こんなユーザー No.113

精密樹脂加工でオンリーワン技術を持つ
株式会社ホクシン


株式会社 ホクシンの概要

所在地〒963-0551 福島県郡山市喜久田町字双又34-8
 TEL
 FAX
 Email
024-959-3883
024-959-3884
hokusin@alles.or.jp
代表者代表取締役 石田 登 氏
創 業昭和50年
設 立昭和59年11月
従業員15名
事業内容電気絶縁材料加工、各種プラスチック精密樹脂加工

株式会社ホクシン
新工場全景


 今回のこんなユーザーは、東北自動車道路の郡山インターチェンジ近くの株式会社ホクシンを取材しました。
取材には創業者で現社長の石田登氏に対応頂きました。
石田社長は、郡山の普通高校を卒業後、東京のプラスチックを扱う販売代理店で営業マンとして就職。
営業を行ないながらプラスチックの材料特性について学び、28歳の時に郡山に帰省し石田工芸社として創業しました。
住まいに隣接した5坪ほどのプレハブ工場で1台の彫刻機から始まりでした。
そして平成18年5月にクリーム色の新工場(敷地1000坪、建物約300坪)へ移転、現在ではマシニングセンタ6台、 微細穴加工専用機2台、汎用フライス13台、その他8台を設備し精密樹脂加工分野で"ホクシン"ブランドは高い信頼を得ています。


攻めの設備投資

 「プラスチックの本来の意味は電気絶縁材料です。 ベークやPEEK材など絶縁材プラスチック材の特性を営業で良く知っていました。 郡山でこのような加工が出来る会社がなく、また大企業が東北地方への工場移設もあり、創業を決意しました。 しかし彫刻機でやれる仕事は減り、汎用スライスを使い自動組立てに使用する整列パレット(電子部品を自動組立てラインに流すための治具)などの分野に進出しました。 その後速さと品質を求められ26年前に当時2000万円するマシニングセンタを導入。 しかし樹脂加工でまだマシニングセンタの導入している会社はなく、ホクシンは潰れるとのうわさが出るほどでした」と当時を語る石田社長。
早期の設備投資が品質、納期で信頼を勝ち取り、大手企業よりコンベアー上の作業用製品受けパレットなどの受注が相次ぎ、 1年半後に1台、更に半年後に1台とマシニングセンタの増設を実施。
「1号機では、カメラの絞りを検査する治具を作りました。 1号機は対話型システムなので絞りの位置を示すメモリまで加工ができ、大変お客様からは喜ばれました。 そのお客様の福岡工場にまで納品するなど、早期マシニングセンタ導入は成功しました。 また別のお客様より、金属で製品を受ける治具では製品に傷がつくので、絶縁性もあり製品に優しい樹脂で治具を作りたいとの相談を受け、 お客様と一緒になって製品受け治具を開発するなどしてきました。 現在20社以上のお客様と取引をさせて頂いており、ある大手電気メーカーでは8年以上も不良ゼロを継続しています。 その開発部門ではホクシンでないとダメとの指示があるほど高い信頼を得ています」と。


▲整美されている汎用機ライン

精密樹脂加工の特性

 「金属の加工に比べてプラスチックは容易と思われますが、比率的には100社金属加工業に対し1社のみが樹脂加工業です。 切削条件は金属に比べて簡単そうに見えますが、切れる工具を使っても加工後の反りの問題、また高精度に仕上げるためにノウハウが必要です。 当社はその意味で樹脂の特性を知り尽くしているので、それらの課題に応えることが出来ます。 例えば基盤の導通テストをするチャッカー用検査治具では、0.3mmピッチの穴を明ける場合があり、少しでも油分があれば治具内でショートし正確な検査が出来ないので一切の油分は使用できません。 また樹脂加工では匂いも重要な判断基準です。 当工場では切削条件が適切なので、樹脂が焼ける匂いはありません」と樹脂の特性を熱く語る石田社長です。


マツウラとの出会いはGibbsCAMから

 同社では、若い社員が積極的に仕事に積極的に取組む仕組みとして、平成16年10月にマツウラが販売しているGibbsCAMを2台設備しました。
またこのGibbsCAM導入に伴い、取引先からはCADデータの支給も行われ品質向上に寄与しています。
平成19年7月にマツウラの立形マシニングセンタ「V.Plus-1000」を設備。
「検査治具や組立用治工具を作っている関係上、一品ものが殆どなので、新規マシニングセンタは設備後1年ぐらいまともに稼動しない時もあります。 しかし今回の"V.Plus-1000"は、お客様から950mmの大型部品が出来ないかとの問い合わせがあり、直ぐ対応している状況です。 今までは500×300mmまでしか加工能力がありませんでしたが、この設備で仕事領域が大幅に拡大しました」と。


▲大物加工に威力を発揮する「V.Plus-1000」

汎用機が新品に見える工場

 工場に入ると先ず目に入るのは汎用フライスのラインです。
その汎用フライスはきれいに整備され現役で稼動しています。
「マシニングセンタで全ての加工は出来ません。数の少ない製品は、汎用フライスで加工する方が早く小回りが利きます。 汎用機はオーバーホールを繰り返しながら大事に使用しています。 また週末には全員で清掃を行い、常に整理整頓を心がけています」と石田社長。
工場の床は磨かれており、樹脂の切りくずは一つも落ちていない状況です。


長男、三男も工場へ

 同工場では、石田社長の長男石田周平氏が2年前から、また三男石田真氏が4年前から、他社での修行を終え生産現場で活躍しています。
周平氏は、石田社長に代わりお客様への営業業務をこなし、また真氏は汎用機械の責任者として重責を担っています。
樹脂加工の将来について「電気部品がある限り、絶縁材である樹脂はなくならない。 日本中どこかで絶縁材が必要な仕事は絶対にあるから、息子たちにも安心して樹脂加工を渡していける」と石田社長の言葉です。


▲左から三男真氏、石田社長、長男周平氏



 樹脂加工は、金物加工に比べて簡単そうに見えて、その専門性の深さには驚きました。
また素材は切り売りされないので、常に定尺の材料を購入しないといけない状況です。
こういった苦労もあるが故に簡単には参入できない業界と感じた取材でした。


前画面へ戻る