松浦: | その時の新しく始めるベンチャーの人達に何がメリットなんでしょうか。 |
本田: | だから、渋谷のビットバレーなんですよ。
今までの暖簾だとか、系列取引だとか、肩書きだとか、経歴だとかが問題にならない世界が出来ている。 これは若い世代には絶好のビジネスチャンスです。 大体このe-businessやネット経済の担い手は、35才未満の世代だと期待しているんですよ。 その結果、同時に仕事をやる以上は資本金が要りますね。 今までは銀行を拝み倒したりしますけど、銀行はなかなかお金出しませんね。 そこで出て来たのが、マザーズ市場であり、ナスダックと言われる大型店頭市場なんです。 そういう市場は今までより、より開かれた市場ですから、必ずしも実績が無くても、きちんと所定のものを満たしていれば上場出来るんです。 |
松浦: | そうするとyahooの株価が1億円の値打ちが出てくるという訳ですね。
|
本田: | そうです。1億円の値打ちがあるわけではないですが、あくまで実績がなくても市場が受け入れますという、
市場の寛容性といいますか、と同時に今一番日本での問題は、銀行金融、すなわち間接金融のウエイトが非常に高すぎるんです。
それに対して市場に上場できるのが直接金融。 この直接金融の道が日本の場合、中小企業に対して閉ざされているんです。それが今や開かれている。 |
松浦: | これは大きなビジネスチャンスですね。
|
本田: | これでさらに日本の活性化の道が開けてくると、固く信じています。
|
松浦: | そういう意味では、非常に夢があるんですが、過去の歴史を振り返ってみますとインターネットや情報通信技術(IT)でアメリカが伸びてきましたけど、
その中でこらから始まる日本に対して、アドバイスや起こり得る現象面など良い面、悪い面などどんなものがありますか。
|
本田: | いろいろありますけど、便利な道具であるだけに乱用っていうものがあるんですよ。
まあ郵便でジャンクメールってありますね。 特に大きな会社のしかるべきポストになりますと、1日に何百通と入ってきて読めないんですね。このような弊害もあります。 それからもう一つ気を付けたいのは、e-mailというのは、アドレスがあって便利に出来ていますから、クリックすればアドレスに対してすぐに返せるでしょ。 その時に全員に返信だとか、コピーのところに返信しますけど、メールアドレスというのは、ある種のプライバシーですから、それがどんどん拡がっちゃいます。 その結果、自分の欲しくないメールも入ってくるし、場合によってはセキュリティー、安全面にも影響してくる。 ハッカーが入ってくる余地もある。この辺はこれからの問題です。 |
松浦: | 例えば先に進んだアメリカと日本との条件の違いで言えば、何がありますでしょうか。 |
本田: | 条件の違いで言えば、アメリカ人は小さい時からタイプライターで慣れ親しんでいますから、キーボードに慣れっこなんですね。我々のお箸と同じように。
我々は、指一本でやったり、あるいは全くのキーボードアレルギーだったり。これがネックだったんです。 ところがi-mode見て下さい。親指一本です。親指一本でe-mailまで出来る。日本人はやはり指先が器用だと。 |
松浦: | それがダボスでの黒田さんの発言に皆さんが注目し、ノキアが日本を猛烈に注目し始めたという顕われでしょうか。
|
本田: | ノキアのダボスでの衝撃は、むしろ数字だったと思うんです。
ただ、i-modeを日本人が親指だけでやっているのは知らないんですよ。 彼ら見てください、いろんな指を使ってやっていますよ。日本人は親指だけです。 この器用さね、やはり日本を救うと思うんです。 |
松浦: | そうですか。日本の将来的な端末の一番の有力候補は、携帯電話ですね。
そうするとパソコンとかプレイステーション2だとかデジタルテレビだとか、自動車会社に言わせるとカーナビだとか、 今いくつかの携帯端末が浮かび上がってますけど、日本の場合は、携帯電話i-modeってのは、その中の最有力候補に思えてなりませんね。 |
本田: | プレステもカーナビもすべて有力銘柄なんです。
それは、すべてキーボードの世界じゃありませんからキーボードアレルギーから日本人は解放される。 プレイステーションも新しいメディアの最有力候補ですから。 |
松浦: | なるほど。良くわかりました。
もう一つ、先ほどの流通革命で我々企業が考えておく事がありましたら、アドバイス願います。 例えば、DELLというコンピュータメーカーが、いつのまにかIBMをひっくり返して、トップに躍り出ているなどは…。 |
