ユーザーを訪ねて No.146
「テクノロジーが、かたちを創る」機械精密部品加工
株式会社桐谷鉄工



株式会社桐谷鉄工 概要

所在地〒939-2701 富山県富山市婦中町西本郷282
 TEL
 FAX
 URL
 E-mail
076-491-2644
076-492-3505
http://www.kiritani.co.jp
info@kiritani.co.jp
代表者代表取締役 桐谷 泰山
創業昭和22年
設立昭和55年
従業員40名
事業内容工作機械、産業機械などの部品製作と特殊工具の製作。工作機械ボールネジの修復。

工場全景
▲本社工場



 今回のユーザーを訪ねては、北陸自動車道の富山西インターから車で東に5分ほどにある株式会社桐谷鉄工を取材しました。
 取材には桐谷泰山社長と桐谷美徳取締役工場長に対応頂きました。
 桐谷社長と桐谷工場長は兄弟で経営を担っており、創業はお父様である桐谷重理会長です。
 桐谷会長は旋盤の職人として仕事をされ、戦時中には戦地で少ない部品をかき集めて溶接などあらゆる加工を駆使して飛行機の修理を行っていたそうです。
 その経験を活かし昭和22年に創業。当時工場と自宅が同じなので長男である桐谷社長、また三男の桐谷工場長も常に桐谷会長の仕事をする姿を見て育ち、学校卒業後直ぐに同社に入社しています。


MX-520 の前で、桐谷社長(左端)と担当者


創業当時から多品種少量生産

 創業当時から同社の主要仕事先は、富山市の大手工具メーカーです。
 当初からこの会社よりホブ、ブローチなどの特殊工具の製作を手がけました。
 特殊工具だけに数量は少なく、また形状は様々なものでしたが、工夫を重ね製作を継続したことで同社の多品種少量生産を厭わないという企業文化の礎を形成しました。
 またこの会社からボールネジ製作の仕事があり、当初はリード部を旋盤で加工していました。
 しかし次第にナットや間座部品の作成依頼があり、この加工の為に昭和56年にマシニングセンタを設備しました。
 当時はまだ中小企業でマシニングセンタを設備しているところは少ない状況でしたが、常に新しい加工方法に挑戦するという経営方針によるものでした。
 それ以後も多品種少量生産に対応するために設備投資を進め、現在マシニングセンタ、NC旋盤が30台近く、また研削加工機、放電加工機、3次元計測器、レーザーマーカーと様々な機械が設備されています。これらの機械を駆使してお客様のあらゆる要望に応えるとの志が工場の外壁に「テクノロジーが、かたちを創る」との看板で大きく掲示されています。


整然と並ぶ汎用機

その多品種少量生産を支える大きな武器は30台ある汎用旋盤・フライス盤などです。
「工場を見られたお客様から、ここは職業訓練所ですかと言われることがあります。
 1個しかない部品はNC機械にかけず汎用機で製作します。また汎用機を使うことで加工の基礎がしっかり身に付きます。
 5年前から毎年高卒の新規採用を続けています。
 汎用機を経験してからNCを操作した社員は、初めからNC機を操作した社員より仕事の段取りも早く生産性が高いので、汎用機は人材育成にも欠かせません」と桐谷社長。
汎用機で加工している従業員の動きを見ていると無駄がなく、活き活きと仕事をしている姿は見事でした。
NC機械が主流となっている時代ですが、当たり前のように汎用機を使って加工が出来る従業員の存在は、同社の強みと実感しました。


木とゴム以外は加工

同社の企業理念に「技術を磨き、社会に貢献する」、「企業は人なり、技術も人なり、社会も人なり」と掲げ、「お客様満足度100%の総合部品メーカー」を目指し様々な挑戦が行なわれてきました。
「お客様から様々な仕事が入りますがお断りしない方針です。
 その結果、木とゴム以外は何でも加工できる技術力の蓄積が出来ました。
 最近ではチタン、インコネルなどの難削材も手がけています。
 図面も様々ですが、年々高精度が要求されています。
 その部品がどこに使われるかを確認して仕事に入らないと不良になる場合もあるので、仕事先との対話を重視しています。
 中には市販工具で加工出来ないものもありますが、特殊工具を作っていた経験から、自社で工具を作って加工する場合もあります。
 毎月約2,000件の受注があり、1個から10個が多く平均3個ぐらいです。
 現場の担当者は20個もあると嫌な顔をします。
 わが社では、多品種少量が当たり前との雰囲気となっています」と桐谷工場長。
また多品種少量生産に対応すべく独自の生産管理システムを開発し、進捗管理やお客様の問い合わせへの返答が事務所内で的確に行なえる仕組みも構築しています。

MX-520 で加工していた材質SUS630のワーク


5軸制御立形マシニングセンタ「MX-520 」の導入

同社の多くの加工は、素材を旋盤で加工し、マシニングセンタで多面にフライス、また穴加工するものです。
「今まで立形マシニングセンタに4軸のテーブルを付加して割出し加工を行っていました。
 高精度加工の要求と納期短縮を求められ、5軸加工機の必要性が高まり検討を始めました。
 当初はドイツメーカーの5軸加工機を検討していました。
 4月にマツウラで行なわれた展示会で初めてMX-520 を見て、
 機械の操作性また将来性などを考えて社長に進言しマツウラの機械に決めました。
 ワンチャックで多面加工することで加工精度が安定して持続できることは工場運営する側にとって一番嬉しいことです」と桐谷工場長。
同社のMX-520 のインデックステーブルはφ500mm仕様です。
5軸テーブルをフラットな状態で大型バイスを取り付け3軸機として使用することも想定しています。
「初めての5軸機で、また動きが早く戸惑いましたが、今ではスムーズに使っています。
 接近性が良いのでワークの交換、また段取り換えが安心して行なえます。
 また重量物を扱う場合に天井カバーが開くので、クレーンを使い無理をせず作業できることはありがたいです」と担当者の言葉です。



▲汎用旋盤ライン


工作機械のボールネジ修理サービス

 同社では、以前工作機械に使われるボールネジ製作を行なっていました。
 「マシニングセンタの位置決め精度が劣化し、ボールネジを交換したいが、製造中止や購入価格が高いので困っている」との話を桐谷社長は客先から聞き、以前の技術を活かしボールネジの修理業務を行なうことを決断、既に10年近く行なっています。
 ボールネジであれば、メーカーは問わないということで、年間200本の実績があります。
 この事業はKRT-BSサービスとの別会社で行なっています。
 もし設備機械でボールネジの不具合でお困りでしたら、この会社に問い合わせ下さい。


 「量産品はコストを求めて海外へ移転する流れは止められないだろう。
  しかし、量産を主体にしていた工場では、簡単に多品種少量生産への移行は難しい。
  当社では多品種少量品を主体で行なってきたので、これを強みとして国内で生産を続け、更にこの方向性を強めて行きたい。
  また大手企業では、熟練技能者が退職して製造現場を離れていくので、モノづくりを支える我々が頑張らないといけない」
 と最後に桐谷社長は強く語られた取材でした。


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