No.109 1ドル・1ユーロ・100円の時代 2000(平成12)年9月号掲載


 米国が10年もの長期に渡って好況を謳歌しています。
これまで考えられなかった、今回の好況の原因は、いろいろ言われていますが、その一つは、ベトナム戦後の団塊の世代による消費ブームです。
しかし、今回の長期の好況は、IT革命による米国の構造と中身の変化である──との見方が有力でしょう。

 さらに米国のこの好況が、ヨーロッパでも統一通貨ユーロの発足と期を合わせた形で、力をつけ始めました。
また数年前に金融に端を発したアジアの混乱していた経済も、回復してきました。
一人遅れている日本も、IT産業の急伸をテコに動意づいています。
こんな動きで、基準となるのがグローバルに通用する、ドルと新しいユーロという、2つの基軸通貨です。

 6月末にドイツで開催の工作機械展で、「もう日本は怖くない」と、独工作機械メーカーが豪語していました。
この言葉こそ、欧州市場をベースに、北米市場や成長著しいアジア市場に、焦点を絞り込んだ、彼らの宣戦布告にほかありません。
そうです、安く設定したユーロという新しい通貨が、強く生まれ変わる欧州の経済を牽引し、世界市場をターゲットにする彼らの戦略と考えるのも、 的外れではないでしょう。

 昨年1月にスタートした、ユーロ通貨が、今では日本円からみて約30%、米ドルから約15%とおのおの安くなっています。
それでも米国側から、何の苦情も文句も出ない。裏返せば、アメリカには何ら実質的な被害がないから、ということでしょう。

 そして事実上、既に1ユーロ=2マルク(正式には1.9558マルク)という公式が成り立っています。
一人蚊帳の外の日本は、これらを全て100円と見なければ、グローバル市場でのビジネスは、生き残れず孤立してしまいましょう。
ならば、この1ドル=1ユーロ=2マルク=100円の現実のレートに合った、日本の独自性と新しい発想の展開こそが、 今後の我々に課せられたビジネスで、必要な最低条件であると思うのです。