第16回品質工学研究発表大会


 平成20年6月25日・26日と、東京で第16回品質工学研究大会が1000名以上の参加で開催されました。
研究事例147件があり、マツウラから3件の発表を行いました。

実務と直結した研究発表

 マツウラではマシニングセンタ、旋盤、研削の3つの機能を持つ5軸複合マシニングセンタ「CUBLEX-25」を製造販売しています。
2件の発表「5軸複合マシニングセンタ高速回転テーブルのシール構造の最適化」と「旋盤機能付きマシニングセンタ主軸回転固定機能の安定化」は 5軸複合マシニングセンタの開発に実際に採用した事例です。
旋盤機能を追加したことで、今までマツウラが経験していない領域の開発が必要とされ、品質工学を使ってそれぞれの問題解決を行っています。
「品質工学を研究の領域から、実際の設計や製造へ展開していることは大変素晴らしい」との評価を得ました。

現場から望まれた電力による測定研究

 工程管理の分野でマツウラから「金属光造形複合加工機における電力パターンの活用方法」と題した発表を行いました。
当社が開発した金属光造形複合加工機では金属をレーザで焼結した後に、刃物で切削を行うという新しい加工方法を実現しています。
今回、焼結後の切削加工の電力と切削重量を測定し、そこから最適な焼結条件を導き出すことを目標にした事例研究です。
今回の研究では、実際の現物を加工するのではなく、サンプルを用いて実験しており、時間とコストを短縮できる方法を示しました。
「加工現場を担当するものとして、切削加工を電力量で測定し評価する方法は、実用させたい技術です。 工作機械メーカーが、この研究を進めることを高く評価すると共に、他の加工機にも展開して欲しい技術です」との評価を得ました。

▲左から発表者の木村文武氏、吉田光慶氏、前田敏男氏▲発表風景


 マツウラでは平成8年から品質工学に取組んでおり、平成11年からは(財)日本企画協会参事の矢野宏氏に指導をお願いし現在に至っています。
今回の大会を機会に、これまで指導して頂いた矢野先生からの寄稿文を紹介します。

「技術課題と品質工学」

(財) 日本規格協会参事 矢野宏

 平成11年からマツウラにおいて工作機械に関わる技術開発に品質工学を活用する研究で関わりを持つようになった。
品質工学は技術課題を効率よく評価する学問であって、問題解決はその結果に過ぎない。
このことを理解するのは容易でない。
案の定、初めは全く相手にしてもらえなかった。
しかし、現社長の松浦勝俊氏が若い頭脳で協力して、スピンドル(主軸)の切削中の温度低下に成功し、 平成12年の「精密測定技術新興財団品質工学研究発表賞」で銀賞を受賞することが出来た。

 しかし、本当の問題は、ここから始まった。
最初の成功要因である、スピンドルの回転エネルギーを電力で評価するという方法は、今では品質工学では当然の方法である。
この方法を使ってのスピンドル開発は、マツウラにとって今までの開発方法とは著しく異なることから “品質工学を導入すると、これまでの成果がムダになる”との心配があった。
対話に対話を重ね、開発研究部長の天谷浩一氏が理解を示し、自ら先頭に立った。
品質工学の取り組みには、現実の技術力とマネジャーの率先力が不可欠である。
少なくとも、マツウラの開発部門では、これらが揃い品質工学を使った開発が実現を始めた。
ここまで5年が掛かった。

 平成19年の第15回品質工学研究発表会では、天谷氏自身が「金属光造形複合加工機の積層条件評価方法の効率化」という発表を行なった。
平成19年の8月、名古屋支部大会で、天谷部長自ら、マネージメントの立場から品質工学の推進を具体的成果に基づき 「マネジャーが先頭に立って発表する」という素晴らしい評価を得た。
この勢いに乗って、平成20年6月の第16回大会では同じ部門の技術者を含め3テーマの発表があった。

 それぞれが現在、マツウラが抱えている問題を見事に理解している。
もちろん品質工学が掲げている目標は高いので、このままでは解決しまいが、5年以上の活動の成果がやっと実り始めた。

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