No.112 孫渡し 2001(平成13)年5月号掲載


 福井は日本のドマン中!「日本のヘソ福井」第112回目は、福井は嶺北地方独特の「孫渡し」の話しです。

 何でこんなに可愛いのかよ……の唄い出しで、今大はやりの「孫」という唄。
祖父母にとっては、目の中に入れても痛くないほど、可愛いものらしいですね。

 この孫が生まれると、福井では「孫渡し」なる風習があります。
県外の人に尋ねれば「孫を誰かに渡すの」などとの答えが返ってくるほど、わかりにくい孫渡し。
もともと孫渡しは、母の里方で生まれた初児を普通30日で、婚家先へ母親と一緒に届けることを言います。
かっては、産着を着たままの赤児に、里方の祖母が縫った晴れ着を着せたのが、孫渡しだったようです。

 この風習は古く江戸時代にも存在し、以来いろいろな変遷があって今日に至っています。
特に戦後の女性の職場進出で収入が増え(福井県の女性就業率は日本一)て、孫渡しに拍車がかかることになりました。

 孫渡しの祝い着・肌着・外出着などの衣類は、出生後3年間は不足しないほどで、それらを納める和たんすや洋たんす、 テーブル付の食卓やベッドに加えて、孫の玩具等がトラック一杯に積まれて婚家へ贈り届けられる。
その費用は100〜150万円とも、言われています。

 結婚費用が日本一の福井県だから、というわけではない、孫渡し。
冠婚葬祭に費用をかける土地柄が、後押ししたのかも──。