ユーザーを訪ねて No.133
工作機械の周辺装置チャックの製作でグローバルに展開する
株式会社カワタテック



株式会社 カワタテック

所在地〒663-0047奈良県桜井市橋本48-1
 TEL
 FAX
 URL
 Email
0744-45-0360
0744-45-0364
http://www.kawatatec.co.jp
info@kawatatec.co.jp
代 表 者代表取締役 川田 利明 氏
創 業昭和8年9月
設 立昭和36年2月
資 本 金3,800万円
従 業 員55名
事業内容工作機械周辺機器の製造販売

株式会社カワタテック
▲会社全景



 今回のユーザーを訪ねては、奈良県橿原神宮から東へ車で5分ほどにある株式会社カワタテックを取材しました。
取材には2代目社長の川田利明氏に対応頂きました。
昭和8年に初代社長の川田利次氏が東大阪市で旋盤チャック製造メーカーとして創立。
今年で創立74年を向かえる伝統ある企業です。
戦後昭和20年に奈良県桜井市に移転し、昭和36年に川田鉄工株式会社として設立。
常に工作機械の周辺機器である旋盤のチャック製造を主体で操業しています。
同社で作られるチャックは、"NOBEL"ブランドとして世界中で高い評価を得ています。


▲川田利明社長


大学3年生で社長業を引き継ぐ

 「昭和39年に創業者である父川田利次が他界。 当時私は関西大学の機械科の3年生でしたが、大学を中退して入社、昭和40年に社長を引き継ぎました。 社員は20名ほどでしたが、大学で勉強してきたのだから何でも知っていると思われ大変苦労しました。 創業以来小型のチャックを製作していましたが、小型では競合メーカーが多くまたコスト的にも大変厳しい状況なので、 他社が敬遠する大型チャックの生産に力点を移していきました」と社長就任当時を語る川田社長。

 「昭和50年にはアメリカから油田を掘る機械につけるチャックの注文を受け輸出を始めました。 当時アメリカでチャックを作っている企業が忙しくて納期に間に合わないので、大きなチャックを作っている日本の当社に依頼が来ました。 そんなチャックが何故必要か判らないのでカタログや図面をもらって製作しました。 2,3年後には日本企業が同様な機械の開発を始めましたが、既に専用チャックの生産を行っていたので、"カワタに行けば入手できる"との認知を受けていました。 当時は多数のアメリカ人が工場を訪れました。 各機種を10台、20台注文すると言われましたが、数台しか製作できないと断ったこともありました。 またこの専用チャックの製作に特化しないかとの誘いもありましたが、今までのお客様との信頼関係を無くすことは出来ないと、きっぱり断りました」と川田社長。

 大型チャックに特化したことで、海外からの受注を受け、またその先行技術故に逆に日本で注目を集めました。
国内のお客様が、台湾、韓国から大型の工作機械を設備する時も、チャックは信頼のある同社から設備されることも少なくありません。
現在では2割が直接輸出されていますが、国内の工作機械に付加されて輸出されているものは多数あり同社の"NOBEL"チャックは海外でも高い評価を受けています。


経営理念「製品を通じて社会に貢献」


▲""の書

 同社の生産する"チャック"はワークをしっかり掴むことが重要です。
川田社長は企業理念・製品をイメージして"強く掴む、信頼を掴む、未来を掴む"とのフレーズを考え、その思いを""の文字に込めて、 萩野丹雲氏による""の書を社内に掲げています。
「強く掴めるチャックは、お客様の信頼を得る。そして、お客様と同社の未来を創っていく。」チャックに拘る川田社長の熱き情熱が伝わる言葉です。

 企業理念の浸透と社員とのコミュニケーションを深めるために、毎月初めに全体会議を実施。
この会議は30年近く継続しています。
会議では、会社の方向性や、お客様からの声、更には特殊仕様についての話をされています。
また時には外部の方に依頼して勉強会を行う場合もあります。
この会議を継続することで、カワタテックの進むべきベクトルを一致させ高品位な製品群を生み出す源となっています。


お客様のニーズに応え開発した製品群

 現在でも大型のチャックを生産する企業は少数なく、国内で使用されている大型チャックの70〜80%に同社の商標である「NOBEL」が表示されているほど高いシェアを誇っています。

 同社が発刊しているチャック総合カタログを見ると標準チャックサイズでは、Φ300mm〜Φ1,700mm。
また特殊チャックではΦ1,800 mmやΦ2,600mmと大型品を掲載しています。
更には旋盤チャックの領域から、溶接専用、液晶製作で使用するガラス用、車輪加工用、機械組立て用など驚くほど多数のチャックを製造販売しています。
「大型チャック故に一品一様で特殊なものが殆どです。 特殊故、今までの経験が活かされる分野でもあります。 しかし加工の先端であるチャックを作っていますが、機械全体が判らない場合には、機械のカタログなどを見て全体像を把握したこともあります。 昔は現場でものを掴む治具を作業者が工夫して製作したものです。 今では、その簡単な治具を作れる技能者も少なくなり、直ぐ掴め、多種のワークに対応できるチャックを設備する傾向にあります。 製造現場の技術者不足に、当社の存在意義が保たれていると考えています」と川田社長。

 更には、チャックを納入している工作機械メーカーのニーズに応えるために高機能な周辺機器であるパレットチェンジャー、ツールチェンジャーを製造して、 国内の工作機械メーカーに販売しています。
また自社ブランド製品としてメカ式自動割出装置タッチデックス、マシニングチャック、バイスチャックなど多彩な機器も開発しています。


▲4爪単動チャック


「H.Plus-630」は36時間無人稼動

 マツウラのアメリカ総代理店であるメソッド社が扱う小型工作機械に付加するパレットチェンジャーシステムを同社は販売しています。
その関係で展示会などではマツウラの関係者と会っており、今回の設備計画に繋がりました。
平成18年3月、平成19年3月と1年毎に大型横形マシニングセンタ「H.Plus-630」を設備されました。
「多品種小量のチャック関連部品加工に活躍しています。 オペレータからは"使い易く、剛性がある"と好評です。 多面パレットチェンジャーの効果で、1号機は24時間、2号機は36時間無人稼動し2台とも工場内で抜群の稼動率です」と。

 「如何に次の世代にバトンタッチするかが一番の課題です。 時代の変化が激しい中、次世代の人達が国内外のお客様の要望を的確に掴めないと生き残れない。 どこが問題かしっかり掴んで打ち合わせをしないと、空論となってしまう。 現場で加工している人は5年も10年もその加工で苦労されている。 常に我々はプロフェッショナルなお客様を相手に仕事をしていることを忘れないようにしないといけない。 これから益々海外のお客様とのビジネスが増えていく。 言葉文化が異なる中で、世界から求められるものづくりを継続していきたい」と将来を語る川田社長でした。
▲平成18年設備の「H.Plus-630」▲平成19年設備の「H.Plus-630」



 ""の書では丸みを意識された書体で、チャックをイメージしているものでした。
また「強く掴み、信頼を掴み、未来を掴む」の言葉に川田社長の経営方針がストレートに伝わり、短い言葉故に説得力に圧倒されました。
チャックという一つの分野でも、大型に特化することでノウハウが蓄積され他社との差別化できること、 またその技術力で中小企業がグローバルに展開できることを実感した取材でした。


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