No.126 顕彰で見直す研究開発 2003(平成15)年7月号掲載


 今から40余年前のマツウラが、身の程も知らずに研究開発した、電気制御による自動フライス盤(PC機)が、 第5回歴史的価値のある工作機械の顕彰・ベストテクニカル賞に選ばれ、「名機」として顕彰されました。

 マツウラの創業者・松浦敏男(故人)は、「他人がやらないことをやる」を一生の人生哲学にしてきました。
「名機」に顕彰されたPC機の研究開発は、そのような「電気の制御で機械を動かす」という究極の思いからでしょう。
この研究開発は、汎用立フライス盤のメーカーとして評価が出始めたマツウラが、 敢えて将来の機械産業の市場性と発展性を見込んで、独力で取り組んだものです。

 当時、年商4〜5,000万円程の企業が、こんな研究開発と試作に9,500万円もの大金を注ぎ込むという、それは破天荒な大冒険そのものでした。
社員が4〜50人程度だけ、人も金も物も何もない。
吹けば飛ぶよな零細企業でしたが、創業者の「何としてもやり抜くんだ」という堅固な意志と熱意だけが、たよりでした。
何しろ回路設計も知らない素人集団を、2〜3人の器用な社員の力を核として、 それこそ昼夜兼行で頑張り抜きましたが、窮すれば通じたのでしょうか。
試行錯誤を繰り返しながらも試作し、そして完成。
PC機として東京の見本市で発表し、精密機械産業に採用されだしました。

 このPC機でフライス加工が、素人や女性の作業者でも従来の5〜10倍もの生産性が向上という、 それは画期的なもので当時、精密機器の代名詞だった、高級カメラをはじめ輸出産業の主力生産設備として、大いに注目されました。
それも前後・左右・上下の移動がそれぞれ0.02mm以内の精密な停止精度が出ましたから、 揺籃期であったNC方式を手掛けていた日本の大手通信機器メーカーや、工作機械メーカーはマツウラのPC機に驚愕。
電気技術に強い開発企業として、一躍マツウラは注目されました。

 40数年前にマツウラが開発した身の丈も知らないPC機の研究開発が、工作機械の名機として認められた今回の顕彰の受賞。
これを機会にマツウラは、企業としての存在価値を原点から見直して、さらに企業価値を維持・発展させることが、 私達の務めであると、あらためて再確認した次第です。