ユーザーを訪ねて No.124
青森県でハイテク産業を支える
株式会社 斉藤工機



株式会社斉藤工機の会社概要
本社
 電話番号
 FAX番号
〒039-3177 青森県上北郡野辺地町字八ノ木谷地37-14
0175-64-1127
0175-64-7120
代 表 者代表取締役 齊藤 隆治 氏
設 立昭和61(1986)年9月
創 立昭和55(1980)年
従 業 員35名
事業概要半導体及び液晶製造装置製造業。また検査装置の製作。

株式会社斉藤工機
工場全景



 今回のユーザーを訪ねては、本州最北の下北半島の付け根に位置し、陸奥湾に面している青森県野辺地町で操業している、株式会社斉藤工機様を取材いたしました。

 野辺地町には石川啄木の「潮かおる 北の浜辺の砂山の かの浜薔薇よ 今年も咲けるや」の歌碑、 また松尾芭蕉の「はなさかり 山は日ころの 朝ほらけ 季鷹書」の句碑があり、古くから交通の要所として、物資流通の重要な役割を果たしてきた町です。
また青森県は、本年地域再生計画「青森県クリスタルバレイ構想」の認定を受け、21世紀の世界経済を担うIT革命を支える基幹産業である、 FDP(フラット・ディスプレイ・パネル)関連産業の拠点化を進めています。
その中で斉藤工機様は、その高い技術力を基礎にハイテク産業(半導体製造装置や液晶製造装置)関連の部品製造を行っている企業です。

斉藤社長と斉藤常務
社長 齊藤隆治氏と常務 齊藤逸瑞氏


ブロイラーの養鶏場を改造した工場からスタート

 「学校を卒業して、埼玉で機械加工技術を習得するために10社以上の会社で研磨機から大型機械までの現場を経験。 27歳の時に青森に戻り、青森県内の工場で半年間仕事をしていました。 当時父親が養鶏業を経営しており、卵と鶏肉の生産を行っていました。 自分で会社を創業しようと決意した時、当時採算が合わなくなっていたブロイラーの養鶏場を工場に改造し、 汎用旋盤1台を購入して本格的に斉藤工機をスタートさせました。 当時は仕事が無く秋田まで営業に走り回わっていました」と創業当時の思いを語るのは社長の齊藤隆治氏です。

 昭和55年ごろから相次いで半導体、また液晶関連の企業が青森県内に工場を進出。
進出企業は青森県内での部品調達を計画していたので、同社でもマシニングセンタを導入して、本格的に半導体製造装置や、 液晶製造装置に求められる高精度加工分野に企業体質を変えていきました。


活気溢れる加工工場


多品種少量生産体制を目指し5軸制御立形マシニングセンタ MAM72-3VSを導入

 「簡単な仕事は受けず、難しいものを積極的に受けました。 当初は大変苦労はしましたが、そのお陰で仕事先への信頼も高まり量産部品も受注出来るようになりました」と齊藤社長。
ある時、大手工具メーカーの工場見学会に齊藤社長が参加。
工具メーカーの経営幹部から「多品種少量生産に対応するために、ツール方式を採用した独自の多面パレットシステムを持ったマツウラの5軸加工システムの導入を計画している」との話を聞かれ、 その言葉が頭に残っていたそうです。
その後数年経過して、地元機械商社の紹介でマツウラを平成14(2002)年に初めて来社されました。
「5軸立形マシニングセンタMAM72の実機を見た時に、あの工具メーカーの経営幹部が言っていた機械はこれだと直感しました。 今まで量産部品は横形マシニングセンタで加工していたので、工程数が多く精度、納期の対応で悩んでいました。 『多面加工が出来る5軸と無人化への対応が可能な多面パレット』の実加工システムは正に望んでいたものでした。 この工場見学でMAM72の導入を即決しました」とマツウラとの出会いを話して下さいました。

 9年前に御子息が地元の普通高校を卒業し入社。
「子供のころ、工場へは遊びに来ていましたが、何をしているのか良く解ら無かった。 しかし社長から強制されたのでなく、自然に卒業後直ぐに入社しました」と現在常務取締役を務める齊藤逸瑞氏の言葉です。
そして平成15(2003)年にMAM72-3VS(パレット数40枚)を導入。
導入時には齊藤常務が技術的業務を担当し、治具の改善等に取組み独自の斉藤工機流の生産システム構築を確立されました。
「MAM72に装備されている、ラック式の工具交換装置や、5軸加工の軸の動きも以前のマシニングセンタと異なり初めての経験で驚きました。 しかし人の造ったものは絶対に自分のモノにしてみせるとの決意で取組み、3ヶ月後には自在に扱える力を付けていました」と齊藤常務。
MAM72が導入される数ヶ月前にマツウラが販売しているGibbsCAMシステムを設備し、事前に5軸加工用のプログラム作成が行える準備がされていたことも、 立ち上げがスムーズに行えた一因でした。

 その後仕事先から更なる量産対応への強い要請があり、1年と経たない平成16(2004)年に2台目となるMAM72-3VSを設備。
「加工材料は、50%以上がアルミです。また試作部品では、ステンレスや非鉄金属など何でも加工しています。 そのような状況でMAM72は、精度・品質とも安定した加工が行なえます。 またパレット交換装置が標準装備の為に無人運転が行えるので、製作納期が確実に計算できます。 試作加工でも以前は長い納期を貰えましたが、現在では短納期が要求されます。 5軸加工と多面パレットが、高精度・短納期対応を可能にしました」と齊藤社長より高く評価して頂きました。


GibbsCAMシステムで加工プログラム作成


会社を支えるのは「嘘がなく、真っ直ぐな人」

 野辺地町は青森県内でも有名な豪雪地帯で、毎年1メート以上の雪が積もります。
工場敷地の一角に除雪用パワーショベルと専用車庫があります。
「降雪時、私が朝4時から道路や駐車場の除雪を行います。 社員には仕事に集中してほしいので、除雪は社長の仕事と思っています。 また従業員は地元野辺地町や近隣の町出身の人達です。 機械加工は未経験者ばかりですが、青森県の県民性で実直な人が多く、ものづくりに向いていると思っています。 社員との対話では、『嘘がなく、真っ直ぐな人がいないと会社は上手くいかない』と激励に心がけています。 この従業員に支えられ『品質・納期・価格に優れている部品』を提供しつづけることが斉藤工機の使命と考えています。 その使命を実現する為にもマツウラには常に次世代のものづくりへの提案を期待しています」と齊藤社長。
また齊藤常務からは「マツウラニュースなどで、マツウラが開発するリニアモーターマシンやレーザを使った加工機など、 新しい技術に挑戦している姿勢に共感しています。今後も最先端を走ってください」と力強い激励を頂きました。


2台のMAM72-3VS


 訪れた日は天候に恵まれ、青く澄んだ陸奥湾を見ることが出来ました。
しかし海沿いの道路では防風壁が立ち並び、自然環境の厳しさを感じました。
大変厳しい地域性の中で操業される斉藤工業様を訪問し、都市部集中化が進む中で、地方の強みを生かした企業の姿を見た思いです。
また青森県の方言に接し、厳しい自然の中で培われた優しさに包まれた取材でした。


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