No.127 時代が変わった 2003(平成15)年9月号掲載


 先日、福井県立大学の坂本光司教授を講師陣に、「産官学物作りフォーラム」で、「時代が変わった」ことを叩き込まれました。
時代が変わった今を生きるには、「お客様の目線で開発する」「今こそ前へ前へ出るときだ」と。

 1991年頃からの日本経済は、失われた10年といわれ悪戦苦闘してきました。
その結果、過去の成功体験が通用しないという認識も出てきました。
そんな中で、新しい分野や方向への物作りが目立っています。
繊維王国の福井も、脱繊維が一例です。
染色受託加工から自動車内装材へ、織布受託加工から全く新しい土木建設資材など、いずれも受身から自己責任の新しい産業分野への変身。
それも日本の市場を席巻し、世界市場も視野に入った動きとなり、逞しく育っています。
時代が変わったことを先読みし、仮説を立て育ててきた、トップの英断があったからなのでしょう。

 これら新しい分野への挑戦は、つねにトップの10〜12年先の先読みから始まっています。
例えばマツウラの開発した、5軸制御加工のマシニングセンタMAM72-3Vシリーズは、 1998年から基本技術を手がけましたし、超高速加工分野のマシンも、1979年から手がけ1986年にFX-5シリーズに花開き、 高速加工という新しい技術に一石を投じました。
この経験則でも、新しい技術による物作り、商品作りは、お客様の目線にかなった商品化まで、 10年余りと長い期間かかることは間違いありません。

 このようにトップの大事な役目は、10年先の需要を予測することです。
トップ自らが感性を磨き、自分の目や肌身体で世界中の現場から探し求め、自分の責任で仮説を立てて育てることから始まります。
この仮説をもとに、長い目で新しい技術による商品化への、あらゆる努力を地道に進めることが、 時代が変わった時代の、一つの対応方法と考えます。

 海図の無い時代をむかえた今、新しい方向や分野に向かって、物作りの世界は大きく動いています。
この動きが景況の底打ち観となって表面化し、先を読むといわれる株価や金利、為替に反映されているのでしょう。
私達は物作りを通じて、世界に貢献する。
それも、世界にない物を、世界にない方法で作る、ことが私達、日本の使命だと思います。