ユーザーを訪ねて No.125
精密電子部品の供給でグローバルに展開する
神明電機 株式会社



神明電機株式会社の会社概要
本社
 電話番号
 FAX番号
 URL:
神奈川県川崎市幸区紺屋町34-1
044-555-1211
044-541-1201
http://www.shinmei-e.co.jp
富岡工場
 電話番号
 FAX番号
福島県双葉郡富岡町大字大管字川田194
0240-22-3237
0240-22-5535
代 表 者代表取締役 岩松 一郎 氏
設 立昭和31(1956)年
創 立昭和33(1958)年9月20日
従 業 員104名(グループ従業員4,667名)
営業品目各種スイッチ(AV、OA、情報、通信、遊技機器用)
ソレノイド、リレー、カウンタ等の製造及び販売

神明電機株式会社
工場全景



 今回のユーザー訪問は、神明電機株式会社(本社神奈川県)の富岡工場(福島県)を取材いたしました。
富岡工場のある富岡町は、福島県の太平洋に面し、ツツジや桜の名所として知られた自然豊な町です。
工場近くの「夜の森公園」は、約2千本のソメイヨシノが咲き誇る東北でも指折りの桜の名所です。


海外に生産拠点を持つグローバル企業

 同社は、現在の社長岩松一郎氏が神奈川県川崎市の旧神明町(現在は紺屋町)でコンデンサーの製造で創業。
会社名は地名の神明を入れた神明電機製作所とされました。
昭和43(1968)年に福島県の富岡町に工場を建設し、テープカウンター(テープの走行距離を計測し数字表示するメカニカルカウンター)の製造を開始しました。
電子部品メーカーとして製造販売を続ける中で、海外生産を早期に決断、昭和48(1973)年に台湾進出を皮切りに、東南アジアに生産・販売拠点を積極的に推進しています。
現在では台湾、香港、シンガポール、上海、太倉に製造や販売拠点を置き製品を世界市場に供給しています。
取引先は、日本はもとよりアメリカ、韓国の電気大手メーカーまで名前が連なり、同社の提供する製品が世界トップレベルであることを証明しています。

 同社の海外製造工場では、部品から製品まで一貫製造を目指し、金型製作から樹脂成型による部品製造、そして最終組立てまでを実施しています。
しかし精度が必要なものは日本でしか作成できず、富岡工場がその役目を担っています。
富岡工場も数年前には従業員100名以上で電子部品の製造も行っていましたが、組立て業務は海外に移転したため、 現在は50名で高精度金型や組立て治具、検査冶具の製造を行っています。


NCフライスと放電加工機の仕事を一台で出来る機械を検討
超高速リニアモータマシンLX-0を設備


 「以前マシニングセンタでは、金型のベースプレートのピンを装着するリーマなど穴あけ加工が中心でした。 金型は小型なものが多く、NCフライスと放電加工機で行っていました、特に放電加工では、金型が小さく加工時間が短いため、生産性が上がらない状況でした。 競争の激しい電子部品業界では開発のスピードアップが求められましたが、NCフライスの老朽化などで、生産対応が出来ない状況となっていました。 高硬度材の金型直彫りと穴加工が一台で行える機械の設備が必要と考え、3年程前から各社の情報を集め始め、具体的には昨年から本格的に検討に入りました」と設備計画の背景を金型課の加藤久司課長が説明されました。

 「昨年7月に機械メーカー3社に絞りテストカットの依頼を出しました。 テストの内容は、高硬度な金型材に小径の穴加工と金型形状を直彫りするものです。 具体的にはΦ0.96mmのドリルで穴加工を行い、続いてΦ1mmのリーマ加工を行う。 また直彫りの荒加工ではΦ0.5mm、0.2mmのボールエンドミル、仕上げではΦ0.05mmのボールエンドミルを使用する難しいテスト内容でした。 マツウラさんが真っ先に超高速リニアモータマシン「LX-0」(軸駆動方式にリニアモータ採用、主軸回転数4万回転)を使用してテスト加工を実施して頂きましたが、一社は穴加工が出来ない。 もう一社はテストが実施されませんでした。

 担当としては、リニアモータを採用した超高速マシンなので、使いこなせるか不安もありました。 しかし高硬度材を加工する為には4万の回転数と穴加工やタップ加工が出来る高性能主軸を持つ機械、 また金型加工では同一方向の加工を行う時に発生する空運転の時間短縮が重要なために軸駆動をボールネジでなくリニアモータを使用している機械が必要と考えLX-0に機種を決定しました。 平成17(2005)年の5月の連休明けに2台のLX-0を設備しました」と機種決定の経緯でした。

「LX-0」による金型加工「LX-0」で加工した微細金型


加工現場の意識が変わる

 「平成8(1997)年に2万回転の主軸を持つマシニングセンタを設備していました。 しかし工具が以前と同じものを使用しているとの理由で加工条件を変更しないで加工していました。 工具メーカーに問い合わせても最適な条件は得られず、加工条件は教えられるものでなく、 自分たちで探していくものとの認識を持ち始めていた時にLX-0が導入されました」と以前の状況を担当の山本高氏から説明されました。

 「LX-0の導入で今までの加工条件が一変しました。 導入から4ヶ月しか経過していませんが、不可能と考えていた条件に挑戦しています。 穴加工では高精度な主軸のためにΦ0.18mmのドリルが2mmの深さまで、またΦ0.4mmのドリルは深さ12mmまで加工しました。 また思わぬ効果として超硬ドリルの寿命が延びて、最近は購入する必要がありません。 金型直彫りでもΦ1mmエンドミル以下が殆どで、小径工具が、安心して加工できる環境が整いました。 LX-0のおかげで、工具メーカーの推奨データの3倍で加工しています。 また他の機械を担当している人達がLX-0の高速加工技術に影響され、加工条件を上げて挑戦する風土まで出てきました」と山本氏。


担当の山本高氏と課長の加藤久司氏


高まる富岡工場の使命

 同社のアジア工場は、大量生産拠点として多数の成形機やプレス機が設備されています。
海外工場で内製化しようと努力を続けていますが、まだまだ高精度なものが作れないために、富岡工場が生産のカギをにぎっています。
お客様である電気メーカーは、開発競争の激戦の中にあり、同社に更なる生産性を求めてきています。
富岡工場では「納期2週間のテスト金型の生産」を目標として掲げ生産方式の見直しに挑戦されています。
しかしNC放電加工機の生産性に限界があり、LX-0での直彫り加工による生産革新が内外から期待されています。
「ボールエンドミルを使用した直彫りに挑戦してきましたが、形状によってはボールエンドミルの底刃の加工となります。 常にエンドミルの側面を使用する加工方法として5軸加工に注目しています」と山本氏から次の課題も頂きました。


平成17年5月に設備された2台の「LX-0」


 日本の製造業の空洞化が言われ、多数の企業がアジア進出している状況です。
しかし同社は、グローバルに展開する中で、日本で量産を支える中心的な高精度金型や治具を生産し、東南アジアで製品の量産を行っています。
日本での「ものづくり」を中心に据えて、夫々の国の特長を生かした工程分業を行うことで、高品質の部品をグローバルに提供する企業の姿に、 日本の「ものづくり」の新しい方式を見せられた取材でした。


前画面へ戻る