ユーザーを訪ねて No.139
一意専心 (ひたすらに集中して物事を努める)で独自のモノづくりに拘る
株式会社木村製作所



株式会社木村製作所

本社〒617-0823 京都府長岡京市長岡1丁目47番16号
 TEL
 FAX
075-953-2721
075-951-2267
工場〒617-0828 京都府長岡京市馬場人塚1番2号
URLhttp://www.kimurass.jp
E-mailkmtk@kimurass.jp
代表者代表取締役 木村 俊彦 氏
創業昭和44年4月
設立平成 2年3月
従業員40名
事業内容精密工作部品、精密機器製造(焼き入れ、表面処理共)

株式会社木村製作所
▲工場


 今回のユーザーを訪ねては、JR長岡京駅から500mほど北にある株式会社木村製作所を取材しました。
 取材には社長の木村俊彦氏に対応頂きました。お父様である木村会長が創業され、木村社長は二代目となります。自宅に汎用旋盤1 台で創業され、木村社長は子どものころ自宅で遊んでいると「切粉が飛んでくるから、向こうへ行け」との木村会長の声を覚えているとのことです。
 子供のころから機械に囲まれて育った木村社長は、大学卒業後京都の精密金型を製作する会社で3 年勤めた後、同社に入社されました。

 同社は、平面・円筒研削、汎用フライスと旋盤、そしてNC旋盤、マシニングセンタとあらゆる加工に対応できる設備があります。創業以来、数のある仕事は追わず、試作などの多品種少量の仕事に特化した生産体制を取っています。従って汎用フライスと旋盤は同社では重要視され、多くの社員が汎用機を使えます。


▲木村俊彦 社長


不況のために、新規顧客拡大へ

 10 年前のITバブルの時に、取引先であるIT 関連メーカーの不況を受けて、仕事が殆ど無くなってしまいました。
 「数社の客先に絞って仕事をしてきました。客先からは他社の仕事を増やさないようにと言われていましたが、結果ゼロとなりました。この時の不況で自分の会社は自分で守らなければならないと実感し、リスクを分散するために、私一人で新規顧客開拓に奔走しました。現在では大手企業10 社以上と取引があり、全て直取引をさせて頂いています。入社当時はNC旋盤を担当しましたが、6−7年間で全ての機械を覚え、営業に走った時には、自社の加工は全て説明が出来るようになっていました」と木村社長。


デジタル化への挑戦

 同社では、各種の生産工程が一目でわかるように、独自のシステムによる生産管理がされています。
 「10 年前に生産管理ソフトを自社開発し導入しました。それまでは、担当者の勘に頼っていました。製品が無いと大騒ぎして工場内を探し、箱の隅に新聞紙に包まれた製品があったことなど日常茶飯事でした」と木村社長。各製品の工程表を作り、その工程毎にバーコードが付けられています。
 作業者は、その工程バーコードと作業する自分のバーコードも読み取ります。そのことでリアルタイムに製品の進捗状況が分かる仕組みになっています。
 「今ではお客様から問い合わせがあった時に、女子社員がこのソフトを見て、どの工程にあるか答えられるようになっています。それでも納期遅れが発生します。デジタル化で全ては解決しません。最後は人です」と木村社長。


ワインレッド色のマシニングセンタ導入

 昭和61 年にマツウラの立形マシニングセンタ「MC-760V2」を設備されました。初めてのマシニングセンタ導入ですが、機械色はワインレッドと目立つ色となっています。
 京都ではまだマシニングセンタを設備している工場は少ない状況であり、マシニングセンタを導入すれば儲かると言われた時代でした。
 「マシニング専門の社員を付け、マツウラのNC スクールなどで教育しました。しかし、マシニングに合うような量産の仕事は少なく、1 ヶ月間余り稼動しないことも多々ありました」と木村社長。

 IT バブルの不況下、木村社長のリーダーシップで新規顧客開拓に取組み徐々に仕事が増え始めました。
 お客様からの短納期、高精度部品のニーズに応える為に、平成13 年にマツウラのCAM システム「GibbsCAM」を導入、そして平成14 年に立形マシニングセンタ「V.Plus-800」を設備されました。

▲MC-760V2▲V.Plus-800



航空機産業へ参入

 木村社長は、平成16年に社長就任時、これからの経営方針を全社員にプレゼンテーションしてスタートしています。
 「現在の木村製作所は、あらゆる加工ができる技術力を持つまでになりました。しかし、将来このままの状態ではいずれ頭打ちとなります。セミナーなどに参加し、将来の方向性を考えました。ナノ加工と言われる微細加工も検討したが、航空機産業へ新規参入を目指します」と木村社長は語ったそうです。
 「木村会長は、航空機産業は長年続く仕事であり経営的に安定すると考えていました。しかし私は、航空機産業には最先端技術があり、仕事を通じて意識改革が出来ると考えていました。例えばCAD/CAM は2.5 次元から3 次元へ、また加工機は3 軸から4軸、そして5 軸へと変化させないといけない。また今まで加工したことのない新素材もあり、常に学び挑戦しなければいけない状況に追い込まれ企業体質が強くなると確信していました」と木村社長。
 平成19 年に5軸制御立形マシニングセンタ「MAM72−63V」を設備され着実に、この方針の実現に邁進されています。


▲MAM72−63V


木村社長自ら学ぶ姿勢を

 同社では部品製造のみでなく、シーケンス制御で動作する組立ユニットまで行なっています。
 木村社長は京都機械金属中小企業青年連絡会(機青連)のメンバーで、この会でロボットを作るプロジェクトがあり、木村社長がリーダーを務めたことがありました。
 「今までシーケンス制御の知識はありませんでした。しかしこのプロジェクトリーダーとなり、サーボモータをシーケンス制御で動かすことを学び、この経験が組立ユニット製作には大変役に立ちました」と木村社長。

 今まで何度かの不況を経験し、その中でも落ち込んでいない企業の姿を見て、中小企業でも確りしたマネジメントが必要との認識を持たれました。そこで、MOT 大学院(Management of Technology、技術経営)で仕事をしながら学んでいました。
 「この大学では、経営学だけでなく、技術の講義もあります。ある新素材の仕事がありましたが、大学の教授に相談したところ、この素材の専門家を紹介して頂いたこともあります。仕事と勉学の両立は大変ですが、良い刺激を受けました。残念ながら、この不況下で本業に専念すべく4 月より休学します」と木村社長。社長自ら率先して学び、挑戦しています。



 木村社長は「失敗を恐れて挑戦しないより、挑戦して失敗した方が人材は育ちます。その意味でアルバイトの人でも仕事を任せ責任を持って取り組んでいます」と言われています。木村社長の方針により、社員が活き活きと仕事に取り組む企業風土を作っていると感じた取材でした。




前画面へ戻る