No.120 コミュニケーション 2002(平成14)年7月号掲載


 産学官共同の先端的レーザー研究が平成12年末から始まって、はや1年半が経ちました。
この研究は文部科学省が、重要な技術課題の解決を、地域の技術で結集する 「地域結集型共同研究事業」として、始めたものです。
私がこの事業総括を、財団法人福井県産業振興財団が中核機関、 そして研究統括には福井大学の小林喬郎教授が、担当しています。

 もともと、日本の得意としてきた「物作り」は、いわゆる欧米のキャッチアップ型でした。
それを基本に量産を目指し、自信を持って市場を席捲しましたし、また「物作り世界一」を自負してきました。
しかし、ここ10年の情報化とデジタル化を源流にした、市場のグローバル化により、 誰にも真似の出来ないはずの「物作り」が、いとも簡単に「誰でも、どこでも、いつでも」可能になってしまいました。
その結果、ますます一物一価の原則が、日本の得意な「物作り」を簡単に、中国をはじめアジア諸国が、キャッチアップ。

 ここで、日本が生き残るには、言い古された言葉ですが「世界にない物を作る」か 「世界にない方法で作る」ことだと思います。
特に諸外国が真似の出来ない、独創的な技術や商品への研究開発が今、産学官の共同研究をはじめ、 いろいろな取り組みの必要性となって叫ばれています。
しかし、研究開発には大きなリスクもあります。

 特に日の浅い日本の産学官の共同研究には、はやく事業化し利益を出したい産、 世界レベルの研究理論を発表したい学、そして単年度で成果を出したい官の、 三者三様の思惑が複雑にからみあっています。
このからみあいを、市場のウォンツとニーズをベースに、うまく解きほぐしバランス良く進捗させ、 同じ目的に向かって推進させるのが、成功への大きな鍵になっています。

 1年半の私の経験から、どうしたら研究に係わっている全員が、持てる力をフルに出し切れるか、がわかってきました。
とことん、研究開発の目的を理解させ、成果に向かってバランスのとれた「コミュニケーション」を、いかにうまくとるのか。
あらためて、今回「コミュニケーションの大事さ」を痛感させられました。