こんなユーザー No.105
技術で未来を作りたい
─ 有限会社 渡辺工作所─


有限会社渡辺工作所の概要
住 所〒960-1443 福島県伊達郡川俣町字大内4の1
TEL:0245‐66-2326
FAX:0245‐66-3045
代表者代表取締役 渡辺 安治 氏
創 立昭和49年1月
従業員19名
事業内容精密部品加工、省力化機械設計製作、治工具製作、樹脂加工


工場全景


 有限会社渡辺工作所の所在地がある川俣町は、福島市から車で東に30分阿武隈山系の麓「緑の中に光る絹の町川俣」のキャッチフレーズの通り 山々に囲まれた人口1700人の小さな町です。
この川俣町は、明治、大正、昭和と養蚕で栄え羽二重では国内有数の絹織物産地として名を連ねた町です。


社長 渡辺安治 氏

 取材には同社の創業者である、社長の渡辺安治氏に対応して頂きました。
「私は農家の長男として生まれましたが、小さい頃から家業の手伝いをし、卒業と同時に農家の後継ぎとして、本格的に農業を始めました。 小さい農家だったこともあり、田植えが終わると秋の収穫まで、これと言った仕事もなく、他所の農家へ手間取りとして働いていました。 二年後将来を考え農業をやめて、町内にある会社に就職をしました。 この会社は、小型モーターを主として製造していました。 私は、ここで初めて旋盤と出会いました。

 昭和47年に旋盤一台で独立しました。 独立に当たって私の考えは、"自分が以前勤めた会社には絶対に甘えない"、また"独立した仲間との競合は避ける"との決意でした。 取引先は地元から外れた遠方への営業となりました。 東北高速自動車道が、まだ整備されていない時代で、納入には大変苦労した思い出があります。 独立して間もなく昭和51年のオイルショックの時には、旋盤をシートで包み、体中真っ黒になりながら、カメラの裏蓋のバフかけをして、 借金を返したのを覚えています」と創業当時を語る渡辺社長です。

何でも先取りが信条

 「私の人生を変えたのは、マシニングセンタとの出会いです。 近隣には旋盤主体の会社は多数ありました。 旋盤の仕事であれば仲間にお願いできましたが、価格に関しては厳しくなります。 そこで、フライス系の仕事に変えたのです。 昭和53年マシニングセンタの名称も知らない状況でしたが、"これからはこれだ"とマシニングセンタを購入しました。 当時、会社の内容も良くない時で、リース会社も渋々リースを組んでくれたのを覚えています。 県内の大手プリンター製造会社との取引が始まり、一台のマシニングセンタを24時間稼動しながら、マシニングセンタを中心とした工作機械の導入を本格的に始めました。 私は工作機械を購入する時、工作機械を見て買うことはありません。 "この先必要とするなら買うべし"と思いついたら行動していました」と渡辺社長。

 現在は、マシニングセンタ11台、NC旋盤2台、ワイヤ放電加工機3台、汎用フライス盤10台、平面研磨、成形研磨機、円筒研磨機、焼き入れ焼き戻し炉など、もの作りに必要な設備を導入。
測定具においても三次元測定器、顕微鏡を始め測定器を取り揃えています。
これらの最新鋭設備の導入により、高水準の技術力の向上に努め、品質・納期管理を徹底して実施しています。
同社の特長は、素材を問わず、試作並びに小ロットから中ロットまでの精密部品加工、それと時代のニーズにマッチした製品作りに日夜取り組む社員の姿勢です。


試作加工を支える汎用フライス


マツウラとの出会いはGibbsCAMシステム

 福島県内にあるメイン取引先企業が、マツウラで扱っているGibbsCAMでプログラム作成していました。
この工場を見学され、プログラムの共通性が取れるので納期短縮が可能との判断で、7年前にGibbsCAMシステムを導入しました。
現在では3次元対応が2台、また2次元対応が1台と計3台のGibbsCAMが試作、金型、そして高精度製品の加工に威力を発揮しています。
「当社はプログラム作成とマシン加工者と分けています。 担当する二人が、常に知恵を出し合って加工時間短縮と高品質の工場に全力を上げています。 GibbsCAMシステムの導入により、マシニングセンタの稼動時間が大幅に上がり、売上向上に貢献しています。 しかし、プログラムの失敗は許されません。 勿論素材は注文個数しか購入しません」と厳しく語る細杉浩信リーダーの言葉です。


3台のGibbsCAMがフル稼働


5軸加工への対応へ

 「日本の大手企業が海外進出する中で、日本の製造業の行き方を自問しています。 一つには"設計に特化して、ものづくりは外注する"、また"工作機械の能力を存分に引きだし、高精度の製品づくりに拘る"の二つに絞れると考えています。 私は長年の金属加工のノウハウを活かし後者の道を選択しました」と渡辺社長。

 マツウラのマシニングセンタを主として設備している仕事先の推薦で、立形マシニングセンタ「V.Plus-800」の5軸付加仕様で、平成16年12月に設備しました。
加工テーブルの右側に5軸を置き、また左側はバイスを載せて5軸加工と通常の3軸加工とが同時に行える工夫をしています。
「5軸機なので加工方法の選択肢が増えました。 まだまだ試行錯誤を繰り返していますが、機械の操作性は良く、またGibbsCAMの5軸対応ソフトのコンビネーションで日々挑戦しています」と細杉リーダーの言葉でした。


V.Plus-800 5軸付加仕様



 渡辺社長は、平成17年10月に兵庫県で開催された全日本還暦野球選手権大会に、予選を勝ち抜いた福島市シルバー野球クラブの外野手として参加する程のスポーツマンです。
社長の所属する福島シルバークラブは、66チーム参加の中で準優勝するほどの実力を持っています。
このようなスポーツマンでもある渡辺社長のリーダーシップの元で試作加工に特化している工場を見せて頂き、 マシニングセンタだけで11台、またその他にも多種の機械設備や測定器まで取り揃え、あらゆる試作加工が行える体制に驚きました。
量を追わず徹底して試作加工に拘る企業体質が同社の強みと実感した取材でした。


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