No.147 ザ・エンターテインメント 続編 2007(平成19)年11月号掲載


 前回取り上げた「欧米諸国」という表現。
それは非常に「ラフ」な定義であって、西洋と東洋の対比ぐらいにしか使えないものなのに、日本語では頻繁に登場します。
実際にはとても「欧米諸国」と一言で括れるようなものは何もないという観点から、 前号はアメリカ、ボストンのフェンウェイパークで感じたアメリカのエンターテイメントについて書きました。
今回はその続きで、ヨーロッパ編を。

 メジャースポーツといえばアメリカではベースボールですが、欧州では勿論サッカーです。
少々前にドイツでサッカー観戦の機会を得たのですが、会場の趣はボストンのフェンウェイパークとは大分違いました。
会場では、主催者側が「盛り上げよう」といった類の姿勢はあまりというか殆ど感じませんでした。
でも、会場に集まっているファンは大いに自発的に盛り上がっています。
試合前、簡単な選手紹介程度はありますが、特段力の入ったエンターテイメント性も無く、試合開始のホイッスルが吹かれます。

 しかし、ファンの熱気はメジャーリーグのそれに勝るとも劣らず、個々のファンが各々の熱気で会場を熱くしています。

 サッカーの場合、各々のチーム・選手・戦術について予習しているのといないとでは楽しめる度合いがまるで異なりますが、 会場のファンは、皆当然に理解しているようでした。

 これまで両大陸のメジャースポーツの対比をしていますが、これらのエンターテイメントスタイルの差に欧州・米州の差を端的に見て取れるのではないでしょうか?
欧州はビジネスでも訪れる度に感じますが、「訪れるなら歴史や文化も少しぐらいは、予習してから来なさい」というような要求を無言で訪問者に問い掛けているようにも思えます。

 サッカー観戦でも無頓着に立ち寄っただけでは渋々と終わってしまいますが、チームの歴史・戦術を予習して自分からゲームに入っていけば観ていても体が熱くなってきます。

 因みに、会場へのアクセスは最高でした。
6万人も集まるスタジアムに車で向かったにも関わらず、渋滞らしい渋滞も特になく、駐車後の徒歩は10分も掛かりませんでした。
帰りも、ゲームが終わり一斉に人が出てきたにも関わらず、殆ど渋滞もなくストレスフリーでハイウェイから帰宅できました。
スタジアムを含めた街の造り、会場整理や運営そのものが、極めて合理的に機能していました。
ある意味、試合内容よりも感動した部分です。

 アメリカのように徹底したもてなしの類はありませんが、理解した上で自分から飛び込んでいけば深い感動が得られる、 そんな香りを欧州のエンターテイメントから感じました。