金出しませんね。
そこで出て来たのが、マザーズ市場であり、ナスダックと言われる大型店頭市場なんです。
そういう市場は今までより、より開かれた市場ですから、必ずしも実績が無くても、きちんと所定のものを満たしていれば上場出来るんです。

松浦: そうするとyahooの株価が1億円の値打ちが出てくるという訳ですね。

本田: そうです。1億円の値打ちがあるわけではないですが、あくまで実績がなくても市場が受け入れますという、 市場の寛容性といいますか、と同時に今一番日本での問題は、銀行金融、すなわち間接金融のウエイトが非常に高すぎるんです。
それに対して市場に上場できるのが直接金融。
この直接金融の道が日本の場合、中小企業に対して閉ざされているんです。それが今や開かれている。

松浦: これは大きなビジネスチャンスですね。

本田: これでさらに日本の活性化の道が開けてくると、固く信じています。

松浦: そういう意味では、非常に夢があるんですが、過去の歴史を振り返ってみますとインターネットや情報通信技術(IT)でアメリカが伸びてきましたけど、 その中でこらから始まる日本に対して、アドバイスや起こり得る現象面など良い面、悪い面などどんなものがありますか。

本田: いろいろありますけど、便利な道具であるだけに乱用っていうものがあるんですよ。
まあ郵便でジャンクメールってありますね。
特に大きな会社のしかるべきポストになりますと、1日に何百通と入ってきて読めないんですね。このような弊害もあります。
それからもう一つ気を付けたいのは、e-mailというのは、アドレスがあって便利に出来ていますから、クリックすればアドレスに対してすぐに返せるでしょ。
その時に全員に返信だとか、コピーのところに返信しますけど、メールアドレスというのは、ある種のプライバシーですから、それがどんどん拡がっちゃいます。
その結果、自分の欲しくないメールも入ってくるし、場合によってはセキュリティー、安全面にも影響してくる。
ハッカーが入ってくる余地もある。この辺はこれからの問題です。


松浦社長(左) 本田会長(右)
 松浦正則社長     本田敬吉会長

指10本のキーボードから、親指1本のi-modeで代表される情報端末へ!

松浦: 例えば先に進んだアメリカと日本との条件の違いで言えば、何がありますでしょうか。
本田: 条件の違いで言えば、アメリカ人は小さい時からタイプライターで慣れ親しんでいますから、キーボードに慣れっこなんですね。我々のお箸と同じように。
我々は、指一本でやったり、あるいは全くのキーボードアレルギーだったり。これがネックだったんです。
ところがi-mode見て下さい。親指一本です。親指一本でe-mailまで出来る。日本人はやはり指先が器用だと。

松浦: それがダボスでの黒田さんの発言に皆さんが注目し、ノキアが日本を猛烈に注目し始めたという顕われでしょうか。

本田: ノキアのダボスでの衝撃は、むしろ数字だったと思うんです。
ただ、i-modeを日本人が親指だけでやっているのは知らないんですよ。
彼ら見てください、いろんな指を使ってやっていますよ。日本人は親指だけです。
この器用さね、やはり日本を救うと思うんです。

松浦: そうですか。日本の将来的な端末の一番の有力候補は、携帯電話ですね。
そうするとパソコンとかプレイステーション2だとかデジタルテレビだとか、自動車会社に言わせるとカーナビだとか、 今いくつかの携帯端末が浮かび上がってますけど、日本の場合は、携帯電話i-modeってのは、その中の最有力候補に思えてなりませんね。

本田: プレステもカーナビもすべて有力銘柄なんです。
それは、すべてキーボードの世界じゃありませんからキーボードアレルギーから日本人は解放される。
プレイステーションも新しいメディアの最有力候補ですから。

松浦: なるほど。良くわかりました。
もう一つ、先ほどの流通革命で我々企業が考えておく事がありましたら、アドバイス願います。
例えば、DELLというコンピュータメーカーが、いつのまにかIBMをひっくり返して、トップに躍り出ているなどは…。


人間ネットワーク

パソコンの時代からネットワークコンピューティングの時代へ大きく転換した!