本田: | 非常に重要な問題で、社会的にも重要なんですけども、中間に介在するブローカー的な職業が脅かされる。
需要と供給が直接会話出来る結果、中間マージンを頂いていた仕事なり、人が新しく自分の生き方を考え直さなければならない。 これは厳しい世界ですよ。それから企業経営にとって、在庫ってのは要らなくなる。 今までの様な在庫をめぐる商売は、無くなります。例えば銀行でも在庫金融ってのがあったんですけど、無くなります。 ビジネスモデルに変更を迫られる。経営の姿勢、あるいは経営の在り方にも影響してくる。 つまりこの問題はビジネスの全セクターに跨がってくる。ひいては雇用問題にも関係しますから、社会問題にもなりうるんです。 ですけどこれは、消極的に捉えるよりは、むしろ新しいビジネスチャンスであると考えて、転身、あるいは転業を考えていく事だと思うんです。 |
松浦: | では、福井県内の企業に、どのようなビジネスチャンスが生まれてくるとお考えですか。
|
本田: | 私はね、福井県というのは日本で一番情報に敏く、且つ工芸に秀で、教育が一番。
だって学校の数は人口に対して一番多いとか、たくさんの日本一を持っていますから、私は福井こそがネット経済のリーダー経済圏になって欲しいんです。 なる資格は十分あると思います。 |
松浦: | そうですね。私も、福井県に申し上げたんですが、どの県よりも先に幼稚園、小学校から高校まで全員にパソコンをね。
|
本田: | パソコンではありません。ドコモの立川さんは「PCの時代は終わった」と言ってます。
パソコンでは無いんです。ネットワーク、ネットワークの中における情報サービス、情報技術の在り方。 パソコンってのは、ネットワークではないんですよ。あれは自分で持って歩くお弁当箱みたいなものです。 新しいコンピュータ、あるいは通信技術というのは、ネットワークの中で考えるというものです。 コマーシャルになってしまいますけど、サン・マイクロシステムズの基本的な考え方は、ネットワークコンピュータなんです。 ですから、福井にぜひお薦めしたいのは、全国に先駆けて行政、いち早くネットワークコンピュータに切り替える事です。 これが一番安いんです。それを全国に先駆けてやれば通産省が飛んで来ますよ、モデル都市にしてくれって。 |
松浦: | もう一つ言ったのは、学校にインターネットを繋げて無料にしなさいと。
アメリカの大学は全部そうですね。私の息子も娘もアメリカで習っていた時、学校に行けば無料だという事で、全部e-mailに載せて交換をやっていましたから。 それをやって欲しいと。 |
本田: | そうですね。
|
松浦: | 今世界でポケモン、このソフトが全部受け入れられている。
日本はソフトウェアが弱い弱いと言われながら、このアニメのキャラクターでは、世界標準を握っているとアメリカ人から言われたんですよ。 このベースをどうやって生かしていくか。 |
本田: | IT革命と言われていますね。
IT革命の現時点での主流はネットワークコンピューティングですが、これは所詮インフラで、電話線を引いていると考えます。 全部に電話線が行き渡った時に次に何が問題かと言うと、まさにコンテンツ(中身)なんです。 コンテンツと言うのは、ありとあらゆるものがコンテンツに成り得るんですよ。 駅の情報、チケッティングからスポーツニュース、何でもコンテンツです。 だからこの先は、2010年から2020年にかけての主流はコンテンツプロバイダー、コンテンツ提供者だと言われているんです。 コンテンツはあらゆるものがありますから、我々の世界ではXと呼んでいるんです。 何でもいいと言う事で「Xサービスプロバイダー」、その時代だと言われています。 これは広義のソフトの世界です。もうインフラ、ハード、OSは構わないんです。 JAVAという言語が入ってきますと何だって良いんです。コンテンツの時代で、JAVAの時代だと。 |
松浦: | そういう点では、良く解りました。
ネットワーク経済、ネットワークの在り方という、この新しいツールを手に入れた時、最終的にはコンテンツ。 これはイコール、人ですね。 |
本田: | そう、人です。ですから教育県である当県は、伝統もありますし、おそらく福井のDNAですね。
|
松浦: | ああ、そうか。そうすると、それぞれが持っている感性や個性や文化というのが、大きな要素になると言うことですね。
|
本田: | そうです。ネット経済元年で、これをリードするのは福井だと。
|
松浦: | 元気付けられます。ありがとうございました。 |