No.133 藤野厳九郎と魯迅 2005(平成17)年1月号掲載


 福井は日本のドマン中!「日本のヘソ福井」第133回は「藤野厳九郎と魯迅」の話。

 魯迅(本名:周 樹人)とは中国の有名な文豪で、「阿Q正伝」等で日本でも広く読まれています。
その作品の中に「藤野先生」との心打つ短編があります。
魯迅が1904(明治37)年から1年半、仙台への初めての留学生として仙台医学専門学校(現東北大医学部)に学んでいました。
藤野先生は当時解剖学を教えていた。
藤野先生は孤独な中国留学生の魯迅を励まし、彼のノートを熱心に朱筆添削をするなどいろいろと便宜をはかっていた。
魯迅が仙台を去る時、藤野先生は自分の写真の裏に「惜別 藤野 謹呈 周君」と書いて渡した。
魯迅は「私の心の中に藤野先生がいるからこそ私がある。先生は私を激励し、私に感動を与えて下さった」と語り、 恩忘れがたく生涯書斎に掲げていたという話は有名です。

 生涯の師と仰いだ藤野厳九郎との心の交流を書かれているのが小説「藤野先生」です。
日本で「魯迅全集」が発売される時、「藤野先生」を全集に入れることを熱望するほど、魯迅は藤野先生に会いたかったという。
今中国の教科書にも入れられているという。
この藤野先生は福井県出身で、晩年郷里の福井に帰り三国で医師として開業、以後地元の医師として72歳の生涯を終えた。

 グローバル化が進む中、時代を越え、国を越え、障害を乗り越えて育まれた魯迅と藤野厳九郎の師弟愛は、 真の人間愛と強さを教えてくれます。
魯迅が敬愛し続けた恩師が福井出身ということは福井人として大変嬉しくまた誇らしく感じた話です。