本田: 非常に重要な問題で、社会的にも重要なんですけども、中間に介在するブローカー的な職業が脅かされる。
需要と供給が直接会話出来る結果、中間マージンを頂いていた仕事なり、人が新しく自分の生き方を考え直さなければならない。
これは厳しい世界ですよ。それから企業経営にとって、在庫ってのは要らなくなる。
今までの様な在庫をめぐる商売は、無くなります。例えば銀行でも在庫金融ってのがあったんですけど、無くなります。
ビジネスモデルに変更を迫られる。経営の姿勢、あるいは経営の在り方にも影響してくる。
つまりこの問題はビジネスの全セクターに跨がってくる。ひいては雇用問題にも関係しますから、社会問題にもなりうるんです。
ですけどこれは、消極的に捉えるよりは、むしろ新しいビジネスチャンスであると考えて、転身、あるいは転業を考えていく事だと思うんです。

松浦: では、福井県内の企業に、どのようなビジネスチャンスが生まれてくるとお考えですか。

本田: 私はね、福井県というのは日本で一番情報に敏く、且つ工芸に秀で、教育が一番。
だって学校の数は人口に対して一番多いとか、たくさんの日本一を持っていますから、私は福井こそがネット経済のリーダー経済圏になって欲しいんです。
なる資格は十分あると思います。

松浦: そうですね。私も、福井県に申し上げたんですが、どの県よりも先に幼稚園、小学校から高校まで全員にパソコンをね。

本田: パソコンではありません。ドコモの立川さんは「PCの時代は終わった」と言ってます。
パソコンでは無いんです。ネットワーク、ネットワークの中における情報サービス、情報技術の在り方。
パソコンってのは、ネットワークではないんですよ。あれは自分で持って歩くお弁当箱みたいなものです。
新しいコンピュータ、あるいは通信技術というのは、ネットワークの中で考えるというものです。
コマーシャルになってしまいますけど、サン・マイクロシステムズの基本的な考え方は、ネットワークコンピュータなんです。
ですから、福井にぜひお薦めしたいのは、全国に先駆けて行政、いち早くネットワークコンピュータに切り替える事です。
これが一番安いんです。それを全国に先駆けてやれば通産省が飛んで来ますよ、モデル都市にしてくれって。


IT 革命は、インフラからコンテンツの時代へ!

松浦: もう一つ言ったのは、学校にインターネットを繋げて無料にしなさいと。
アメリカの大学は全部そうですね。私の息子も娘もアメリカで習っていた時、学校に行けば無料だという事で、全部e-mailに載せて交換をやっていましたから。
それをやって欲しいと。

本田: そうですね。

松浦: 今世界でポケモン、このソフトが全部受け入れられている。
日本はソフトウェアが弱い弱いと言われながら、このアニメのキャラクターでは、世界標準を握っているとアメリカ人から言われたんですよ。
このベースをどうやって生かしていくか。

本田: IT革命と言われていますね。
IT革命の現時点での主流はネットワークコンピューティングですが、これは所詮インフラで、電話線を引いていると考えます。
全部に電話線が行き渡った時に次に何が問題かと言うと、まさにコンテンツ(中身)なんです。
コンテンツと言うのは、ありとあらゆるものがコンテンツに成り得るんですよ。
駅の情報、チケッティングからスポーツニュース、何でもコンテンツです。
だからこの先は、2010年から2020年にかけての主流はコンテンツプロバイダー、コンテンツ提供者だと言われているんです。
コンテンツはあらゆるものがありますから、我々の世界ではXと呼んでいるんです。
何でもいいと言う事で「Xサービスプロバイダー」、その時代だと言われています。
これは広義のソフトの世界です。もうインフラ、ハード、OSは構わないんです。
JAVAという言語が入ってきますと何だって良いんです。コンテンツの時代で、JAVAの時代だと。


IT 革命こそ、コンテンツすなわち人 感性・個性・文化感などが大きな要素!

松浦: そういう点では、良く解りました。
ネットワーク経済、ネットワークの在り方という、この新しいツールを手に入れた時、最終的にはコンテンツ。
これはイコール、人ですね。

本田: そう、人です。ですから教育県である当県は、伝統もありますし、おそらく福井のDNAですね。

松浦: ああ、そうか。そうすると、それぞれが持っている感性や個性や文化というのが、大きな要素になると言うことですね。

本田: そうです。ネット経済元年で、これをリードするのは福井だと。

松浦: 元気付けられます。ありがとうございました。

※写真はいずれもFBC福井放送テレビの画面から



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