No.116 ふるさとの味・沢庵の煮たの 2002(平成14)年1月号掲載


 福井は日本のドマン中!「日本のヘソ福井」第116回目は「ふるさとの味・沢庵の煮たの」のお話しです。

 大根を生乾しにして、糠と食塩とで漬けて重しで押した物で、日本中の誰もが知っている沢庵漬け。
但馬(現在の兵庫県)の生まれで、臨済宗の名僧「沢庵」が初めて作った貯え漬けとも、いわれている沢庵。
この沢庵を2〜3年、漬け込んだ「古漬けの沢庵」を、良く水洗いし塩分を抜き、 厚さ2〜3mmの薄さに切り、弱火でコトコト煮込んだ、福井独特の煮物――。
これが故郷・福井のお袋の味として、今、静かなブームになっています。

 沢庵は、日本伝来の味と香り、風味をもった「貯え漬け」ですが、 漬けた翌年には新しい沢庵として食すのが普通。
でも時によっては、食べきれずに残ってしまった「古沢庵」を、 働き者の福井の女性達の生活の知恵で、新しい食べ物にした「沢庵の煮たの」――。

 この珍味は、それぞれの家庭の食事を采配する、お袋さん独特の味付けとなって、 私達の故郷を懐かしく思い起こさせます。
味付けは一軒毎の家庭・お袋さんの秘伝。
コトコト煮込むときに、ピリッと効かせた唐辛子や甘さとの相性も、また格別。

 福井をこよなく愛した、故宇野重吉さんも「福井の味」で、この「沢庵の煮たの」だけは、 かかすことの出来ない一品だったとか。
ぜひ一度、ご賞味あれ。