ユーザーを訪ねて No.138
24 時間操業工場で多品種少量の精密部品と組立を行う
ヒカリ工業株式会社



ヒカリ工業株式会社

本社工場〒352-0012 埼玉県新座市畑中1-17-3
 TEL
 FAX
048-481-0039
048-481-0041
第二工場〒352-0011 埼玉県新座市野火止1-18-9
 TEL
 FAX
048-481-0065
048-481-9673
URLhttp://www.hikari-kougyou.co.jp/
E-mailhikari-kg@msh.biglobe.ne.jp
代表者代表取締役 村上 信之 氏
設立昭和59年3月
従業員42名
事業内容空圧機器、半導体製造装置の部品加工及び組立

ヒカリ工場株式会社
▲本社工場


 今回のこんなユーザーは、JR 武蔵野線の新座駅から車で10分ほど南にあるヒカリ工業株式会社を取材しました。
 取材には社長の村上信之氏に対応頂きました。お父様が部品製造会社の工場長をされていたので、学生アルバイトとしてこの会社でモノづくりを経験され、30歳で同社を設立されました。
 「仕事先から新規部品の立ち上げの話がありましたが、勤め先では対応できないとのことでした。それでこの仕事を請けることで独立を決意しました」と村上社長。

 現在72台のNC機械があり、そのうちマシニングセンタが30台と多数の機械設備があります。仕事先は、大手空圧機器、半導体製造装置メーカーであり、直取引を行っています。近年では部品加工のみではなく、一部OEMで完成部品の製作を手掛けています。


▲村上信之 社長


量産から多品種少量生産へ

 「創業当時は量産部品を主体に行っていました。しかしバブル崩壊後に仕事量が激変し、半年間仕事量が戻らないことがありました。今度は順調に安定した仕事量が続いていると、量産部品の海外流出が始まり、再度経営的に追い込まれました。その経験から量産部品を主体にしないと決意し、10年前から多品種少量生産に仕事の内容を変化させていきました。現在の受注体系は100個以下が80%、10個未満は30-40%となっています」と村上社長。

 同社の部品は殆どがアルミ材です。空圧機器はその構造上バリが問題になります。
 部品にバリがあれば、組み込まれた時にバリがエアーと一緒に流れてトラブルの原因となります。同社ではサーマルデバリング加工機(混合ガスに点火、発生させた衝撃波でバリを燃焼除去する技術)を設備しています。
 マニホールドなどの部品では穴が交差する部分にバリが発生しますが、この加工方法が有効です。また20倍の顕微鏡を使って全数バリ検査を実施しバリの除去に取組んでいます。


マツウラのマシニングセンタに憧れる

 「創業当時、アメリカの工業雑誌を見ていると、マツウラの名前が何度も出てくるので、アメリカで認められている機械を使いたいとの思いがありました。
 2年目に立形マシニングセンタ MC-560V を設備出来たときは嬉しく思いました。
 それ以後、高精度加工用としてマツウラのマシニング設備を続け、立形が6台、横形が4台、5軸機 MAM72 が3台稼働しています。本格的に多品種生産体制を目指し、平成5年に5軸制御立形マシニングセンタ MAM72-1S を設備しました。
 5軸加工機で加工することで、角度割り出し精度などが向上し品質・納期ともお客様の信頼を得ることが出来ました。平成19年に MAM72-3VSを2台設備し、その生産体制の強化を行っています。
 今後も多品種少量生産を強化させたいのでマツウラの5軸加工機に期待しています。その意味で5軸複合マシニングセンタ CUBLEX にも注目しています」と村上社長。

 経営方針を自社ブランドからOEM 生産への転換を決断され、平成4年に大手工作機械メーカー向けOEM 生産を開始しました。
「今大変な不景気です。しかし、自動車部品メーカーからの既存設備の改造依頼を受注しています。短期間での立ち上げなので納期が短く大変な状況ですが、OEM生産なので生き残れたと言えます」と林社長。

▲MAM72-1S と MAM72-3VS▲MAM72-3VS▲MAM-500HF PC11



コスト低減の提案力

 同社では部品加工だけでなく、一部の組立も含めた完成部品の製作も行っています。また積極的にコスト削減の提案を行っています。
 「我々は出来るだけ図面交差の真中を実現した部品を製作しています。そんな折それらの部品を組立て完成品としての仕事を受注しました。加工交差が真中の部品ばかりで組立てた場合に工数が掛かることが分かりました。そこで、お客様に最終製品の精度を保証して交差範囲内で交差を修正した部品を製作し組立てを行いました。このことで組立て工数が大幅に短縮でき、コスト削減の提案が行えました。また部品点数削減で複数の部品を一つの部品に統合させ、5軸加工機での加工を提案しました。これにより接合部のオーリングが無くなり、また精度向上が行え、かつコスト低減が行えました」と村上社長。
 同社の社員は、与えられた仕事を当たり前と思わず、常に疑問を持って取組み新しい方法を創造し続けています。


社員に感謝

 同社には多数のアルバイト、パート従業員が働いています。採用時正社員になりたい希望があれば正社員になれると言っているそうです。
 現に学生時代に同社でアルバイトしていた人が卒業して他の会社に就職したが、また同社へ戻ってきたこともあるそうです。この理由は、社員を信用し任せる経営方針にあります。
 アルバイトだからワークの着脱のみをするのではなく、図面が渡され自らの考えで仕事に取組んでいます。任せられることで、社員がモノづくりの楽しみを体感しているのです。

「機械はお金を出せば買えるが、人はそのようにはいかない。どれだけ多くの機械を持っていてもそれを動かす人がいなければ何にもならない。常に社員に“君は会社にとって必要な人です”と言っています。この町も都会なので仕事の選択肢は沢山あります。その中でこの会社を選んでくれているので、働いてもらっていることに心から感謝しています」と社員に対する思いを熱く語る村上社長です。

 また現在不況下で仕事量が減っていますが、24時間操業を止めていません。その理由の一つが夜間仕事をしてくれるアルバイトの人達のことを考えてのことです。
 夜間の操業を停止させ、再度復帰させた場合同じ人材を揃えることは出来ません。また人材を失った損失は多大なものであるとの社長の考えによるものです。


インターネットの弊害

 同社は早くからホームページを立ち上げていました。しかし一時閉鎖し、再度開設しています。
 「ホームページは名刺代わりとの軽い気持ちで立ち上げました。しかし、いろんなところから図面が送られてきて対応に苦慮することが増えました。中には100 枚の図面を送ってくるので社内のパソコンが動かなくなったこともあります。ホームページで問い合わせがあった場合、顔を見て話をしないと信用できないので、図面を持って会社に来てほしいとお願いしていました。これは、インターネットの弊害ですが、将来を考えると避けて通れないので、運用を外部に委託して再度ホームページを開設しました」と村上社長。



 村上社長は「失敗を恐れて挑戦しないより、挑戦して失敗した方が人材は育ちます。その意味でアルバイトの人でも仕事を任せ責任を持って取り組んでいます」と言われています。
 村上社長の方針により、社員が活き活きと仕事に取り組む企業風土を作っていると感じた取材でした。


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