コーヒーブレイク


奇跡のりんご

 青森県弘前市に無肥料・無農薬でりんごを生産している木村秋則さんがいます。
 りんごは、農薬の助けなしに病害虫と戦うことのできない、極めて弱い植物になり、農薬に依存した現代農業の象徴的な存在です。
 しかし、彼は無肥料・無農薬で、かつ素晴らしくおいしいりんごを作っており「奇跡のりんご」と呼ばれています。
 しかし、簡単に実現で出来たわけではなく、長年の壮絶な苦労を重ねた結果、このりんごの生産に成功しています。

 彼は20数年前に手にした一冊の本「自然農法論」を読み、米を無肥料・無農薬で作ったことに強い刺激を受け、りんごでもやれると決意し本格的に取り組みました。
 様々な取り組みも空しく、7年間葉は出てくるが花は咲かず害虫と病気との闘いで、毎日害虫取りを繰り返す日々を送っていました。
 世間からも変人扱いされ、自殺を決意し岩木山に登ったが、ロープが短くて断念。
 しかし、ふと目にしたドングリの木を見て「なぜ山の木に害虫も病気も少ないのだろう?」と疑問に思い、根本の土を掘り返すと、手で掘り返せるほど柔らかい。
 この土を再現すれば、りんごは実ると思い、山の環境を畑で再現しました。
 8年目一本の木にだけ7個の花が咲き、2個だけピンポン玉と小指の先ぐらいのりんごが出来た。
 そして翌年の春、畑一面にりんごの白い花が咲き乱れた。それは豊かな実りを約束する希望の花でした。

 木村さんは「人間はどんなに頑張っても自分でりんごの花ひとつ咲かせることが出来ない。この花を咲かせたのは私ではない。りんごの木なんだ。私に出来ることは、りんごの木の手伝いしかない。失敗に失敗を重ねて、ようやくそのことが分かった」と語っています。
 人間も、自然の一部です。本来持っているりんごの力を信じた木村さんの経験は、人材育成にも通じるのではないでしょうか。


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