こんなユーザー No.114

最先端産業に必要な超硬ソリッドメタルソーを製造する
株式会社エムエーツール


株式会社エムエーツールの概要

所在地〒918-8188 福井県福井市三尾野町1-1-18
 TEL
 FAX
 URL
 Email
0776-33-7580
0776-33-7270
http://www.matool.jp/
info@matool.jp
代表者代表取締役 松本 和彦 氏
設 立昭和62年4月
従業員17名
事業内容超硬切削工具製造・販売

株式会社エムエーツール
会社全景


 今回のこんなユーザーは、福井駅から南西へ車で15分程の工業団地“テクノパーク福井”にある株式会社エムエーツールです。
取材には社長の松本和彦氏と専務の松本博一氏に対応頂きました。
「昭和42年に各種切削工具の再研磨・修理をする松本研磨所として創業しました。 工具再研磨の仕事は職人の手仕事でした。 職人を育てるのに時間がかかり、また担当の職人が休むとその仕事が止まるとの悪循環の繰り返しでした。 30代の頃から自社製品を作りたいとの希望を持っており、昭和62年に初の自社製品センタードリルと面取り工具を一体化した切削工具“MAスポット”を開発・販売を開始しました。 その時に、自社製品を製造・販売する会社として株式会社エムエーツールを設立しました」と松本社長。


▲松本和彦社長と松本博一専務

各種工具を自社開発

 同社は、平成2年にハイヘリカル超硬ソリッドエンドミル“シャープカットEM”を初めに、次々と約60種類ほどのエンドミル工具を開発しました。
「今までこれほどネジレの強いエンドミルはありませんでした。 理論的には、ネジレが強く刃長が長いほうが効率が良いのですが、工具を保持するチャックの強度がないと強いネジレによる引っ張り力に負けて工具が抜けてしまいます。 加工機やチャックの性能が向上していったので、ネジレの強い、ハイヘリカルエンドミルが使えるようになり開発しました」と松本社長。

 しかし、エンドミルは資金力と設備を持つ大手メーカーとの競争になり、同社での販売は伸び悩んでいきました。
また新規分野として金型産業向けのボールエンドミルの開発も手がけましたが、膨大な開発費がかかり断念せざるを得ない状況でした。


超硬メタルソーに特化

 「地場産業であるメガネの製造工程でフレーム加工や溝加工用としてメタルソーの需要があり、メタルソーの開発・生産も行っていました。 メタルソーは、70%は機械加工で生産し、残り30%は手仕上げとなります。 またメタルソーは薄い板状に加工するために曲がったり、折れたりするので自動化が出来ない製品です。 従って大手企業も参入したがらない分野であると気付き、メタルソー専門メーカーとして歩み始めることとしました。 色んなことをやりましたが、ようやくここにたどり着いたとの感です」と松本社長。

 販売は自社ブランドでの販売と、大手工具メーカーのOEM販売があります。
大手工具メーカーは、お客様に多数の工具を販売し、その中にメタルソーも含まれます。
しかしメタルソーは特殊設備が必要であり、手作業もあるので大手工具メーカーが内製化してもコスト的に合いません。
従って同社へOEM生産の依頼があります。

 「大手工具メーカーを通じて、有名自動車メーカーでも我社のメタルソーが使われています。 またOEM生産をしているので、各大手工具メーカーの経営者と話す機会もあり、経営的に学ぶことも多くありました。 例えば販売戦略の変更でした。 以前から、代理店を通じて中国、韓国、台湾へも輸出をしていましたが、現在は国内販売へシフトしようとしています。 なぜなら精度の要らないメタルソーは、アジアなどで作られ価格競争に勝てない状況になってきています。 また将来、日本国内に残る産業は高品質なものに限定され、わが社が目指す高精度なメタルソーの需要は国内市場しか伸びないと予想しているからです」 と今後の方向性を語る松本社長です。


▲超硬ソリッドメタルソー

極薄メタルソーの開発に貢献する「V.Plus-550」

 同社は、新規分野として電子部品加工や、微細加工に必要な超薄メタルソーの開発に挑戦しています。
電子部品は益々微細化しており、それを切断するメタルソーも限界ぎりぎりの薄さを要求されるからです。
それを実現するために、0.05mmの溝幅、深さ0.5mmの加工できるメタルソーも開発されています。
「電子部品加工に使われる極薄メタルソーの開発には、刃の形状や切削条件は誰も分からないので、数年を費やすこともあります。 切削条件をテストし、刃形状の開発をするために、平成18年3月にマツウラの立形マシニングセンタ“V.Plus-550”を設備しました。 この機械の主軸は回転数が15,000min-1 なので切削条件を探すのに幅広くテスト出来ます。 また主軸の振れ精度が高い為、高速でメタルソーを回転させても問題がありません。 メタルソーの切削条件を決めるのに不可欠な設備となっています」と松本専務の言葉です。


▲メタルソー開発に貢献する「V.Plus-550」



 同社が、大手工具メーカーが不得意とするメタルソーに特化することで、自社ブランドを確立していることと、 その技術力故に大手工具メーカーと対等の立場を持ってビジネスされていることに、力強く成長する中小企業の経営戦略を実感した取材でした。


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