No.110 米国の国家戦略、NII構想 2000(平成12)年11月号掲載


 今年で10年目を迎え、今だに好況を持続している、世界で唯一の国アメリカ。
このパワーは、IT(情報技術)による革命が、大きな原動力になっていると言われています。
個人消費はもとより、産業界やモノ作りの製造業など、あらゆるものにまで、このIT革命が好影響を与えていることも、間違いないと思います。

 このIT革命の引き金は、ブッシュ政権時代に当時上院議員のゴア・現副大統領が提唱した「情報スーパーハイウェイ構想」だと言われています。
この構想は、米国全土を覆う高速かつ双方向の通信ネットワーク構想で、ネットワーク上での質の高い情報サービス (マルチメディアサービス、精密/プライバシーサービス、公的サービスなど)及び、実用的なアプリケーション (電子商取引、設計/製造、教育、医療、危機管理、政策意思決定などを対象)の実施を実現させるものでした。
これを1993年、クリントン政権の経済と技術戦略の大きな柱として、「全米情報基盤(NII)構想」へ拡充し、 この発展と軌を一にして米国の景況が進んできたように思います。

 このNII構想そのものが、政治・産業・経済・安全保障などあらゆる観点から、今後の繁栄の鍵となるものと定義され、 2010年には完全なネットワークに依存した社会を運用する基盤を完成させるという、大構想。
このNII構想は光ファイバーを基幹とした光通信による、情報伝達方法を使っており、 ハードウェアとソフトウェアの殆どが軍事技術で支えられている、国家戦略であるという事実に、大変な驚きがあります。
IT革命の申し子のような日本製の、情報端末のiモード機能搭載の携帯電話。
これは我々、日本人が最も得意としているモパイル型で、誰でも、何時でも、どこでも簡単に使える小型軽量の情報受発信機器として、 世界に自負してきたネットワークシステムです。
 しかし、彼らが仕掛けたNII構想における光通信ネットワークへのこだわりこそ、世界を制覇する遠大な国家戦略であると、 理解するべきではないでしょうか。
どうも私達は彼らの野望とパワーの世界戦略にまんまと乗せられて、NII構想の産物であるIT革命、 そしてそれによってもたらされた好況に躍らされているような気がしてならないのです。