こんなユーザー No.116

難削材料であるチタン部品の加工技術に挑戦する
タワラ機工株式会社


タワラ機工株式会社の概要

所在地〒916-0133 福井県丹生郡越前町気比庄31-6-5
 TEL
 FAX
 Email
0778-34-1981
0778-34-1997
tawara@aqua.hokuriku.ne.jp
代表者代表取締役 竹原 淳一 氏
創 業昭和47年
設 立昭和52年
従業員5名
事業内容チタン材料の眼鏡部品、各種機械部品製作

タワラ機工株式会社
▲工場全景


 今回のこんなユーザーは、福井県鯖江駅から西へ車で10分程にあるタワラ機工株式会社を取材しました。
取材には社長の竹原淳一氏に対応頂きました。
社長のお父様である竹原道正氏が福井市内で部品加工業として創業しました。
「会社の後を継ぐのが嫌で、また親も継がなくてもよいと思っていたので、東京の大学で理学部に入学し、卒業後に福井へ戻り、 他の会社に勤めました。 しかし、父の病気をきっかけに24歳の時に会社に入り、その翌年に父が事故に遭い体を悪くしたので26歳で社長に就任しました。 会社のこと、また加工のことも何も分からないまま社長に就任したので大変苦労しました」と竹原社長。


▲竹原淳一 社長

5軸加工に挑戦

 平成9年に現在の地(丹生郡越前町)に社屋を移転。
越前町はメガネ産地の鯖江市に隣接しているので、多数の眼鏡関連工場があります。
同社も移転を契機に眼鏡部品製造に集中して行きました。
「眼鏡部品はデザインが変わっても、加工方法は同じであったので、それほど経験のない私でも参入できると思い決断しました。 また当時眼鏡部品はチタン材料が主流なので、迷わずチタン材料の加工に取り組みました。 しかし、メガネ業界は中国生産にシフトを始めており、仕事量は減っていき、価格的にも厳しい状況でした」と竹原社長。
「2〜3年で更に業績が悪化した時に、何かに特化しなければ生き残れないと悩み、サングラスのレンズ加工を思いつきました。 サングラスのレンズは形状が複雑なので、従来の倣いフライス加工機では不可能でした。 そこで同時5軸加工機なら出来ると思い、5軸の加工機と、マツウラが扱っていたCAD/CAMシステム“GibbsCAM”を5軸仕様で設備しました。 しかし、サングラスのレンズは、汚れを嫌うために取扱いが大変で、思うように生産が上がらない状況でした。 レンズの生産に苦慮していると、5軸加工が出来る会社として認知され、5軸加工の必要な機械部品加工が増え、 危機を乗り越えることが出来ました」と5軸加工に挑戦した当時を語る竹原社長。


メガネフレームの削り出し加工に挑戦

 メガネ産業はその後も衰退が進み、多くの会社が倒産していきました。
同社も仕事量が減少して経営が難しい状況に追いこまれていきました。
竹原社長は「世の中に必要とされものを提案できないか。仕事を見直し、お客様にもプラスとなる仕事がしたいと」日々考えていました。
従来のメガネフレームは金型を作り、プレス加工で成型し、その後ワイヤ加工機で外周を仕上げるのが常識でした。
しかし数百枚で終わる量であれば金型を作っていたのではコストが合わない状況でした。
別な方法であるメガネフレームを1枚プレートから直に削りだすやり方は、加工時間がかかり採算が合わないというのが一般的な考えでした。
竹原社長は、あえて採算の合わないと言われている直彫りに挑戦したのでした。
「プログラム作成にはGibbsCAMがありましたので問題がありませんでした。 しかし、設備機械が主軸テーパー30番なので機械剛性がなくて加工時間を短縮することが出来ない状況でした。 そこで生産性を向上させるためにマツウラの主軸テーパー40番の立形マシニングセンタ“V.Plus-550”を平成19年10月に導入しました」と竹原社長。


▲直彫り加工で製作されたメガネフレーム

中国生産にも負けない生産性を実現

 メガネフレームを金型成型する場合には、別工程でレンズを入れるための溝加工が必要となります。
しかし直削り方法では、フレーム形状切削と同時にレンズ用溝加工が行える利点があります。
しかし、一瞬で終わる金型成型と直削りでは格段の生産時間の違いがあります。
同社ではデザイン形状のところをその形状に合わせて成形した特殊工具を使用し無駄な動きを無くし、 また“V.Plus-550”の高剛性を活かして切削条件の向上に取組み加工時間の短縮を実現しました。
結果1枚のメガネフレームの生産時間を従来の主軸テーパー30番の加工機に比べて大幅に短縮して生産出来るまでに技術を磨きました。
この時間であれば従来の金型生産方式を採用している中国製にも充分勝てるものです。
しかも、メガネフレームの生産が300〜500枚と少量生産になっているだけに、金型を使う従来生産よりコスト、納期の面でも優位性が持てるようになっています。
工場を見学すると、眼鏡部品以外では生産設備に使われる5軸加工が必要な加工品、また変わったものではチタンのブレスレット部品もありました。
あるブレスレットには中国からの依頼で縁起物の図柄を表面上に掘り込んでいるものもあり、メガネフレームで中国製に追われていたのに、 その中国にチタンブレスレットを出しているという訳です。
社員5名の会社でも、グローバルビジネスの環境下にあることに驚きました。


▲立形マシニングセンタ「V.Plus-550」



 竹原社長は、現在36歳と若い経営者です。
また工場運営の中心者でもあり忙しい中での取材でしたが、質問に対して言葉を選ばれて話す姿勢に誠実さが現れる方でした。
また、素人でこの業界に飛び込み、知らないことを強みにして常識にとらわれず果敢に新しい加工技術に挑戦している経営姿勢に熱い情熱を感じた取材でした。


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